SHOCK EYE (Photo: Kisa Toyoshima)
SHOCK EYE (Photo: Kisa Toyoshima)

湘南乃風 SHOCK EYEが語る強運の磨き方

神社は日本の有形無形の文化が凝縮された「特別な空間」

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テキスト:庄司里紗
写真:豊嶋希沙

「歩くパワースポット」の異名を持ち、彼を待ち受け画像にすると運気アップを上げるとして話題のミュージシャン、SHOCK EYE(ショック アイ)。レゲエグループ、湘南乃風のメンバーとして多忙な日々を送る傍、2021年3月には3冊目の著書となる『強運思考』を上梓(じょうし)した。ライフワークとして日本全国の神社を巡り、その魅力を伝える活動にも多くのファンが集まる。

そんなSHOCK EYEと、元外交官で世界遺産登録の実務に携わった経験を持つORIGINAL Inc. シニアコンサルタント高橋政司の対談が実現。貴重な有形遺産であり、祭礼や信仰など無形の文化を継承する場としても重要な役割を担ってきた「神社」を起点に、日本に息づく無形遺産の価値、そして運なるものまで語り合った。

日本人にとって富士山は特別な存在
SHOCK EYE(Photo: Kisa Toyoshima)

日本人にとって富士山は特別な存在

高橋:SHOCK EYEさんは多くの神社を訪れていますが、最近はどちらに行かれたんですか?

SHOCK EYE:山梨県富士河口湖町にある河口浅間神社ですね。ここの裏山には「天空の鳥居」と呼ばれる遥拝(ようはい)所があって、絶景のパワースポットとして有名な場所なんです。鮮やかな朱色の鳥居の向こうに悠然とたたずむ富士の姿は、まさに言葉にならない美しさです。

高橋:日本人にとって、富士山はやはり特別な存在ですよね。人々は古くからその姿に畏敬の念を抱き、信仰の対象としてきました。だから富士山の周辺には、富士山を御神体とする「浅間神社」の名を持つ神社がたくさんあるんです。

SHOCK:富士山吉田口登山道の起点にある北口本宮冨士浅間神社もそうですよね。ここは僕にとって特に思い入れがある神社なんです。20年ほど前、河口湖へ遊びに行く道中、何かに呼ばれたような気がしてふらりと立ち寄ったら、そのすぐ後にデビューが決まったという不思議なご縁があって。それ以来、機会を見つけて何度も訪れています。杉の巨木が立ち並ぶ参道がとにかく好きなんです。

高橋:あの参道から境内に続く厳かな空間は、まさに神域そのものですよね。富士山は2013年に世界文化遺産に登録されましたが、北口本宮冨士浅間神社も25ある構成資産のうちの一つです。

富士山は自然遺産ではなく、多くの信仰を集め、数多くの芸術を生み出した文化遺産として登録されています。だから、信仰を現代に受け継ぐ役割を担った周辺の神社の数々も、重要な構成資産として登録されているんです。

SHOCK:神社は何百年、何千年もの間、人々の心のよりどころとしてさまざまな願いを脈々と紡いできた場所。そうやって神社が今日まで存続してきたのは、人々がその場所に特別な力を感じて、大切にしてきたからこそですよね。

つまり、神社を建てたから大切な場所になったのではなくて、人々にとって特別な場所だったから神社が造られた。全国の神社を訪れるようになって、そう考えるようになりました。

高橋:おっしゃる通りで、これだけ自然災害が多い日本に今もたくさんの神社が残っているのは、その場所が守られている安全な場所だから、という見方もできます。

実際、東日本大震災では多くの神社が津波の被害を免れているんです。そういう「神々に守られた空間」で感じる神聖さや、心が整う感覚というのも、神社が持つ無形の価値だと思います。

SHOCK:神社はよくパワースポットと呼ばれますが、それは災害や争いを耐え抜いた、いわば「強運な場所」だからですよね。実は「歩くパワースポット」と言われ始めた頃、そんな呼び名にふさわしい存在になるには何をすべきか、悩んだことがあって。そんなとき、なぜか「神社巡り」がふと思い浮かんだんですよ。

高橋:それが神社を巡るきっかけになったんですね。

SHOCK:はい。それまでの僕は、むしろ「神頼み」や「運」を信じないリアリストでした。でも、お参りしながら「運とは何か」を自分なりに見つめ直すうちに、強運の持ち主として誰かを幸せにすることも自分の役割だと思えるようになってきた。

