1. Tokyo Meets the World Norway
    Photo: Kisa Toyoshima(R-L) Ambassador of Norway to Japan, Inga M. W. Nyhamar; journalist Florent Dabadie
  2. Tokyo meets the world Norway
    Photo: Kisa ToyoshimaAmbassador of Norway to Japan, Inga M. W. Nyhamar

駐日ノルウェー大使に聞く、東京で楽しむノルウェー文化と男女平等を作る暮らし方

環境を大切にするノルウェーの国民性や注目すべきSDGsへの取り組みも紹介

テキスト:
Ili Saarinen
翻訳:
Genya Aoki
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コロナ禍の終わりが見え、世界中で規制が撤廃されてきた今、コロナ終息後の東京の新しい方向性を示す、斬新なアイデアやインスピレーションが求められている。

タイムアウト東京はTokyo meets the worldシリーズを通して、東京在住の駐日大使へのインタビューを続け、都市生活に関する幅広い革新的な意見を紹介。とりわけ、環境に優しく、幸せで安全な未来へと導くための持続可能な取り組みについては大きく取り上げてきた。

今回は、2019年8月に着任したインガ・ニーハマル駐日ノルウェー大使に話を聞いた。インタビュアーはパリ出身のジャーナリストであるフローラン・ダバディだ。

ニーハマル大使は2004年から2009年にも東京の大使館で公使参事官を務めた経歴を持つ。日本通でもある大使が両国の共通点を多く紹介し、ノルウェーと日本が取り組んでいるSDGsへの施策や東京での生活、東京でノルウェー料理が楽しめる場所についても教えてくれた。

ーこれまでの日本の印象を教えてください。

私が初めて東京に来たのは約20年前になります。その時と比較して、「それほど変わっていない」というのが率直な印象です。日本は非常に安定した社会なのだと思います。ですが、現在の日本人は自分たちの価値や可能性をより強く意識し、世界に対してより良くブランディングができるようになってきています。コロナ禍の最中ではありますが、この先も観光は発展し、多くの外国人観光客を呼び込むと思いますよ。

男女平等という点でも、若い世代は顕著に変化していますね。父親が子どもを抱っこしたり、ベビーカーを押したりする姿を目にするようになりました。まだまだ課題は多いですが、良い方向に向かっているのではないでしょうか。

ー東京での生活はいかがですか。また、お気に入りの場所はありますか。

私も夫も自然が好きなので、都会で自然を感じられる場所をよく訪れます。(国立科学博物館附属)自然教育園は、私の大好きな場所の一つ。近所の有栖川公園で毎日マイナスイオンを浴びていますし、根津美術館の庭園も好きですね。

また、私たち夫婦は谷中を歩くのがとても好きなんです。パンデミック以前は人気スポットとしてちょっとしたブームでしたが、今でも静かで伝統的な良い街です。ギャラリーや寺院、小さな路地があり、上野の文化施設にも近い。歩いて街の新しい面を発見するのが好きなんです。

東京でノルウェーを感じる方法
Photo: Kisa Toyoshima

東京でノルウェーを感じる方法

ー故郷の味を味わうならどこに行きますか。

ノルウェーの有名なコーヒーショップ、フグレンは今や東京のいくつかの場所に店舗を構えていますね。以前は渋谷で素晴らしい北欧デザイン家具の店(Norwegian Icons)も経営していましたが、コロナ禍になってからは、オンライン販売のみになりました。フグレンの店舗には、私の両親や祖父母たちが持っていたような1950、60年代の家具があります。

私の個人的なお気に入りは、谷中のベーカリー、ヴァーネルですね。ノルウェーのサワードウブレッドやシナモンロールが楽しめるだけでなく、2階の窓際の畳に座って中庭を眺めることができます。

食事以外では、神田のノルウェージャンレイン日本1号店では美しいレインコートを販売しています。このブランドの発祥の地であるベルゲンではたくさん雨が降るので、レインコートの質もピカイチなのです!このほか、ジュエリーやファッションで人気のトムウッドプロジェクトは、現代的なノルウェーを象徴しています。

ー今のノルウェーと日本の関係をどのように見ていますか。

コロナ禍以前は、日本人観光客がかなり増え、この20年で、日本におけるノルウェーの認知度は飛躍的に高まりました。日本人観光客はオーロラが見たくてしょうがないので、ほとんど誰も来ない真冬に来るんですよ(笑)。冗談はさておき、日本人は思慮深さと気立ての良さで愛されています。また近いうちにお迎えできるといいですね。ぜひ夏にも訪れてほしいです。

両国は、政治的にも経済的にも安定した関係を築いており、特に海を重視しているという事実によって特別な目標で結ばれています。私たちはサケやサバといった人気のある食材を輸出しており、実際、サバは日本で加工されることが多いのです。

また、ノルウェーと日本はともに君主制の国です。ただし立憲君主制で、君主は政治的な権力を持たず、その国の価値観や伝統に基づいて国を代表する存在です。ノルウェーでは、19世紀初頭から独自の憲法を制定しています。1905年に完全な独立をはたすと、国民投票によってデンマークの王子が新しい国王に選ばれ、ノルウェーの新しい君主制が確立されました。

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新車台数の65%が完全な電気自動車
Photo: Hendrik Morkel/Unsplash

