ローカルレジェンド #26 新人Hソケリッサ! アオキ裕キ

路上生活者たちによる究極の肉体表現とは

Advertising

タイムアウト東京 > ローカルレジェンド> ローカルレジェンド #26 新人Hソケリッサ! アオキ裕キ

テキスト:八木志芳
写真:鈴木大喜

「毎日生きることに向き合う人間の、その体から生み出されるエネルギーの表現を見たかった」

ダンサー、振付師として活動するアオキ裕キ(ゆうき)は話す。彼は路上生活者、元路上生活者によるダンスパフォーマンス『新人Hソケリッサ!』、通称「ソケリッサ」を立ち上げた人物だ。30代後半〜70代のおじさんたちによる踊りは、生命の輝きやはかなさを感じる強烈なエネルギーを放ち、見るものの心を揺さぶる。そのダンスは徐々に話題となり、シンガーソングライターの寺尾紗穂のライブやMVに参加したり、アートフェスティバルに呼ばれたりと評価を得ている。2019年末には彼らの姿を追ったドキュメンタリー映画が公開予定だ。

2019年6月19日に横浜・象の鼻パークで行われた公演より(撮影 河原剛)

アオキのダンサーとしてのスタートは華々しいものだった。1987年に上京、ストリートダンスを主軸に活動し、テーマパークのダンサーを経験した後、有名タレントのバッグダンサーや振り付けなどを担当する。

転機となったのは、2001年9月11日のアメリカの同時多発多発テロ。当時ダンスを学ぶためニューヨークにいたアオキは、おぞましく悲しい事件現場を目の当たりにし、「これまでの自分のダンス表現が薄っぺらく感じた」という。人間の内面を追求し、舞踏、日舞、ヨガなど自身の体に目を向けて「自分とは」「人間とは」と自問自答する日々だった。

悶々とした毎日の過ごしていた2005年、新宿の路上で歌うストリートミュージシャンの横で、路上生活者が尻を出したまま眠っているという光景を見て、衝撃を受ける。その時「逆に路上で暮らすおじさんが、華やかな表舞台に立った時、どんなものが生まれるのだろう」という純粋な思いが浮かんだ。

それからアオキ自らが路上生活者に声をかけ、一緒に舞台を作るメンバーを探すようになる。しかし、普段は人から目を背けられるような存在の人々を表舞台に立たせるということは容易ではなく、なかなか前に進まないまま2年が過ぎた。その後、ホームレスが路上で売る雑誌として知られる「ビッグイシュー・ジャパン」の協力を得て、参加者が集まるようになり、何度ものメンバーの入れ替わりを経ながら、ステージが出来上がっていった。

週に一度のペースで練習を行う

現在のメンバーはアオキ以外で7人。うち1人は今でも路上で寝泊まりしているという。もちろん、全員ダンスは素人。しかし、多くの人の魅了するステージができるのはなぜだろうか。

「最初は踊りの形を見せて振り付けをしていたんだけど、それだとおじさんたちの個性が死んでしまった。だから言葉で振り付けするようにした。歩く姿が特徴的な場合は『月の上を歩くように』とか、口元の動きを強調する場合は『ゴマ粒をかじるように』とか。そうすると、彼らの身体の記憶が呼び覚まされて、身体に見合った自然な表現が生まれてくるようになった」

メンバーに寄り添うように舞台を作り上げていくアオキ。ソケリッサの活動を通じ、表情が豊かになり、生活が変化したメンバーもいる。しかし、アオキは社会福祉的な観点から活動するのでなく、アートとしての表現に取り組みたいという。

「自分はホームレスの現状を訴えたいわけではない。純粋な肉体表現としての踊りを追求したい。ホームレス支援などは専門の団体に任せ、彼らとも繋がりながら、ソケリッサはソケリッサとしてやっていきたい。おじさんたちも『自分たちはアート作品を提供しているんだ』という意識を持っているからこそ、モチベーションが上がるし、ここまで続けられたんだと思う。」 

来年にはロンドン公演も予定され、ますます活躍の場が広がっているソケリッサ。今後のアオキの目標は「アフリカやインドなどの貧困地域で、おじさんたちと踊りたい。自分たちの踊りを通じて、表現や創造することの意義を伝えたい」という。ただ、メンバーにそれを伝えると「暑いから嫌だ」「遠いから嫌だ」と言う。究極の自然体というのがソケリッサの魅力だろう。

 

◼️今後の予定

・2019年8月11日(日)「ソケリッサと踊ろう!Let’s Dance with Sokerissa 

・2019年8月13日(火)14日(水)「ソケリッサと踊ろう!三角公園夏祭りで発表!

2019年9月5日(木)「DANCE TRUCK TOKYO

・2019年9月21日(土)「新人Hソケリッサ!杜のダンスワークショップ

 

ソケリッサ 公式WEB SITEはこちら

ローカルレジェンド #25 あさくら画廊 辻修平

東武伊勢崎線竹ノ塚駅から徒歩15分、昔ながらの雰囲気が残る住宅街の中に突然現れるショッキングピンクの一軒家を知っているだろうか。周囲の風景と比べあまりに異質なその家は、見るもの全ての目を奪う。ここは辻の画廊兼自宅だ。

八木プロフィール

ライター プロフィール

八木志芳

大学卒業後、IT企業・レコード会社を経て、福島県のラジオ局にてアナウンサー・ディレクターとしてのキャリアをスタート。2017年11月にフリーのラジオパーソナリティー・ナレーターとなる。FM FUJI「SUNDAY PUNCH」レポーター、千葉テレビ ナレーションなどを担当。 F.Factory Japan所属。

Twitter:https://twitter.com/ShihoYagi

Instagram: https://www.instagram.com/yagishiho/

Advertising