日本人は小さい頃から初詣やお祭り、さまざまな願い事のたびに神社を訪れますよね。そうやって知らず知らずのうちにご利益にあずかり、精神的な支えにしてきたからこそ、そう思えたのかなと。私たち日本人にとって、神社は有形無形の価値を併せ持つ特別な場所なんですよね。

伝統文化や風習といった無形の価値
高橋政司(左)とSHOCK EYE(Photo: Kisa Toyoshima)

伝統文化や風習といった無形の価値

高橋:ただ、世界遺産登録という視点で見ると、そういう無形の価値を客観的に説明するのはなかなか難しい。なぜなら、私たち日本人にとって神社に参るのは日常的な行為の一部ですから、身近過ぎてその価値に気付きにくいのです。

だから、つい鳥居の形や社殿のデザインなど分かりやすい有形の価値や建てた年代や人物などについて力説しがちなのですが、これが海外の人々には響かないんです。

SHOCK:日本人が考えるアピールポイントと、海外の人々が魅力を感じるポイントは、必ずしも一致しないんですね。

高橋:そうなんです。そもそも世界には壮大なスケールや芸術性を持つ建造物が無数にあるわけで、純粋に有形の価値だけで、世界遺産の条件である「顕著な普遍的価値」を理解してもらうのは難しいですね。だからこそ世界遺産登録の現場では、そこに付随する伝統文化や風習といった無形の価値を、海外の人でも理解できるように説明する戦略が必要なんです。

SHOCK:無形の価値を言語化するのは、すごく難しいですよね。僕自身、神社の魅力を伝えるのにいつも苦労しています。具体的にどのように伝えるんでしょうか。

高橋:世界遺産の審査は、選挙で選ばれた21カ国から成る世界遺産委員会が行います。ただ、委員たちの国籍や宗教は多様ですし、彼らが全員、日本の文化に精通しているわけでもない。だからまずは共通の文化的背景を探り、深く共感してもらえるポイントを探ることが重要です。

SHOCK:言葉を翻訳するように、日本の文化が持つ価値を彼らが理解できる文化的概念に置き換えるということですね。

高橋:その通りです。その戦略が功を奏した事例が、2018年に世界遺産となった「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」です。日本は、当初、「禁教期にひそかに信仰を続けた独特の伝統の証拠登録」を目指す過程で私たちは当初、伝来期から禁教期を経て復活期に至るまで全ての時代の建物群の考古学的価値などを重視して推薦書を作りましたが、現地調査に当たったユネスコの諮問機関の評価は、禁教期の価値のみを評価対象とし、世界遺産委員国の反応も芳しくありませんでした。

SHOCK:そんな経緯があったんですね。面白いなあ。

高橋:日本では大浦天主堂は国宝指定の教会ですが、世界遺産にはより長い歴史と規模を持つケルン大聖堂(ドイツ)やノートルダム大聖堂(フランス)といった教会がすでに登録されている。

これらの登録の経緯からも、全て比較できるわけではありませんが、建物の価値という点で評価が厳しくなるのも当然です。加えて、キリスト教は欧州から世界に広がったわけですから、日本にだけ伝来したわけではありませんよね。

SHOCK:それでも、最終的には登録が決定した理由は何だったのでしょうか?

高橋:転機は、世界が認める大浦天主堂の価値が別のところにあると気づいたことです。それは、宗教史上の奇跡の一つといわれる「信徒発見」の舞台となったこと。二百数十年もの間、激しい弾圧に耐えながら信仰を守り抜いた潜伏キリシタンたちは、命の危険を顧みず、この場所で宣教師に信仰を告白しました。

彼らの揺るぎない信仰心、そしてその歴史の重みこそ、文化や宗教の違いを超えて人々の心に響くものだ、と。委員国たちにその無形の価値を強く訴えたことが、登録のための理解を深めることに大きく貢献しました。

SHOCK:それ、すごい話ですね。もし、そのストーリーを伝えることができなかったら、登録はかなわなかった可能性があった。

高橋:日本的なものの見方ではなく、世界目線で自国の文化を見つめ直し、価値を再発見する、これが重要なんです。私はこのような考え方を「インタープリテーション・ストラテジー」(説明戦略)と呼んでいます。この説明戦略によって、かなり厳しい状況から一転、世界遺産に登録を果たした事例が、実はもう一つあって。

SHOCK:「逆転登録」として話題になった宗像、沖ノ島遺跡(福岡県)ですね。この時は、どんな説明戦略で委員たちにアピールしたんですか?