新車台数の65%が完全な電気自動車

ーノルウェーは、SDGsや環境問題にどのように取り組んでいるのでしょうか。

ノルウェーの全ての省庁にSDGs関連の目標が設置されています。特に注目したいのは、SDGsの14番目である「海の豊かさを守ろう」です。ノルウェーの経済は、その多くが海に依存しています。日本と同じく、人口の大半が海沿いで生活していますから。

石油や天然ガスの採掘で知られていますが、漁業も重要な輸出産業です。今後数十年の間に、海は世界の人々にとってこれまで以上に重要な食料供給源となり、地球にとって不可欠なバランスを保つための重要な要素となっていくでしょう。海洋におけるプラスチック汚染は、私たちが解決しなければならない喫緊の課題です。風力発電も、風の強い海辺で大きく発展していくでしょう。

ノルウェーは、電気自動車おいて先進的な国の一つです。2021年、ノルウェーでは新車の65%が完全な電気自動車となり、世界記録を更新しました。日本も今後、電気自動車の生産台数を増やしていくでしょうし、ノルウェーではすでに日産リーフが大人気です。私たちの国で電気自動車(EV)への移行が早かったのは、長年、普通車とガソリンに重税がかけられてきたことが後押ししています。EVは非課税で、もちろんガソリンも使いません。

また、民間と公的機関の両方が投資して、EVの充電ネットワークを充実させました。2025年には、ノルウェーで販売される新車は全て完全な電気自動車にするという目標があります。そして、ノルウェーにおける国内消費電力は、現在ほぼ全てが水力発電でまかなわれています。

Photo: Kisa Toyoshima

ーそのほかに注目すべきSDGsの取り組みはありますか。

北京冬季オリンピックでのノルウェー選手の活躍を見れば分かるように、ノルウェーには素晴らしいスポーツ文化があります。これは決してアスリートだけにとどまりません。子どもたちが屋外で遊ぶことを奨励しており、こうした文化は心身の健康に対しても非常に良い影響を及ぼしています。

ノルウェーでは「天気が悪いんじゃない、着ている服が悪いだけ」と言います(笑)。つまり、子供たちは雨や雪や季節を問わず、ありのままの自然を楽しむべきだということです。
しかし、これは陸上だけでなく、海の生物多様性や手つかずの自然を守る必要があることも意味しています。気候変動に配慮したエネルギーや交通システムに大きな投資を行う際には、しばしばこのような問題が発生します。ノルウェーは開発援助においても、SDGsを強く優先しているのです。

日本はもともと自然との関わりを大切にしてきた国ですから、共有できる価値観があると思います。例えば木材です。約25年前に建設されたオスロ空港は、地元の美しい木材でできています。

日本の建築はすでに世界で高い評価を得ていますが、どの国でも、建築資材の再利用など、建設部門を持続可能なものにするためにやるべきことはたくさんあります。

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男女平等におけるノルウェーの30年
Photo: Kisa Toyoshima

男女平等におけるノルウェーの30年

ーノルウェーは男女平等の先進国としても知られていますよね。

ノルウェーは長い間、男女平等の分野でリーダー的存在でしたが、何か秘訣があるというわけではありません。ただ、必要な施策を実行し、それを実現する意志が必要なだけです。ノルウェーは独立以来、いや、それ以前から150年以上にわたって(男女共同参画に)取り組んできました。

私が外務省に入省した1990年代初頭には、すでに採用は(男女)半々でしたが、それは応募が半々くらいだったからです。それでも30年前は、大使や政治のトップに立つ女性は、今と比べると非常に少なかったのです。ですから、ノルウェーでも状況は急速に変化しています。

女性のエンパワーメントを促進することが目的であれば、できることはたくさんあります。ノルウェーでは、私生活や家庭は何よりも大切なので、仕事の後に上司や同僚と飲みに行くことはありません。男性も女性も、普通のサラリーマンでもトップマネジメントでも、夕方にはデスクを離れて子どもを学校に迎えに行き、一緒に夕食を取り、子どもが寝るまで一緒に遊ぶことになっているのです。

もちろん、その分、夜遅くまでまた仕事をしないと追いつかないこともありますが、オンとオフで長期的に充実した日々を送るためには、健康的な生活とリズムが必要なのです。

ー最後に、サステナビリティへの取り組みの面で、日本の将来をどのように見ていますか。

日本は、化石燃料への依存を減らし、再生可能エネルギーへの移行を促進する「グリーンシフト」を重要な政治目標に掲げています。これは大きな変化であり、非常に期待できるものです。日本は、新しいクリーンなエネルギー生産によって自給を実現することで、他国への依存を減らし、エネルギー安全保障の実現に貢献することができると思います。

ノルウェーは洋上風力発電などの再生可能エネルギーの分野で多くの経験を積んでおり、そのノウハウや技術は日本の一助になるだろうと考えています。また、ノルウェーと日本は長年にわたり水素技術の開発で協力してきました。水素は、将来的に日本の重工業や長距離輸送に役立つエネルギー源となるでしょう。

インガ M. W. ニーハマル(Inga M. W. Nyhamar)

駐日ノルウェー大使

フローラン・ダバディ(Florent Dabadie)

ジャーナリスト

1974年、パリ生まれ。1998年、映画雑誌『プレミア』の編集者として来日。99~02年、サッカー日本代表監督フィリップ・トルシエの通訳兼アシスタントを務める。現在はテレビ番組のナビゲーター、スポーツキャスターなどで活躍中。

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