[category]
[title]
唯一無二のハードボイルドコメディー、アニバーサリーにふさわしい大規模展示が「上野の森博物館」で

現在、開催中の『シティーハンター大原画展 〜FOREVER, CITY HUNTER!!』へに行ってきた。会場は 「上野の森美術館」。傑作漫画『シティーハンター』の連載開始40周年を記念し、約400点の原画を一挙公開するという、アニバーサリーにふさわしい大規模展示である。
よもや『シティーハンター』を知らない不埒者はいないとは思うが、念のために説明すると、シティーハンターとは凄腕の掃除人(スイーパー)・冴羽獠と、その相棒である槇村香が巨大犯罪組織に戦いを挑むハードボイルドコメディー。シリアスなアクションと腰砕けのギャグが折衷された読み口はまさに唯一無二で、ハラハラもドキドキもおしゃれもセクシーも過積載レベルに盛り込まれた、娯楽作品の究極系である。
またメディアミックス特性も非常に高く、数えきれないほど映画化やアニメ化、やノベライズ化がされており、鈴木亮平主演のNetflix映画版などは記憶に新しいところだ。
愛と気合にあふれた展示
で、本展の感想を早速述べるが、一言で言うと最高だった。もうなんか展示を企画した側の、『シティーハンター』という作品が好きで好きでたまらないんだというバイブスが全面的にあふれており、とにかく見せ方に気合が入りまくっている。
まず美術館入り口近くの壁面を覆い尽くす巨大な「XYZ」の看板からして度肝を抜かれたのだが、会場に入るとさらにビックリ。小比類巻かほるの『City Hunter 〜愛よ消えないで』が流れており、ネオン管を張り巡らせて夜の新宿を模した通路の奥に「XYZ」と記された伝言板がある。
さらに歩を進めると、獠と香が並んだキービジュアルがバーン!である。100点満点中で8億点だ。こんなもんでアガらない方が無理だ。本展が地味に画期的なのは、ビギナーでも楽しめるというか、むしろビギナー向けですらあるという点だ。
『シティーハンター』という作品の第1話から最終話までがキャプションによる解説を挟みつつ、実にうまくダイジェストされた本展は、『シティーハンター』を全く読んだことがないという人の入門編としても機能するのではないかと思う。あらゆる角度から作品の魅力の核が抽出・凝縮されているので、オタクが何も知らない友人に布教するのにうってつけだろう。
こういう大原画展というのは大体300点前後がアベレージなのだが、約400点という本展の見応えたるやものすごく、どれだけ簡単にさらっと眺めて回っても余裕で1時間は超えるであろう。獠と一緒に撮影ができたりと小粋なフォトスポットも満載だし、企画側の愛とパッションを感じる、とても良質な大規模展である。
絵がうまい、そして漫画がうまい
そしてこれは声を大にして言いたいが、本当に絵がうまい。マジで信じられないぐらい神うまい。
作者・北条司の超絶級画力についてはまがりなりにも知っていたつもりだったが、やはり原画をナマで見ると、本当にため息が出る。そして絵がうまい以上に、漫画がうまい。構図も完璧だし、コマ割りや捨てゴマの使い方も巧みで、まったくストレスを感じない。
視線誘導がうま過ぎるぐらいにうまく、めちゃくちゃ書き込みが多いネオ劇画的な作画なのだがスルスルッと読めてしまう。この圧倒的な「見やすさ」は、巨匠・ちばてつやに並ぶレベルだと思う。こういう原画展って大体「絵うめー、超かっけー」とか言いながら絵を眺めていくもんだけど、普通にしっかり漫画として読んじゃったもの。コマ、普通に全部見た。
画人・北条司による「ネタばらし」
また、北条司のテクニックや発想についてきちんと解説している点も、本展の大きな魅力であろう。各種作品に寄せられたキャプションをつぶさに読むと、これまで気づかなかったシティーハンターの新たな側面を発見する。
例えばシティーハンターは、魅力的な美女・美少女キャラがたくさん登場することで知られているが、それについて北条は「好みのタイプを描いているわけじゃないしモデルもいない」と語っている。
つまり、己の癖(へき)に淫していないのである。自分のリビドーの赴くがままに美女を描いていないから、爽やかだし軽やかだしおしゃれなのだ。『シティーハンター』は下ネタ満載にもかかわらず女性人気が高い作品であるが、この「いやらしくなさ」が、その辺りにつながっているのかと、個人的には膝を強く打つ発見であった。
技術面に対するコメントも大変興味深い。北条の圧倒的な画面の見やすさについても多くのヒントがちりばめられており、実際の原画を参照しながら「ロング、アップ、ロング、アップを連続させつつ、光の角度を意識し、いろんなカメラではなく一つのカメラで寄る」といった示唆に満ちたコメントが詰まったキャプションは、大変栄養価が高い。
必読のロングインタビュー
とりわけ、北条へのロングインタビューはかなり興味深い。インタビュアーがとても良い質問をたくさんしている。
本人をして「手品師が手品のネタを公開している感覚」というだけあり、絵や漫画を描いている人にとっては相当なヒントを得られる貴重な証言集になっていると思う。獠と香が履いているジーンズの絶妙なグラデーションは「ほぼ白まで薄めたブルーを何十回も塗って質感を出す」とか、「カラー原稿はいろいろな画材を使っているが、色鉛筆は反射するから明かりや肌に入れている」とか、「マジ天才じゃん」としか言いようがないコメントの数々は熟読必至である。
これを読んでからもう一度最初まで戻って鑑賞すれば、よりディープに本展を味わえるだろう。筆者はそうした。またラストでは、いろんな有名漫画家やシティーハンターにまつわる著名人が本展を祝して色紙を寄せているのだが、秋本治、井上雄彦、梅澤春人、TM NETWORKほかというカオスな絢爛(けんらん)ぶりには笑った。
物販でもうひと盛り上がり
で、最後に物販だが、これも圧倒的物量だ。複製原画、Tシャツ、スニーカー、アクリルスタンド、ステッカー、コーヒー、もう多岐にわたり過ぎるぐらい多岐にわたっていて、ここでまたひと盛り上がりできるぐらい楽しい。
個人的に面白かったのは「シティーハンター大原画展 行ってきました!プリントクッキー」である。シティーハンターは、1980年代シティポップ的な洗練された空気感をはらみつつ、こういうコテコテ大衆感もぴったりハマるからすごい。本展は2025年12月28日(日)まで開催している。かなりおすすめ。
関連記事
『江戸東京博物館、2026年3月31日に待望のリニューアルオープンへ』
『丸の内に国内最大級の重要文化財カフェが誕生、明治生命館がリニューアルオープン』
『「国立科学博物館」が150周年寄付募集、返礼特典はナイトミュージアム招待』
『ELLEの世界観を体現する「ELLE SPA」が羽田に日本初上陸』
『「MoN Takanawa」が漫画・アート・伝統芸能など最新技術を駆使したプログラムを発表』
東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら
Discover Time Out original video