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直島新美術館が開館、アジアの現代アートに焦点を当てた美術館に

5/31オープン、こけら落としは村上隆、蔡國強、ソ・ドホなど12人による展覧会

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Kaoru Hoshino
直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
Photo: GION | 直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
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島や集落の中にアート作品や美術館が溶け込み、世界にも類を見ない特別な雰囲気を持つ瀬戸内海の島々。その一つである直島に、新たな美術館が誕生する。

今回新たに開館するのは、「直島新美術館」。直島という名前を初めて冠した美術館だ。

直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
photo: GION直島新美術館 Naoshima New Museum of Art

建築を手がけたのは、日本を代表する建築家・安藤忠雄。安藤はこれまでにも数々の直島のアート施設を設計しており、本館は直島における10館目の建築となる。

同館の最大の特徴は、アジアの現代アートに焦点を当てた美術館であるという点だ。直島のほかのアート施設では、これまでジェームズ・タレル(James Tarrel)やウォルター・デ・マリア(Walter De Maria)といった、西洋美術史の文脈で重要視されるアーティストの作品が展示されてきた。

直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
Photo: GION直島新美術館 Naoshima New Museum of Art

一方、同館では日本を含むアジア地域の現代美術にフォーカスを当てることで、訪れる人々がアジア的な感性を持った作品や考え方と出合えるようになる。

ここでしか見られない作品がずらり

こけら落としは、「開館記念展⽰―原点から未来へ」展。展示作家には、村上隆や蔡國強(さい・こっきょう)、ソ・ドホ(Suh Do Ho)といったアジアを代表する著名なアーティストから新進気鋭の作家まで、計12人のアーティストが名を連ねている。

展覧会の見どころの一つは、直島という特定の場所に存在することを前提に制作された、サイトスペシフィックな作品群だ。例えば、ソ・ドホは、向こう側が透けるほどの薄い布を使い、住宅を再現する「Hub」シリーズにおいて、直島に実在する民家の廊下部分を新たに加えた作品を展示する。

直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
Photo: Takeru Korodaソ・ドホ『Hub/s 直島、ソウル、ニューヨーク、ホーシャム、ロンドン、ベルリン』(2025年)

そのほか、併設のカフェでは、南インドのマイスール出身で現在も同地を拠点に活動するN・S ハルシャ(N.S. Harsha)による、自然と人間の関係性や異なる視点の融合をテーマに描いた絵画のインスタレーション作品が見られる。

直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
Photo: Takeru KorodaN・S・ハルシャ『幸せな結婚⽣活』(2025年)

そのほかの見どころとして挙げられるのは、新たな安藤建築とスケールの大きな作品郡とのコラボレーションだろう。2024年に「京都市京セラ美術館」で初公開された、村上隆による横幅13メートルの⼤作『洛中洛外図 岩佐⼜兵衛rip』には、新たにキャラクターや金箔(きんぱく)が加えられ、より力強い作品へと進化した。

また、2006年にベルリンで発表されて以降、世界中で話題となった、蔡國強による巨大インスタレーション『ヘッド・オン』も見逃せない。ベルリンの壁と同じ高さの壁に向かって、オオカミの群れがためらうことなく突進する同作は、文化や社会の隔たりや、人類が幾度も犯してきた過ちを顕在化させる力を持っている。

直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
Photo: 顧剣亨蔡國強『ヘッド・オン』(2006年)

集落に溶け込むように工夫が凝らされた建築

同館は、直島長本村地区近くの高台に位置する集落の中に建つ。集落の景観に馴染むよう、小石が積まれた塀や黒漆喰の外壁など、本村の民家から着想を得た工夫が随所に凝らされている。

直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
Photo: GION直島新美術館 Naoshima New Museum of Art

併設されたカフェのテラスからは、瀬戸内海を一望でき、豊島や行き交う漁船といった、瀬戸内海ならではの風景を眺められる。訪れた際には、アート作品と建築の両方に込められた作り手の思いをじっくりと味わいたい。

直島新美術館 Naoshima New Museum of Art
Photo: GION直島新美術館 Naoshima New Museum of Art

なお、瀬戸内の島々を舞台に繰り広げられる現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」が、2025年4月から開幕しているので、合わせて楽しむのもおすすめだ。

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