リオコーヒーショップ
Photo: Aya Ueno マティアス・カモッツィ

門前仲町のアルゼンチンカフェで郷土菓子を満喫、世界を飛び回るオーナーの思いとは

ラーメン屋、クラフトビール店なども手がけるカリスマ経営者へインタビュー

テキスト:: Aya Ueno
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門前仲町から徒歩3分。情緒ある街の一角に、アルゼンチンの郷土菓子である「メディアルナ」とコーヒーが楽しめる「リオコーヒーショップ(LIO coffee shop)」が2024年2月にオープンした。すっかり街中に馴染んだ同店は、老若男女、ローカルから観光客まで幅広い客が足を運ぶ。

東京で活躍する外国人オーナーにフォーカスを当てた企画『International Tokyo』。第11回となる本記事では、そんなリオコーヒーショップのオーナーことマティアス・カモッツィに、同店オープンに至るまで、そしてアルゼンチンのコーヒー文化について語ってもらった。

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ワシントン、ブエノスアイリス、東京の3拠点生活

マティアスは、同店のほかにもブエノスアイレスでラーメン屋、コロンビアでカフェバー、メキシコシティーで台湾パオとクラフトビールの店をオープンさせたカリスマ経営者である。現在は、妻の出身地であるアメリカ・ワシントンと、故郷のブエノスアイレスを拠点に、ここ東京と3都市を2週間ごとに行き来しているそうだ。

そんな彼が日本を初めて訪れたのは、2008年。旅先で日本食にとりこになった彼が、特に衝撃的だったというのがラーメンの味だ。日本で食べた本場のラーメンのあまりのおいしさに、「このラーメンをアルゼンチンに持っていきたい」という夢ができたという。

帰国後も、度々日本に足を運び、1日に6、7店舗を回って研究を重ねたそう。同時期にワシントンに住む日本人シェフのNaoya Nakamuraから修行を受け、2013年にはブエノスアイレス初となるラーメン屋をオープンした。当時はラーメン屋など1店舗もなかったブエノスアイレスでの出店はチャレンジングな試みだったが、オープンしてまもなく、20時から24時のみという短い営業時間にもかかわらず、週末は1日に200人もの客が訪れる人気店となった。

アメリカのように日系の製麺会社もないので、Naoya Nakamuraに教わった製麺を自分たちの手で行っているという。

その後も、アメリカ、メキシコと異国で見つけた「美味」をテーマとしたカフェやレストランをオープン。「旅行とグルメ、そして学ぶこと。僕がずっと追い求めていたいことです。それらを無我夢中でやっていたら、今の働き方になっていました」。そう話すマティアスが、故郷の味を日本に広めたいと、今年新たに手がけたのが、アルゼンチンを代表する郷土菓子、メディアルナが楽しめるリオコーヒーだ。

マティアスが日本にアルゼンチンのカフェを開きたいと思うようになったのは2020年のこと。ブエノスアイレスにもラーメン屋が増え始め、「日本といえば寿司」とあまり日本食に馴染みのなかったアルゼンチン人にラーメンのおいしさを布教できたように、今度はアルゼンチンの食文化に馴染みがないであろう日本人にその魅力を伝えたいという思いが芽生えたのだと語る。

しかし日本語が話せない外国人のマティアスが日本で店を開くのは、そう簡単なことではなかった。まず、日本に店を開くには、日本国籍の名義が必要だ。外国籍のマティアスは、アルゼンチンで出会った親しい日本人の友人に相談し、全てを託して彼女名義で店舗をオープン。その後、日本でビジネスする外国人用のビザを取得し、名義を変更して正式にオーナーとなった。

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若者の注目を集める街、門前仲町

出店場所は広尾、世田谷、蔵前を中心に探していた時、別の日本人の友人が「最近若者に人気で旬な場所がある」と門前仲町を勧められたことがきっかけだったという。

「視察に来てみると、温かくて心地よい風情がしっくり来ました。それに、この辺りはカフェがあまり多くなく、ほかのエリアと比べて外国人観光客が少なかった。インバウンドの人にももちろん来てほしいけれど、このお店を通してアルゼンチンの食文化を日本人に知ってほしいという思いが背景にあったので、この店にぴったりだと思ったんです」

奥にカウンターを設置した細長い店内は、ガラス張りで日当たりがよく、小さいながら開放感がある。木の温もりが感じられる席は、コーヒータイムのひとときを過ごすにはもってこいだ。

