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核と原発について語られたドキュメンタリー5選

震災から10年、今もう一度考えてみるべき未来への課題

テキスト:
Hanako Suga
Time Out editors
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東日本大震災、そして福島第一原発事故から10年がたとうとしている。メディアでは東北の復興が伝えられ、福島県内の居住制限区域の解除やふるさとへ帰還する住民たちの姿を大きく報道してきた。しかし、2011年3月11日に発令された「原子力緊急事態宣言」はいまだに解除されていない。

復興は喜ばしいことだ。しかし避難生活を今も強いられている住民や、支援や保障の打ち切りのためやむを得ず帰還する人、放射能による子どもの健康被害などを懸念し帰還したくてもできない家族たちの存在は無視できない。また、福島第一原発の廃炉処理は難航しており、除染作業による放射性廃棄物や汚染水の処理問題といった課題も改善されないままだ。

一方、この10年間に原発事故によって多くの人が声を上げ行動してきたことも事実。ここでは、原子力発電や原発事故、そして放射能による被ばく問題についてもう一度考えさせてくれるドキュメンタリーを厳選して紹介する。

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東日本大震災から10年を振り返る展示

『福島:原発物語』

イタリア人ジャーナリストによるドキュメンタリー。東日本大震災が発生した時、日本にいたピオ・デミリアは、被災地にたどり着いた最初の外国人記者となった。津波に破壊された町村、家を失った人々の様子を取材した後、福島第一原発から20キロ圏内の「立入禁止区域」に潜入する。

デミリアは原発の仕組みや事故発生からの出来事、そして当時の政府の判断などを調べ、300時間以上の貴重な映像を撮影。外国人の視点で描かれているものの、原発に関する時代背景や下請け原発労働者の存在についてなどにも触れている。

映像やアニメーションにより事故の真相を分かりやすく解説しているので、もう一度原発事故を振り返りたい人にもおすすめだ。

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『ナオトひとりっきり』

福島第一原発から12キロにある福島県富岡町。本作は、無人となった土地で動物たちとともに一人で暮らす男性「ナオト」こと、松村直登の日常を追った作品だ。

福島第一原発事故が発生し「警戒区域」となった富岡町では全町民が避難を強いられていた。ナオトは、自ら建設に携わった原発に翻弄(ほんろう)されることに疑問を持ち、とどまることを決意する。無人化した町には、置き去りにされたペットや家畜たちがあふれていた。

本作に登場するのは、決して報道されることのない忘れられた命や自然の姿だ。誰もいない町で暮らす主人公の日常を淡々と映し出すことによって、原発によって失われたものの大きさを問いかける。2020年には続編も製作された。

富岡町の避難指示は2017年春に帰還困難区域を除いて解除されているが、戻ってきた人は1割ほどだという。形だけの復興、そして「復興五輪」という言葉とともにオリンピックを推し進める国。復興とは誰のためのものなのかもう一度考えさせられるだろう。

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『原発夫婦』

三重の南伊勢町と大紀町にまたがる芦浜に、突如持ち上がった原発建設計画。本作は、1963年から37年間の間「反原発」を貫き、闘い続けた漁師夫婦についてのドキュメンタリーだ。

芦浜原発建設計画は2000年に白紙撤回されるが、20年たった今も住民は推進派と反対派の間でギクシャクしたままだという。元々は原発反対だった漁協が、中電による資金援助をきっかけに推進派へと乗っ取られていくなか、夫婦は度重なる嫌がらせや中傷に耐えながらも原発反対を突き通した。

原発という巨大な力が小さな漁港を二つに分断してしまったという事実と、今も消えない溝や人々の悲しみを訴えている。住民の反対運動が原発を作らせなかったという歴史と精神は、未来の世代に継承していくべきだろう。

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『プリピャチ』

チェルノブイリ原子力発電所から約4キロメートルに位置する町、プリピャチ。1998年に撮影された本作は、ゾーン」と呼ばれるゴーストタウン化した危険地帯で生きる人々を取材し、原発事故のその後に迫っている。

監督は『いのちの食べかた』のニコラウス・ゲイハルター。放射能による健康被害を心配しながらも以前と変わらぬ生活を送る老夫婦や、原発関連施設で働き続ける技術者などがインタビューに答えている。

本作は原発と汚染によって地図から消えてしまった町で、静かに暮らす人たちの記録だ。状況は違うかもしれないが原発事故により姿を変えてしまった福島にもつながる。東日本大震災から10年がたっても、さまざまな理由で地元に帰ることのできない被災者がいるということを、もう一度再認識してみてほしい。

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『100,000年後の安全』

フィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」について描いたドキュメンタリー映画。監督のマイケル・マドセンが、廃棄物で満杯になる予定の100年後までの安全性や、安全レベル到達まで「10万年」を要するという原発の危険性を伝えている。

「クリーンで安全なエネルギー」として作られた原発だが、そこには必ず放射性廃棄物が生まれ、完全な処理はいくら月日がたっても実現されない。この映画は関係者のインタビューや証言とともに原発は負の財産そのものであることを不気味なほどリアルに暴いている。

54基もある日本にある原発や、廃炉問題についても深く考えさせられる作品だ。

Vimeoで『100,000年後の安全』をチェック 

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「東北アップデート」シリーズは、2013年秋より、復興の道のり、多様なボランティアによる活動、そして3.11以降に東北で起こった様々な構想や企画を紹介してきた。過去の記事を一覧にまとめたので、あの日から今日までの長い道のりをじっくりと確かめてほしい。

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