高橋:沖ノ島は宗像大社の一部で、島全体が御神体として信仰対象となっている希少な場所です。現在、沖ノ島と付随する3つの岩礁や宗像大社辺津宮など、全部で8つの構成資産が登録されています。

しかし、審査に先立つ現地調査の段階では、沖ノ島と3つの岩礁以外は構成資産から除外するよう勧告されていました。 そこで宗像大社にまつられている「宗像三女神」の伝承に注目したのです。

「古事記」には、天照大神から生まれた三柱の女神がそれぞれ宗像大社の辺津宮、中津宮(大島)、沖津宮(沖ノ島)に降臨したと記されています。

つまり、沖ノ島の信仰において、これらを含む8つの資産は切り離せないものだと主張したのです。 神道の「あらゆる物に神が宿る」というアニミズムの世界観は、日本人なら直観的に理解できるものです。

神社に行くとパワーを感じたり、心が整うような気がするのも、そういった感覚がベースにあるからですよね。でも、キリスト教やイスラム教のように一つの神を信仰する人々には、その感覚って理解することが難しいですね。

SHOCK:確かに、自然の中のあちこちに神様がたくさんいるという考え方は、一神教とは相いれないものですよね。

高橋:聖書には「岩に神様が宿る」なんてことは書かれていませんからね。ただ、委員国の中には、アフリカや中南米などアニミズム的な信仰が根付いている国もある。そんな彼らなら、沖ノ島を巡る8つの資産が不可分なものだと理解してくれると考えました。

SHOCK:その結果、逆転登録という劇的な展開になったわけですね。彼らも、アニミズムに根ざした沖ノ島のストーリーを共有したことで、そこに満ちる神聖さを感じたのかもしれませんね。

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変化し続けるという部分に価値がある
高橋政司(左)とSHOCK EYE(Photo: Kisa Toyoshima)

変化し続けるという部分に価値がある

SHOCK:今、世界にはアニミズム的な信仰を持つ国や地域があるというお話がありましたが、日本人の宗教観って、そこからさらに独特な形で進化していると思うんです。

高橋:日本人は無宗教だと言う人もいますが、実際のところ、神道から仏教、キリスト教まで柔軟に受け入れていますよね。

SHOCK:先日、ある番組の企画で「奈良の大仏」で有名な東大寺に行ったんです。奈良時代、国家安寧を願う民衆から寄付を募って建立されたという仏像と向き合っていると、人々の不安や希望を一身に受け止めてきたその姿に、深い感動が込み上げてきたんですね。

高橋:寺の境内も、神社と同じように厳かな気持ちになりますよね。

SHOCK:そうなんです。それですっかり仏像やお寺の魅力にハマってしまって。この間は、2週間で3回も北鎌倉の禅寺に足を運びました。でも、よく考えたら仏教は外から入ってきた宗教なんですよね。それなのに神社と同じような安らぎを感じるのは、日本人が神道と仏教を融合させ、「神仏習合」という新たな信仰の形を生み出したから。そのおかげで、日本人にとって神道と仏教は同じ無形の価値を持つ「心のよりどころ」に成り得たんだな、と。

高橋:やおろずの神々を大切にしながら、外来の神様も祈りの対象にしてしまう。それってなかなかすごいことですよね。

SHOCK:きっと日本人は、あらゆる物事に意味を感じ取り、生きる知恵として活用するのが得意なんですよ。例えば、その辺に転がっている石を誰かが「亀に似ている」と言い、「亀石」と呼び始める。そこに誰かが「亀は長寿の象徴だ」と言い出し、さらに「なでたら病気が治った」と言う人が現れたりして、みんなが大切にするようになる。そして長い年月をへて「ご利益をもたらす亀石様」として地域の宝になっていく、みたいな。

高橋:そういう場所は、それこそ日本中に無数にありますよね。

SHOCK:僕は日本人のそういう感性って、すごくすてきだと思っていて。たとえそれが思い込みだとしても、出会ったものや起きた出来事に自分なりのポジティブな解釈を与えることって、人生をすごく豊かにすると思うんです。

