青山トンネル(Photo: Keisuke Tanigawa)
Photo: Keisuke Tanigawa

12年目の大幅改装、青山トンネルがコロナ禍乗り越え一新

ミュージックバーの新たなあり方、どんな「過ごしやすい空間」を作ったのか

テキスト:
Nozomi Takagi
広告

2011年、旧OATH(現・レッドバー)と同じビルの地下にオープンした青山トンネル(AOYAMA TUNNEL)ハウスミュージックを中心に、幅広いDJらによる選曲を楽しめる「隠れ家的バー」として知る人ぞ知るナイトスポットだ。そんな青山トンネルは、「まん延防止等重点措置」による休業期間を経て内装を一新した。コロナ禍を経て店はどう変化していくのか、店舗に取材した。

12年目の大幅なリニューアル

渋谷駅から徒歩15分弱、青山蜂やレッドバーと同じビルにある青山トンネル。その名の通り、国道の青山トンネル手前に位置する当店は、黄色い縞模様の特徴的なドアの向こう側にある。

Photo: Keisuke Tanigawa
Photo: Keisuke Tanigawa

通常時のエントランスチャージは300円。一度入場すれば、一つ上のフロアにあるレッドバーにも入ることができるシステムだ。ウイスキーや焼酎、ジンやラムなど、幅広い種類のアルコールをそろえている。

若手からベテランまで、幅広い年齢層のDJがハウスミュージックを中心にプレイする青山トンネル。今年3月には店内を中心に大幅な改装を加えてリニューアルし、訪れる人々の居心地の良さをより追求する空間となった。ゴールデンウィーク営業で久々に足を踏み入れた常連客の中には、店内のビフォーアフターを「間違い探し」のように見渡す人々もいたようだ。

見えるところと見えないところの進化 

実際には、店内のどこが変化したのだろうか。デザインを担当したのは、リニューアル以前の店舗設計も手がけたデザイナーのシライジュン。渋谷にある頭バー(ZUBAR)も手がけた人物だ。

青山トンネル内部(Photo: Keisuke Tanigawa)
青山トンネル内部(Photo: Keisuke Tanigawa)

青山トンネルらしさを象徴していた暖色系の照明は変わらず。しかし、ライティングは以前に比べるとかなり明るくなった。壁に沿うように設置されたロングソファを交換し、訪れた人々がよりリラックスして過ごせるような環境を整えている。

壁面の装飾はほぼ全て変更している。今までもマイナーチェンジはあったが、約2カ月という長期休業を機に大幅な「模様替え」を行った。国道側の壁に埋め込まれた「In The beginning was the Word」ならぬ「IN THE BEGINNING WAS THE ART」は、リニューアル前から存在していたフレーズ。ただ今回は特注でデザインを一新した。

青山トンネル(Photo: Keisuke Tanigawa)
青山トンネル(Photo: Keisuke Tanigawa)

同時に、聴覚的なリニューアルも施している。かねてより設置していた田口音響アンプは入念なメンテナンスを加え、ミキサーやスピーカーの位置と角度を調整。より音がクリアに聞こえながらも、フロアにいる人々が会話しやすくなるような音響設計をしたという。さらに、CDJなどの機材もアップデートしたことで、プレイヤーはいままで以上に音のグルーヴを作りやすくなったという。

初めて訪れる人も、常連を受け入れる空間 

著名人のYouTubeチャンネルにも取り上げられるなど、音楽好き以外からも注目されるようになった当店。もともと敷居は低く、たまたま前を通りかかった人から耳の肥えた常連まで、あらゆる人々が訪れる場所だった。しかし、今回のリニューアルを経て、「踊る」だけではなく「会話する」「お酒を飲む」まで、幅広いニーズに応えられるような環境づくりへのシフトチェンジが図られている。

ミュージックバーという形態であり、かつ表参道と渋谷の中間地点であるエリアに位置する青山トンネルは、週末になるとナイトイベントの前後に立ち寄る人々で溢れる。訪れる人々の目的は、クラブ営業に特化したベニューに比べても、レンジが広い。

青山トンネル(Photo: Keisuke Tanigawa)
青山トンネル(Photo: Keisuke Tanigawa)

コロナ禍も比較的落ち着きを見せ、徐々にクラブイベントへ足を運ぶ人が戻りつつある。しかし、「リハビリ」段階のオーディエンスは決して多いとは言えない。長時間、「密」になる場所に集まるハードルは、以前と比べやや高くなっている。だからこそ、青山トンネルのように「過ごしやすい空間」へのシフトチェンジは、フロアに人を戻すためには賢明な判断ではないだろうか。

久々にナイトライフを過ごすような人にとって、「過ごしやすい空間」は来店の敷居を下げてくれる。2018年以降、インバウンドを見据えて都内で注目されるようになったミュージックバーという形態は、コロナ禍を乗り越えた新たな「場所の価値」が付与され、新たなムーヴメントを再燃しようとしている。

関連記事

作り手への敬意を感じるアバンギャルドなビストロ、イオが高円寺に登場

二子玉川にアジア料理店「88 Asia」が登場、バインミーは鳥羽周作直伝レシピ

上野公園で台湾グルメを満喫、「台湾フェスティバル™」が開催

中国語飛び交うファンキーな「ガチ中華」店でナマズを食べてみた

東京のベストを決めるアワード、受賞店舗が決定

東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

最新ニュース

    広告