訪日外国人は何を求めるのか、ショッピング編

爆買いブームは本当に終焉したのか、エキスパートの目線で最近の市場動向を追う

タイムアウト東京が主催するインバウンドセミナー『世界目線で考える』の2017年第2回が3月21日(火)に開催された。今回は、「インバウンド・ショッピング編」と題し、株式会社三越伊勢丹ホールディングス マーケティング戦略部の瓦林恭子、森ビル株式会社 商業施設事業部の石川哲史、株式会社JTBコミュニケーションデザイン インバウンドプロモーション推進室の滝川貴志と、3人のエキスパートがゲストとして登場した。

第1部では、ゲストそれぞれの取組みを紹介。最初に登壇したのは、株式会社JTBコミュニケーションデザイン インバウンドプロモーション推進室の滝川貴志。滝川は、7年程前よりインバウンド事業に携わってきた人物だ。3年前にはインバウンドサポーターズと呼ばれる、日本に住む外国人の視点を調査するための学生チームを結成。現在では、20ヶ国100名のメンバーが在籍している。また、JTBコミュニケーションデザインでは、東京都庁、丸の内KITTE、羽田空港国際線ターミナル内にある観光案内所を運営にも力をいれており、それらの活動から見えて来た旅行者の動きについて滝川は、留学生や観光案内所での声を聞くと、招き猫の発祥の地である豪徳寺や、ハリネズミカフェなど、日本人でも知らないスポットを訪れていたり、隈健吾の建築が観られる場所、幽霊に関する場所などを聞かれることもあると話す。いわゆる観光地でないニッチな場所や、今まで日本人だけが訪れていたような場所を観光客は求めていることが見えてきた。また、観光客が行かないような体験を探しているとの問い合わせも多いそう。そして、訪日外国人は5人に1人が観光案内所を活用しており、このような対面式で信頼できる情報源からの情報収集や、SNSでの共有により、日本の魅力が拡散され、新たな観光客の集客に繋がっているのではないかと語った。

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株式会社三越伊勢丹ホールディングスマーケティング戦略部 顧客政策担当 インバウンド推進に所属する瓦林恭子は、2年半ほどこの仕事に携わり、インバウンドの商品の急激な伸びと、メディアが最近報じている爆買いの終焉を現場で見て来た人物だ。終焉は事実なのだろうか。そして、三越伊勢丹ホールディングスの目指す、訪日客との向き合い方について語ってくれた。 瓦林は訪日客のショッピングについて、2015年と2016年の旅行消費額の内訳を比較し、2015年に1兆4,539億円だったものが、2016年には1兆4,261億円と、ショッピングに使う金額が落ちているというデータを提示した。これが爆買いが終わったと言われる要因のひとつである。しかし、買い物代は前年を下回っているが、日本に訪れる外国人旅行者数は上昇傾向で、宿泊費、飲食費は前年より上がっている。終焉と聞くと前年の半分くらいになってしまったのではないかと思われてしまうが、1人当たりの買物代を為替の変化を勘案して現地通貨に置き換えると、10%程度減少しただけということだ。また、現状では、情報量が足りておらず、免税データだけでなく、ワールドワイドなカード会社のデータを調べていかないと本当のところが見えてこないと話した。

そして、三越伊勢丹ホールディングスの最近の取り組みとしては、免税売り上げの8割が中国人という銀座三越で、中国で普及率の高いオンライン決済サービス『アリペイ』を導入。銀座三越では、化粧品が一番の売れ筋だが、ほかのカテゴリーにも興味を持ってほしいということもあり、全館導入を決めたそうだ。また、株式会社三越伊勢丹ホールディングスは「this is japan.」をテーマに日本の四季や五感をいかした商品展開、サービス、ものづくりをミッションと考え、海外に日本の良さを発信することを目指し、現在様々なアプローチを行っている。

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1990年4月、森ビルに入社した石川哲史は、上海プロジェクトやヴィーナスフォート開業に携わり、2013年より2016年8月まで、今年の4月にオープンすることで注目を浴びている、銀座最大の商業施設GINZA SIX開業準備室に所属していた。過去には、1999年よりヴィーナスフォートを担当していた石川。当時はまだ「インバウンド」という言葉すらなかったが、海外(主に韓国、台湾)からお台場を訪れる観光客は多く、また2001年に、国内最大面積を誇る『バーバリーブルーレーベル』がヴィーナスフォートに出店したことで、同店を目的に来店する外国人の客が多かったそうだ。しかし、施設のほかの部分にも注目してほしいということで、フロアガイドやウェブサイトの多言語化、外国人スタッフによる施設のガイドサービスの充実を図った。すると、施設のガイドサービスがあるということで、施設にすべてを任せることができるという利点に飛びついたツアー業者の観光バスが、多いときには1日に70台以上停まるようになったそう。そして2006年には、銀連カードの導入を日本で2番目に行う。当初は利用率があまり良くなかったが、その後お台場の3つの商業施設にも声を掛け、お台場全体で導入することに。これらの取り組みが、現在、お台場をひとつの観光スポットと認めてもらえている要因のひとつになったのではないかと話した。

