1. Tokyo meets the world Latvia
    Photo: Kisa ToyoshimaAmbassador of Latvia to Japan, Dace Treija-Masī
  2. Tokyo meets the world Latvia
    Photo: Kisa ToyoshimaAmbassador of Latvia to Japan, Dace Treija-Masī(left)

駐日ラトビア大使に聞く、SDGsへの取り組みや東京でラトビア料理と文化を知る方法

渋谷の路地裏散策からラトビアが行っている移行期国家の支援まで

テキスト:
Ili Saarinen
翻訳:
Genya Aoki
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コロナ禍の終わりが見え、世界中で規制が撤廃されてきた今、コロナ終息後の東京の新しい方向性を示す斬新なアイデアやインスピレーションが求められている。

タイムアウト東京は『Tokyo meets the world』シリーズを通して、東京在住の駐日大使へのインタビューを続け、都市生活に関する幅広い革新的な意見を紹介。とりわけ、環境に優しく、幸せで安全な未来へと導くための持続可能な取り組みについては大きく取り上げてきた。

ヨーロッパで最も環境に優しい国の一つであるラトビア共和国のダツェ・トレイヤ=マスィー大使は環境保護と男女平等を重要視しており、女性の地位向上を推進していることでも知られる。

日本のこうした分野における取り組みは国際的に評価されているとは言いがたいが、トレイヤ=マスィー大使は、2017年に就任して以来、明らかな前進を実感しているという。大使はこのほかにも、サステナビリティに関するさまざまな側面について話すとともに、初来日した90年代半ば以降の東京の変化や、東京でラトビア料理や文化を味わう方法について語ってくれた。

1995年から東京はどう変化したか
Photo: Kisa Toyoshima

1995年から東京はどう変化したか

ーこれまでの日本の印象を教えてください。

初めて日本を訪れたのは1994年のことです。北浦和にある外務省の若手外交官の研修センターに9カ月間通い、日本の文化、歴史や政策について学び、日本語も勉強しました。勉強に励む一方で、六本木や渋谷などに繰り出し、東京を楽しんでいました(笑)。グーグルマップもない時代に、どうやってカラオケやレストランを探したのかいまだに不思議ですが、24歳くらいになればなんとかなりますよね。

(現在の東京は)1994、95年ごろと変わらないものも多いし、変わったところもたくさんあります。東京は建物の取り壊しや建て替えのスピードが速い。私は5年前から渋谷に住んでいますが、大使館の周辺も含め、この辺りは常に工事中です。東京は常に変化しているのです。

街は当時と変わらずにぎやかですが、私は子どもが生まれたことで、ベビーカーを押したり、学校に送ったりといった子どもの世話をするのは女性だけでなく、男性も増えていることに気付きました。

特に週末になると、公園や遊び場で男性の姿を見かけることが多いです。ビジネスの世界で活躍する女性も増えましたし、小池さん(東京都知事)をはじめ、女性のリーダーも増えていますね。喜ばしいことです。

もう一つは、ペットを飼う人が増えたことですよね。街を歩いていると、バギーに赤ちゃんが乗っているのかと思ったら、犬や猫だったということがよくあります。90年代半ばでは、珍しい光景でした。

東京で楽しめるラトビア料理と音楽
Photo: Darya Tryfanava/Unsplash

東京で楽しめるラトビア料理と音楽

ー東京での生活はいかがですか。また、お気に入りの場所はありますか。

大使館は渋谷区神山町の静かな場所にあり、私はこのエリアがお気に入りです。小さな路地を歩きながら、おいしいコーヒーショップに立ち寄ったり、代々木公園を散策したりすることをおすすめします。ポルトガル料理店のクリスチアノや、最近オープンした京料理 阿うんも良いお店です。スパイスポストというカレー店も人気があります。

丸の内に向かう道も好きです。この辺りは皇居とお堀が見える一方で、日本のビジネスの中心地でもあります。古くからの伝統と現代的な風景が共存している東京の雰囲気を象徴する場所だと思います。

ー故郷の味を味わうならどこに行きますか。

自由が丘には、長年の友人が経営するリガコレクションというお店があり、織物や陶器、紅茶、ラトビアチョコレートといったものを買うことができます。

ラトビア料理は、スウェーデンやドイツ料理など、バルト海沿岸や北海一帯の食文化から影響を受けています。六本木にあるリラ ダーラナというレストランは北欧料理の店で、シェフは大使館のレセプションでも腕を振るってくれます。店名はラトビアっぽくなくないですが(笑)、ニシンやビートの根を使った料理、ひき肉を使ったパンの「ピラギ」、クランベリーやブルーベリーを使ったデザートなど、ラトビア料理を作ってくれますよ。

