1. サルテトック
    Photo: Keisuke Tanigawa店を支えるスタッフとオーナーの塔野(中央)
  2. サルテトック
    Photo: Keisuke Tanigawa手前から「チキン」「チリコン」「チョコバナナ」。黄色い飲み物はボリビアでポピュラーな「インカコーラ」

ボリビア育ちのオーナーが日本初の「サルテーニャ」専門店をオープン

ボリビア大使館もお墨付きの「サルテトック」

編集:
Genya Aoki
寄稿:
Mie Yoneya
広告

清澄白河から徒歩5分。2023年7月に、南米ボリビアのB級グルメ「サルテーニャ」のファーストフード店「サルテトック(Saltetok)」がオープンした。日本では聞き馴染みのないサルテーニャだが、ボリビアではファストフード店でも、レストランでも提供されるポピュラーな料理。「いつか、サルテーニャを食べながら歩く人で原宿をいっぱいにしたい」と夢を語るのは、オーナーの塔野美保子だ。

東京で活躍する外国人にインタビューをしていくシリーズ「International Tokyo」の特別編。今回は、ボリビア育ちの日本人女性が、清澄白河にサルテーニャ専門店を開くまでを聞いた。

関連記事
東京、ラテン系レストラン10選

私の故郷の味を日本人にも食べてほしい
オーナーの塔野(Photo: Keisuke Tanigawa)

私の故郷の味を日本人にも食べてほしい

塔野は、戦後にボリビアに渡った伯父を頼って、日本から家族で移住。その後、一家はボリビアのラパスという街で電化製品や金物を扱う店を経営し、成功を収めた。

塔野が19歳で帰国した時、日本はバブルの絶頂期。次々に建設されるゴルフ場ではブラジルやアルゼンチン、ペルー、ボリビアなどたくさんの南米人がキャディーとして働いていた。塔野自身もキャディーとして働くつもりが、日本語が話せることを見込まれ、通訳として採用された。

当初、契約期間の2年で貯金がたまったら、ボリビアに戻るつもりだったが、迷った末、日本での生活を選んだ。「日本人は正直で礼儀正しいし、街もきれいで安全で暮らしやすいです。ボリビア以外の国も訪れましたが、やっぱり日本が最高」と語る。

その後、結婚、出産、離婚を経験。一人娘を育てながら働き、いつか自分にとっての故郷の味であるサルテーニャを日本人に食べてほしいという夢に向かって資金をため、この度、念願の開店に至った。

ボリビア人が愛してやまない「サルテーニャ」
Photo: Keisuke Tanigawa

ボリビア人が愛してやまない「サルテーニャ」

塔野がどうしても日本人に食べてほしいというボリビアの名物料理、サルテーニャとはどんな料理なのだろう。

ボリビアでは、サルテーニャは多くの家庭で毎日、朝食に食べるという。「サルテーニャの日」が制定されているほど、国民に愛されている料理だ。家庭だけでなくあちこちに専門店があるので、ボリビアの人たちは、いろいろな味のサルテーニャを楽しんでいる。

「サルテーニャは、パイ生地で肉やタマネギ、ジャガイモ、パセリ、グリーンピース、オリーブ、ゆで卵などの具をスープと一緒に包んだ料理です。一番の特徴はスープ。ゼリー状に固めておくことで、焼いた時の熱で溶け出してスープになるんです」

おいしいスープをこぼさないで食べるには、ちょっとしたコツが必要だと言う。ボリビアには、サルテーニャを食べる時にスープをこぼす人は、キスが下手だというジョークがあるほどだ。

広告
具材はオリジナルの「ポーク」や「チリコン」も
ボリビアでは見かけないサルテーニャの具「ポーク」(Photo: Keisuke Tanigawa)

具材はオリジナルの「ポーク」や「チリコン」も

ボリビアでは、サルテーニャの具はビーフとチキンが一般的だが、サルテトックでは、オリジナルの「ポーク」とスパイシーな「チリコン」、デザートにもなる「チョコバナナ」味も提供している。

