「手相に神線がない人へ」、鑑定約4千人待ち占い師の大串ノリコが伝えたいこと

ーまず、書籍作成のきっかけを教えてください。

誰でも手相を楽しめるようにしたいと思ったからです。日本には多くの手相の本が出ていますが、手相を見ることができる人はとても少ない。

例えば「運命線」という線。運命線とひとことでいっても人それぞれ形も長さも違うため、自分の手相の中で、どの線が「運命線」なのかが分からないことが多いです。

100人、1000人見ていると線の細さといった違いも分かるようになるのですが、自分の手だけ見ている人にはとても難しい。それを分かりやすくするとともに、どうやったら分からない人でも楽しめるかということを考え抜いた結果、できたのがこの本です。

ー私も自分の手とにらめっこしながら読みましたが、とても分かりやすい本だと感じました。特に気を遣った点などはありますか？

2つあります。一つは誰でも持っている感情線と知能線の長さに注目して、その長さの違いや組み合わせで全21パターン作り、それで性格診断などができるようにした点ですね。これは誰もやったことがない、全く新しいオリジナルの方法論です。そのため、デザイン化するに当たり、線の強弱や細かい線の描き方を調整するのにとても苦労しました。

もう一つは、悪い手相がある時に「凶でした」と伝えるだけで終わるのではなく、未来を明るく変えるための具体的なアドバイスを付けたことです。これはとても評判が良く、「読者の人から無気力だった子どもに試してみたら元気になった」といった声もいただいています。悪いだけでは終わらせずに変えることができるのが、「未来を変えるイルミナフォーチュン手相」の特徴ですね。

一例を挙げましょう。「セックスレスで悩んでいるあなたへ」というページがありますが、そこには結婚線が二股に分かれている手相が表示してあり、それは2人の心が離れつつあることを示しています。それで終わらずに、「生花を毎日飾ることで、生きたものの前向きな気を借りて2人の関係が瑞々しさを取り戻すでしょう」（同書143ページより）といった切り口にしています。

ーあればラッキーな線といわれる「神線」についても複数紹介していますね。そもそも神線とはどんな線なのでしょうか？

一般的に多くの人が持っているものと本当にレアなものが混在しており、一概にこういうものとは言いづらいですね。そもそも「神線」が全くない人ももちろんいます。しかし、それが必ずしも悪いわけではありません。それは心のありようが反映された結果だからです。

例えば「成功線」という線は、同じ成功を手にした時でも、出る人もいれば出ない人もいます。それはその人が、その成功で満足しているかどうかで変わってくるもので、より高みを目指している人の場合は出なかったりもします。

逆に言えば、手相を書いて付け足しても構いません。線を書くことによって自分の心が変わり、行動も変わり、その成功を掴むこともできるようになるからです。

ー神線が出ているからラッキーではなく、自分の心がラッキーだと感じているから神線が出ているということでしょうか。

そうですね。意識が変わると手相は変わるものです。徐々に時間をかけて変わる人もいれば、本当に早い人は目の前で変わる人もいます。

また神線に限らず、経験が多ければ多いほど線は増えます。それが苦悩や嫌な思い出だった場合は乱れた線として現れ、それを学びに変えることができるときれいな線に変わり、神線に育っていくという感じです。

ー今、神線が出ていないからといって落ち込む必要はないのですね。

なくても全然いいんですよ。線が少ない人は心がすごく若々しい証です。また、目標が高い努力家であったり、寝て起きたら余計な悩みを忘れてしまうような人かもしれません。それは何も悪いことではないのです。

ー自分の手相を日頃見ていれば、そういったことが分かるようになるのでしょうか？

定期的に写真を撮っておくのがおすすめです。オンラインでの鑑定では、手相の写真を撮って送ってもらうのですが、3カ月前の手相の写真と比べると変化していて、良くなっているという人も多いですよ。

ー話は変わりますが、同書を使って自分で手相を鑑定した時、その結果をどう受け止めてほしいですか？

手相占いは占いの中でも「現在地」が分かるものです。今の自分がどこにいて、どんな状態で、そのままいくとどうなるかを手が教えてくれるのです。

結果の良し悪しではなく、それをうまく使って自分の未来を変えるなり、良い状態であれば進むなりするのがいいのかなと思います。仮にずれたとしてもそれも経験ですから、また軌道修正すればよいのではないでしょうか。

ー64カ国を巡り「世界の手相」を見て回ったことが占い師になるきっかけだったと同書にも書かれていますが、 世界中を旅した中で感じたことがあれば教えてください。

日本はとても幸せで、恵まれた国ですよね。道路に穴も開いてなければ、窓のないバスも走っていない。電気も水もちゃんと整備されている。それなのにみんなとても悩んでいる。人間の悩みに際限はないのだと実感しました。

片や、毎日生きることで精一杯な国でも、笑顔でいられる子どもたちがいるのを世界を旅して目にしました。私がそれを日本で直接伝えるわけではないのですが、（占い師として）話をすることで、悩んでるいる人々を元気付けることができればうれしいと思っています。

また、発展途上国の人々はサラリーマンではなく、ほとんどが自営業なんです。多様なものを仕入れて売っていて、「いろいろな生き方があるんだな」と肌で感じました。日本だと、規範のようなものに縛られて苦しくなっている人が本当に多い。その旅で実感したからこそ、多様なやり方で生きていけると日本の人にも伝えたいと思って、占い師になったのです。

ー同書の中で、その思いを込めたパートはありますか？

21パターンの性格診断の中に「あなたらしく羽ばたくには？」という項目を付けました。日本では悪い所があれば「直しましょう」と指摘するのが一般的ですが、私の占いはイルミナフォーチュンを含めて、その人の良いところを前面に出して、おのおのが生きやすい場所に行けるようアドバイスをしています。

その人に合ったポジションがあって、それがみんなに当てはまればすごく楽ですよね。その根っこには、「生き方は一つだけじゃない。いろいろあるんだよ」という思いが込められているのです。