ー東京には、ラトビアを知るための文化協会やサークルもありますね。

はい。まず、2004年に設立された日本ラトビア音楽協会があります。早稲田大学の卒業生が合唱団を結成し、ラトビアに公演旅行に行き、現地の合唱団と親しくなったのが始まりです。現在では、音楽活動以外にも、ラトビアと日本の友好を深めつつ、ラトビアを日本でPRするためにさまざまな活動を行っています。

日本人で結成された合唱団『ガイスマ』は、週に一度集まってラトビアの歌を歌っています。ガイスマのメンバーは全員ラトビア語を習得しており、かなり複雑な私たちの曲も完璧なラトビア語で歌います。

5年に1度、ラトビアで世界有数の祭典である「歌と踊りの祭典」が開催されるのですが、『ガイスマ』はそれに定期的に参加していますよ。このフェスティバルは、2万5000人もの歌手や踊り手が参加し、5時間かけて行うコンサートがクライマックスとなる一大イベントです。2008年にユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

ラトビアの村や学校にはそれぞれ合唱団があり、「歌と踊りの祭典」のステージを目指し、地域、地区、全国と厳しい予選が行われます。予選を勝ち抜いた選りすぐりの歌手や合唱団、そして海外から招待されたゲストだけがこのフェスティバルに参加できるのです。

このほか、ラトビア語教室を開催しています。これはもともと大使館で行っていたものですが、コロナ禍の影響で2年前からオンラインで実施するようになりました。そのおかげで、日本全国から受講者が集まるようになりましたよ。

また、大阪を拠点とする関西日本ラトビア協会では、学生や企業の交流などを推進しています。

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2021年は日本ラトビア友好100周年
Photo: Kisa Toyoshima

2021年は日本ラトビア友好100周年

ーラトビアと日本の関係で注目すべき点は何ですか。

近年の日本とラトビアの関係は非常に活発です。まず、2018年にラトビアは建国100周年を迎えましたが、その年に安倍首相が外国のリーダーとして最初にラトビアを訪問。また、日本の元号が令和に変わった際の即位礼正殿の儀に、ラトビア大統領が出席するなど、大きな意義のある年でした。そして2021年には、日本ラトビア友好100周年を迎えました。

ラトビアと日本は、友好的かつ積極的な協力関係を築いています。日本は1919年にラトビアの独立を事実上承認し、1921年にはラトビアを(法律上正式に)承認しました。日本はベルギー、英国、フランス、イタリアとともに最初にラトビアを承認した5カ国のうちの1カ国だったのです。50年間占領されていた国にとって、これは記憶に強く残る出来事でしたし、ここで述べている数字はとても重要なのです。

もう一つ注目すべきことは、戦略的分野への投資です。このような複雑な時代には、志を同じくする国々との協力が加速し、そうした関係は自国の安全保障のためにも重要となってきます。

例えば、商社の三井物産がリガ港に投資し、リガ・ユニバーサル・ターミナルを所有していることは、非常に喜ばしいことです。

丸紅は、コネクサス・バルティック・グリッド(ラトビアの天然ガス運搬・貯蔵事業者)に出資し、地下貯蔵施設を運営し、そこからポーランド、リトアニア、エストニア、フィンランドといったガス市場を共有する近隣諸国へガスを運搬しています。このような戦略的分野への日本の投資は非常に重要です。

試行錯誤の経験を他国の支援に生かす
Photo: Kisa Toyoshima

試行錯誤の経験を他国の支援に生かす

ー日本ではSDGsが注目されるなど、持続可能な開発への関心が高まっています。この分野でのラトビアの取り組みにはどのようなものがありますか。

SDGsを達成することが、紛争の予防や平和の維持につながるという点では、ラトビアも日本も同じ考えを持っていると思います。ラトビアは、環境に優しい国であり続けることや、他の国のSDGs達成を支援することなど、さまざまな方法でサステナビリティに取り組んでいます。

環境に関して、ラトビアと日本が共通しているのは、人々が自然を大切にし、敬っていることだと思います。これはラトビアの政策にも反映されており、エネルギーの40%を水力、バイオマス、太陽光、風力などの再生可能エネルギーでまかなっています。

以前から促進してきたことではありますが、ロシアのウクライナ侵攻があった今はなおさら、化石燃料に頼らないより持続可能な発展が必要だという確信があります。バルト海での洋上風力発電の建設を計画するなど、脱炭素への転換を加速しています。

男女平等に関しては、ラトビアの女性は非常に強い立場にあります。何しろ、子どもを出産したら仕事に戻るというのが我々の哲学ですから。そのためには、教育や保育への投資が必要です。また、国会議員に女性が多くなることも重要で、ラトビアではその数は3分の1になっています。そうなると、法律が作られるときに女性への影響や女性の観点もより考慮されるようになるのです。