僕自身、「歩くパワースポット」という呼び名を前向きに解釈して、大切にしてきたからこそ今がある。僕を待ち受け画像にするのも、科学的な裏付けなんてないけれど、それで毎日が少しでも豊かになるなら素晴らしいじゃないか、と(笑)。つまり「縁起」や「運気」の正体って、そういうことだと思うんですよね。

高橋:病気平癒や学業成就など、神社ごとにさまざまな利益があると信じられているのも、そういう考え方が起点になっているんでしょうね。私はそういう多様な解釈に対する寛容さこそが、日本の優れた無形文化の源泉だと思っているんです。

SHOCK:ああ、なるほど。すごくよくわかります。

高橋:これまでさまざまな国で生活したり仕事をしたりしてきましたが、日本ほど多様な文化を持った国はありませんでした。例えば食文化に関しても、とてもバラエティー豊かですよね。お正月のお雑煮を一つ取っても、全国各地に130以上の種類があるのですから。

SHOCK:えー! お雑煮って、そんなにたくさん種類があるんですか?

高橋:地域によって、餅の形や具材、だしの取り方などが細かく違うんです。

SHOCK:じゃあ、隣同士の村でも、違うお雑煮を食べている可能性があるわけですね。

高橋:お雑煮を含め、和食のすごいところは、種類が豊富なだけでなく、そこに意味や願いまで込められている点です。例えば、お正月に食べるおせち料理には、それぞれに縁起やいわれがあります。

卵の数が多い数の子は、子孫繁栄。田作りは、イワシが田畑の肥料に使われることにちなんで、豊作祈願。海老の煮物は、ゆでて背中が曲がった姿が長生きを想起させることから不老長寿……といった具合ですね。

SHOCK:おせち料理には「健康と幸せを願う」というストーリーが込められているんですね。

高橋:旬を生かした多様な食材を使い、四季折々の行事を通じて感謝や祈りを表現する。そんな「日本の伝統的な食文化」としての価値が世界に認められた結果、日本の和食は2013年にユネスコの無形文化遺産として登録されています。

SHOCK:同じ世界遺産でも、有形と無形では登録の条件や基準に違いはあるんですか?

高橋:あります。まず、有形の世界遺産では、登録の条件として「顕著な普遍的価値を有すること」が明確に求められています。顕著な普遍的価値とは、言うなれば「国や人種、時代を問わず、人類全体にとって永遠に変わらない傑出した価値」のことです。ところが、無形の世界遺産の登録条件には、この文言がないんですよ。

SHOCK:それは驚きです。なぜ普遍的な価値を必要としないんでしょうか?

高橋:無形の文化は、文字通り形のないものですから、それらを守り受け継いでいく人々の存在がなければ成立しません。つまり、無形文化の最も重要な価値とは、人々が未来に文化を紡いでいく「伝承」という行為そのものなんですよ。長い時間をかけて行われる伝承には、その過程において、必ず時代に則した変化が伴います。だから「普遍的な価値」という概念とは相反する。ここが両者の最も大きな違いですね。

SHOCK:変化し続けるという部分に価値があるって、すてきな考え方ですよね。今日、高橋さんのお話を聞いていて、それって形のあるなしにかかわらず全てに当てはまることなんじゃないかな、と思いました。形あるものだって、時を経れば傷がついたり壊れたりする。

でも、そういう傷さえもすべて歴史の一部として捉え、だからこそ素晴らしい今があると胸を張ってその価値を語ることが大事なんだな、と。そうすれば、日本文化の素晴らしさをより広く世界に伝えられるはず。あらゆる事象に意味を感じ取り、価値を見い出すことは、僕ら日本人はすごく得意なわけですから。

高橋:本当にそうですね。まだ語られていない日本の無形の価値やストーリーに、まずは私たち自身が気付けるかどうか。より多くの人々に日本の良さを知ってもらうためにも、見えないものに耳を澄ます姿勢を大切にしたいですね。

SHOCK EYE(ショック アイ)

「歩くパワースポット」の異名を持つ、神奈川県鎌倉市出身、レゲエグループ、湘南乃風のメンバー。2003年、アルバム『湘南乃風 ~REAL RIDERS~』でデビュー、19枚のシングルと7作のアルバム、ベスト盤2タイトルをリリース。2019年4月に発売した初の著書『歩くパワースポットと呼ばれた僕の大切にしている小さな習慣』は5万部のベストセラーとなった。今後の動勢にも注目が集まる。

 

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