インタビュー:堀江貴文

原動力は、最適化されない社会への「なぜ」

作成者: Kunihiro Miki |
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テキスト:高木望
インタビュー:高木望、庄司里紗

実業家としてのキャリアだけではなく、著作家、タレント、そして飲食店プロデュースなど、常に新しい分野、領域へと活動範囲を広げていく堀江貴文。本インタビューでは、民間ロケット事業や教育機関のゼロ高等学院の開校といった近年の取り組みについてその背景を尋ねたが、その答えに一貫していたのは、いつまでも非効率的で進歩しない社会に対する「いら立ち」だった。なぜ、多くの人が彼の行動や考えに刺激を受けるのか。その魅力の原点を垣間見ることができるインタビューとなった。

いつまで経っても実現しない。だから僕がやる

堀江は、現在取り組んでいる和牛ブランディングユニット「WAGYUMAFIA」や、子宮頸がんのワクチン啓発キャンペーンなどを進める中で、政治家から意見を求められることが多くなった、と近況を語る。国の法整備をなす彼らとの対話を重ねることで、政治家へ支援を働きかけるロビイングの重要性に気づかされたという。

「最近は和牛や予防医療の件で政治家と会うようになり、当事者として意見を聞かれたり、『どんどんその領域について教えてください』と頼まれることが多くなりました。それらの領域の法整備や支援を進める上で十分な知識を持っていない政治家も多くいます。そもそも事業の重要性に気づけていなかったりする場合もあるので、声を上げることは大事なんだと痛感しています」

堀江が手がける事業のなかでも、特に宇宙開発事業は、国からの支援も必要とされる分野だ。観測ロケットの「MOMO」3号機の打ち上げ成功のニュースが記憶に新しいが、彼が民間で低価格なロケットの開発に取り組むようになったきっかけは、なかなか進歩しない宇宙開発技術に疑問を持ったことだった。

「2001年を過ぎても一向に宇宙旅行へ行ける気配がない。何かおかしいことが起こっていると思ったんですよ。人間は宇宙に行ける、ということを誰もが知っているのに行けないなんて嫌じゃないですか。ただ、いつまで待っても誰も実現させようとしない。だから僕自身が宇宙開発に着手することにしたんです。」

考えつかなかったようなアプリケーションが出てくるはず

「ちなみに現状は、日本で一番高性能なロケットを開発しない限り、国の科学技術予算は確保できません。高性能な技術を開発するためには、必然的にある程度の予算が必要になる。民間企業で大量生産ができ、コストダウンが可能なロケット、というのはまだ世界で登場していません。低価格なロケットを使うことでトライアンドエラーが容易になれば、それだけ宇宙開発技術は進歩する」

「需要が見込めるからこそ、世界トップシェアは狙える」と語る堀江。小型衛星ロケットをローコストで何度も打ち上げられるようになった先には、宇宙というプラットフォームの中でさまざまなアプリケーションが生み出されていく未来を想定する。

「インターネットの黎明期、NASAの公式サイトにアクセスするだけで『すげえ!』と興奮する時代がありました。でも今はサイトにアクセスすることは当たり前です。さまざまなアプリケーションが登場し、Instagramで誰もが画像を投稿したり、ソーシャルゲームでオンライン対戦ができるようになりました。いずれ宇宙に誰もがアクセスできるようになったら、今では考えつかなかったようなアプリケーションが出てくるはずです。だからこそ、まずは誰もがスムーズに宇宙へとアクセスできるようにするためのプラットフォームを作らないといけないんです」

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教育に3年もかける必要なんかない

「なぜ宇宙旅行ができないのか」「なぜ宇宙開発技術は進歩しないのか」。この「なぜ」は彼自身の行動における重要な原動力のようだ。例えば、昨年10月から開校した堀江主宰の通信制高校「ゼロ高等学院」(ゼロ高)からも、従来の教育機関のシステムに「なぜ」をぶつける彼自身の姿勢を垣間見る。

「ゼロ高ってそもそもフェイクなんですよね。『高校』って名前をつければみんな入るかも、って思って名乗っているだけで。僕もただの広告塔みたいなもので、最初のコンセプトを考えてPRをするだけ。何かを与えたり教えることはありません。強いて言えば、生きている姿を見せることくらい。

高校卒業資格も一応取れますが、そんなものは何の役にも立ちませんよ。高卒資格がいかにくだらないものか、というのがわかれば、すぐに退学していいんです。教育だって3年もかける必要なんかない。スマホやPCが普及している今、大学受験に必要な数学だって、3ヶ月あればできるようになります。小中高と時間を費やすなんてもったいない。今、僕がもし小学生だったら、どんどん社会に出ていくでしょうね」

これまでの生き方や枠組みは無効になる

「教える・学ぶ、なんて感覚は一切ない」と語る堀江。オンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」も、ゼロ高と同じコンセプトを持っている。彼がこれらの取り組みを通して伝えたいのは、社会の変動に合わせて柔軟に生き方を変えることの重要さである。

「これからシェアリングエコノミーやAI技術の発展により、大きく社会のインフラが変革していきます。社会全体が最適化し、これまでの生き方や枠組みは無効になります。ホワイトカラーの9割が必要なくなるし、バスの運転手やスーパーのレジ打ち、なんて仕事もなくなる。ゼロ高は、どんなに社会が変わっても幸せに生きていけるスキルを身につける、という『生き方改革』を行う場です。僕も生徒と交流したいわけじゃない。ただ、生き方改革の場を作りたいだけなんです」

実際にそういった世界が訪れたとき、たしかに我々に残されているのは、「なぜ?」という疑問を持ち、情報を選択し、考えるという行為だ。勉強や仕事に限らず、遊びや趣味、生活そのものに関わる全てのモノ・コトの意義を考え、選びなおすことが、本当の意味での「生きる」ということに繋がるだろう。

堀江が取り組んでいるプロジェクトは、これからも領域にとらわれず、拡張され続けていくはずである。彼の「生き方」そのもののなかに、次の時代を生きる上でのヒントが見えてくる。

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