生地は餃子に似た形で甘めの味付けで、思っていた以上に厚く、中にスープが入っているにもかかわらずパリッとした食感が残る。スープが溶け出さないために必要な厚さなのだとか。

シンプルに肉を味わいたいならチキンがおすすめだ。テーブル上のチリペッパーをかけると、また違った味わいが楽しめる。ポークのスープは赤みがあるがそれほど辛さはなく、豚のうま味がしっかり染み出していた。

変わり種派なら「チリコン」がいいだろう。チーズとチリソース、ジャガイモの代わりに豆が入っている。甘い生地とスパイシーなチリの組み合わせが絶妙だ。

ボリビアのポピュラードリンク「モコチンチ」
干しモモの味をつぶして混ぜて飲む「モコチンチ」(Photo: Keisuke Tanigawa)

ボリビアのポピュラードリンク「モコチンチ」

もう一つおすすめなのが、ボリビアでポピュラーな飲み物である「モコチンチ」と「インカコーラ」。

モコチンチは、したモモと砂糖をカラメル状にしたもの、シナモンなどの香辛料、水を加えて煮出した飲み物のこと。グラスの底に沈んだモモをほぐしながら飲んでほしい。

ペルー発祥のインカコーラは、黄色いのが特徴的。同じ南米であるボリビアでもコーラといえばインカコーラなのだそう。

このほか、サルテトックのメニューには、オーナーがボリビアに住んでいた頃に食べた「チキントマト煮込み」や「ハチノストマト煮込み」「ピーナツスープ」なども並ぶ。

広告
Photo: Keisuke Tanigawa

店を訪れるのは、SNSで本場のサルテーニャが食べられると知った日本在住のボリビア人が多いという。遠方からわざわざ訪れる人も少なくないそうで、取材中にもイートインで食事をするボリビア人家族がオーナーと言葉を交わしていた。

また、サルテトックの常客の一つはボリビア大使館である。パーティーなどのイベント時には、何百というサルテーニャの注文が入るそうだ。10月にはすでに500個というオーダーが入っている。サルテトックのサルテーニャの味は、大使館お墨付きということなのだろう。

日本でもポピュラーなファストフードに
Photo: Keisuke Tanigawa

日本でもポピュラーなファストフードに

塔野は、サルテトックのチェーン展開も視野に入れている。清澄白河店では、煮込み料理など、サルテーニャ以外の料理も提供しているが、今後は「サルテーニャ一本に絞った間口の小さな店を全国に展開していきたい」と話す。

「まずは秋葉原、それから原宿。サルテーニャを食べながら、みんなが歩行者天国を歩いている姿を想像しています。自分が生まれた日本の人々に、自分が食べていたボリビア料理を食べてほしい。その理由は日本が大好きだから。サルテーニャを通じて、日本とボリビアをつなげる。それが私の夢です」

  • レストラン
  • 南アメリカ料理
  • 清澄

※2023年7月2日オープン

ボリビアの朝食には欠かせない「サルテーニャ」の専門店が、清澄白河にオープン。「サルテーニャ」はエンパナーダの一種で、小麦粉で作った生地で牛肉や鶏肉を細切れにしたものなどの具材をくるみ、オーブンで焼いたものだ。

外はカリッとした食感、中は肉類のほかにゆで卵、オリーブ、スパイス、野菜などが入ったスープ状になっていて、うまみがたっぷり閉じ込められている。種類は「チキンサルテ」「ビーフサルテ」「ポークサルテ」「カレーサルテ」「チリコンサルテ」(いずれも580円、以下全て税込み)、「アップルカスタードサルテ」「チョコバナナサルテ」(ともに350円)の7種類を用意する。

ほかにも、ボリビア出身のオーナーが作る家庭料理やセットメニューも楽しめる。ドリンクはモモを煮込んで、カラメル状にした白砂糖やクローブ、シナモンを入れて冷やした「モコチンチ」がおすすめ。さっぱりとした味わいで暑い日にピッタリだ。日本ではまだまだ珍しいボリビアのスナックを、この機会に試してみては。

おすすめ
    関連情報
    関連情報
    広告