そして、2017年4月20日(木)にオープンするGINZA SIXの開業準備を担当してきた石川は、訪日客の情報収集源である観光案内所を作るにあたり、様々な観光案内所を見て研究したところ「聞かれた質問に答えることはできるが、提案する力が弱い」ことに気づき、新しいかたちの観光案内所を計画した。GINZA SIXでは、チケットの発券や荷物の預かり、トラベル用品の販売、免税手続き、両替と、ワンストップで必要なことができる利便性の高い場所になる予定だ。

また、石川は爆買いの終焉について、海外製品の購入に対し徴収する「行郵税」(例えば、高級腕時計を購入すると60パーセントも税がかかってしまう)が導入されたため、高額品が売れなくなったことも爆買いの終焉という言葉に集約されてしまったのではないかと話す。しかし、中国の消費は底堅く、日本に訪れたいと考える人々も多く、富裕層の購買動向は相変わらず高く、高額商品にきちんと消費をしているのが伺えるのでしっかり対応していくべきときだと話していた。

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第2部では、タイムアウト東京代表の伏谷博之が聞き手として参加し、第1部のそれぞれの話題を踏まえながらトークセッションが繰り広げられた。昨年から、様々な場所にオープンしている商業施設。海外の客から見るとまだまだ、それぞれの個性については分かってもらえていないのが現状だ。それを踏まえ、伏谷がこれからの商業施設のあり方について尋ねると、瓦林は、これからは、日本がどのようなイメージでとらえられるかを真剣に考える必要があり、ショッピングにおいてクーポンを配って安売りをしているイメージというのは2016年あたりで終わってほしいと回答。これからは、ショッピングを通して、その人の人生が変わるような体験を提供していくことや、新しい商品の提案が大切になってきていると話した。また、石川はこれに対して「クールジャパン」から入ってアニメのイメージが先行しているが、日本が世界に誇れるのは、テクノロジーと、細やかなところに気を配れる日本人独自の気質であることに着目し、例えば「テクノロジーと温泉(健康)と旅館(日本人によるおもてなし)のもてなし」のパッケージなど売れる部分がまだまだあるが、日本の売り方の手数が少なく、まだまだ日本の良い部分が存分にいかされていないと感じ、日本の持っている良さをもっと上手に発信していくことでもっと興味を持ってもらえるのではないかと語った。

また、今回のトピックとなった「爆買いの終焉」について、この言葉がメディアで報道されて以降次は、インターネットを使った通信販売「越境EC」が来ると言われているが、現場では実際の動きはどうなっているのかと伏谷が質問。瓦林の担当する三越伊勢丹でも2016年の秋より越境ECに取り組んでおり、今後拡大を目指しているところだそう。

未だ手探り状態である、インバウンド事業だが、今回のトークセッションで見えてきたのは、多様性のある観光客に対しての個別の対応や、観光客、日本人問わず、誰もが楽しんでもらえるショッピングを提案していくのが大切であるという結論に。オープンを控えるGINZA SIXや2020年に向けて増加するであろう商業施設、それぞれの展開に今後も注目していきたい。

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瓦林恭子(中央)
株式会社三越伊勢丹ホールディングス マーケティング戦略部 顧客政策担当 インバウンド推進 1992年伊勢丹入社。 広報担当、伊勢丹新宿店 婦人服部門のセールスマネージャー、バイヤーなどを経て、2009年から顧客政策を担当。 2015年4月から現職。

石川哲史(左)
森ビル株式会社 営業本部 商業施設事業部 商業運営部運営企画グループ 課長 1990年4月、森ビル入社。1999年より商業担当となり、ヴィーナスフォート開業に関わる。2006年より表参道ヒルズ副館長を経て、2009年より再びヴィーナスフォートへ。都心のアウトレット「ヴィーナスアウトレット」開業責任者を経てヴィーナスフォート館長を務める。2013年より、GINZA SIX開業準備室に配属。2016年8月より現職。

滝川貴志(右)
株式会社JTBコミュニケーションデザイン インバウンドプロモーション推進室 2006年株式会社JTBコミュニケーションデザイン入社。官庁、企業のインバウンドプロモーションを主たる領域として、国内外でプロジェクトを多数手がける。

2017年は商業施設に訪れる……

2017年、東京にオープンする商業施設

2020年のオリンピックに向けて、目まぐるしい変化を遂げている東京。2017年のオープンで注目したいのは、銀座エリア最大級の商業施設である「GINZA SIX」や、渋谷駅周辺エリアの整備の一環である「渋谷キャスト」だろう。そのほかにも、ロボットが働く「変なホテル」や360°客席が回転する劇場「IHIステージアラウンド東京」など最新の技術をユニークに取り入れた施設のオープンも続く。多様な変化を遂げる東京の街を見守ろう。

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By Mari Hiratsuka

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