私たちは、移行期にある国に対しての支援を行っています。ラトビアは1991年のソ連からの独立回復後、市場経済、教育、司法制度などさまざまな改革を実施しなければなりませんでした。私たちが改革推進で学んだ教訓や経験を生かし、ほかの国々が良い政治制度、教育改革、貧困撲滅を推進する際に役立てようと考えました。

私たちが正しくできたことと、失敗してしまったことの両方を共有することで、ほかの国々がその教訓を生かし、同じ失敗を避けられるようになると信じています。

ダツェ・トレイヤ=マスィー(Dace Treija-Masī)

駐日ラトビア共和国大使

もっと『Tokyo meets the world』シリーズを読むなら……

  • Things to do

コロナ禍の終わりが見え、世界中で規制が撤廃されてきた今、コロナ終息後の東京の新しい方向性を示す斬新なアイデアやインスピレーションが求められている。

タイムアウト東京はTokyo meets the worldシリーズを通して、東京在住の駐日大使へのインタビューを続け、都市生活に関する幅広い革新的な意見を紹介。とりわけ、環境に優しく、幸せで安全な未来へと導くための持続可能な取り組みについては大きく取り上げてきた。

今回は、チュニジアのモハメッド・エルーミ大使に話を聞いた。大使館の参事官として来日し、2018年夏からは駐日大使に就任。合わせて8年以上東京に滞在しているエルーミ大使は、東京と日本全体について幅広い視点を持つ。

パンチのきいたコーヒーとおいしいチュニジアの伝統菓子を振る舞いながら、彼は東京のお気に入りスポットやチュニジアの食が味わえる店を紹介。さらに日本とチュニジアの関係を幅広く伝え、『東京2020オリンピック・パラリンピック』で記憶に残った瞬間も話してくれた。

  • Things to do

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている『Tokyo meets the world』シリーズ。

今回はメキシコのプリーア大使とORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、大使が女性の地位向上を重要な課題としている理由や、東京のタコス事情、日本とメキシコをつなぐ歴史や、両国の精神的な共通点など、さまざまな話題について語ってもらった。

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  • Things to do

東京2020オリンピック・パラリンピックの夏は終盤に差しかかり、世界的なスポーツの祭典が東京に与えた影響を考え始めている人も多いはず。そんな時、オリンピック発祥の国の大使ほど意見を交わすのに適した人はいない。

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている「Tokyo meets the world」シリーズ。今回はギリシャのコンスタンティン・カキュシス大使に話を聞いた。ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、日本との関係、コロナ禍でのオリンピック・パラリンピック開催の意義、東京でのストレス解消法、さらにはおすすめのギリシャレストランなどについて語ってくれた。

きっとニューノーマルな日常に戻った後でも、より持続可能な未来を築きながら、街を楽しむためのインスピレーションや新しいアイデアを得ることができるだろう。

  • Things to do

『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会』(以降『東京2020』)が終わった今、多くの人は、新たな東京のビジョンを指し示すための新鮮なアイデアやインスピレーションを求めていることだろう。これまでも、東京在住の駐日大使へのインタビューシリーズ「Tokyo meets the world」を通して、持続可能な取り組みに焦点を当てながらも、幅広く都市生活における革新的な意見を紹介してきた。

今回は、2020年秋から東京に在住しているフランスのフィリップ・セトン大使にサッカー日本代表監督フィリップ・トルシエのアシスタントを務めたことでも知られているパリ出身のジャーナリスト、フローラン・ダバディがインタビューを実施。グリーンエネルギーや都市計画など、日仏両国が直面しているサステナビリティに関するさまざまな課題を語ってくれた。

また、『東京2020』のレガシーが2024年のパリオリンピックにどのような影響を与えるか、パラリンピックがどのように社会変革に貢献できるかなどについても提言。さらに、東京でおすすめの美術館や午後に食べたい懐かしいフランスの焼き菓子についても教えてくれた。

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  • Things to do

日本とオランダは旧友と言っても過言ではない。1600年に貿易船「リーフデ号」が九州に漂着して以来、親密な関係を築いてきた。4世紀たった今でも、100以上のオランダ語が日本語の一部として残っており、東京駅の東側に位置するビジネス街である「八重洲」という名前の由来は、オランダ人冒険家のヤン・ヨーステン・ファン・ローデンスタインだ。

東京在住の駐日大使へのインタビューを続けている『Tokyo meets the world』シリーズ。今回は東京タワーのたもとにある首都圏で最も美しい大使館の一つで、1928年に建てられたコロニアル様式の邸宅に住んでいる、オランダのペーター・ファン・デル・フリート大使に話を聞いた。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談で、グリーンエネルギー、環境に優しい投資、自転車インフラなどについて、おすすめの美術館や風車探しのアドバイス、東京での生活の感想などを交えて語ってくれた。

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