床の張り替えから看板作り、カウンターやトイレの設置までマティアスが手がけたそう。「最近はネットを調べれば何でもやり方を教えてくれるし、できる限り自分の手でやるのが好きなんです。トイレの設置まで自分でしたと言うと、よく驚かれます。ラーメン屋をオープンした時にやったことがあったんですよ」と彼は語る。

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アルゼンチンの郷土菓子、メディアルナ

第二次世界大戦後、スペインやイタリアから多くの人が移り住み、それぞれの食文化から徐々にアルゼンチン独自の郷土料理として確立していったというメディアルナ。見た目はクロワッサンと似ているが、カリッとした外側に対して内側は食パンのように柔らかく、優しい甘さがあるのが大きな違いだ。

「週末、親戚で集まる時はベーカリーに寄って、メディアルナを土産に持って行くのがお決まり。メディアルナは大まかに2種類あって、一番定番なのがバターたっぷりのメディアルナマンテカで、細長くてしょっぱいのはメディアルナデグラッサ。僕は甘い方が好きなので、リオコーヒーショップではメディアルナマンテカを提供しています」

レシピを監修したのは、アルゼンチン人のシェフ、ファンパブロ。彼はスイスに住んでおり、オープン前に来日し、日本人シェフとマティアスにそのレシピを伝授した。

「メディアルナは出来上がるまでの工程が多く、温度管理が重要なので作るのはなかなか難しいんです。この間も、最初に彼が日本にやってきた時と比べて気温が上がり、その時の方法では生地に緩さが出てしまった。時差があるからすぐ聞けないのがもどかしいですね」

そう笑って見せてくれたマティアスの携帯電話には、世界各国の時計が入っている。時差があり、常に時間に気を使わなければならないのは、国をまたいでビジネスをする彼ならではの課題だろう。

コーヒー文化の違いを楽しむ

「アルゼンチンでは、エスプレッソが主流。特に甘いメディアルナにはドッピオ、いわゆるダブルエスプレッソを合わせるのが定番です」と言うマティアス。アルゼンチンのコーヒー文化はイタリアから大きく影響を受けているため、アメリカのコーヒー文化がベースとなった日本ではあまり聞き馴染みのないドリンクメニューが楽しめるのも、同店の魅力だ。

例えば、エスプレッソは、日本でよく飲まれる「アメリカンマキアート」に加え、「イタリアンマキアート」というメニューもある。これは、ほんの少しのミルクフォームを加えたエスプレッソに、レモンピールを添えて味わうもの。そもそもミルクをたっぷり入れる習慣はなく、ミルクの配分が一番多いのは、同店でも取り扱う「コルダード」。これはコーヒーとミルクが同量入っており、一番まろやかなドリンクといわれている。

また、アイスコーヒーを飲まないことも大きな違いだ。「オープン初日の2月1日、最初のお客さんにアイスコーヒーを尋ねられて、こんなに寒いのにとびっくりしました。氷製造機すらないのでどうしようかと、その晩隣の居酒屋で飲みながら相談したところ、店主がアイスキューブをくれると言ってくれて。その日から、毎朝彼らからアイスキューブをいただいて、アイスコーヒーを作っています。僕らはコールドブリューで彼らにお返しする。門前仲町の人たちのこのような助け合いの文化も、この街が好きな理由の一つなんです」

 

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日本にあるものは何でも最高品質

今後はメディアルナを筆頭にペイストリーを増やして、ゆくゆくは日本全国に店を展開し、さらにアルゼンチンの文化を浸透させたいと話すマティアス。しかしそこには、「ベストなタイミングで出す」というモットーが軸にあるという。

「いつも期待以上の物を作り出す人のことを英語で、Overachiverというのですが、これは日本の文化を示す言葉だと感じています。例えば、ピザはイタリアのものだけど、僕が一番好きなピザ屋は日本にある。それくらい、日本にあるものは何でも最高品質だな、というのが僕の印象です。

異国の食文化を布教する上で、時間がかかってもそのクオリティーを確かなものにしてから提供する、というのは最も大切にしていることですね」

日本語があまり流暢(りゅうちょう)ではないマティアスが異国で立ち上げた日本のラーメン屋をはじめ、このリオコーヒーショップにおいてたくさんの日本人の協力が垣間見られるのは、本物を追求する彼の直向きな向上心や、リスペクトがあるがゆえであろう。世界を股にかけて食文化を交差させるマティアスの活躍に、今後も目が離せない。

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