あと1000日でできること SLOW LABELディレクター 栗栖良依インタビュー

障がい者と健常者がお互いに尊重し、支え合う「寛容な社会」へ
栗栖良依
作成者: Time Out Tokyo Editors |
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in collaboration with 日経マガジンFUTURECITY

これまでオリンピック・パラリンピックの開催都市は、大会前後でその姿を一変させてきた。2020年の東京大会まで、残すところあと1000日となった今、多様な人々が世界中から訪れるその日のために、東京はどのように変わっていくべきなのか。また、どのようにその魅力をアピールするべきなのか。「東京をもっとひらくためにできること」について、NPO法人SLOW LABEL(スローレーベル)ディレクターの栗栖良依に聞いた。

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障がい者と健常者がお互いに尊重し、支え合う「寛容な社会」へ

−栗栖さんはこれまで、アーティストと福祉施設の協働によるものづくりや市民参加型アートイベントなどを通じ、多様な人々が共に活躍する場を多数提供してきました。そんな栗栖さんから見て、1000日後に大会開催を控えた東京には、どのような課題があると感じますか。

東京は、良くも悪くも「マジョリティに最適化された都市」だと思うんです。東京のサービスレベルは総じて高く、物事が完璧主義で進んでいく。私自身、右脚に障がいを抱える前は「東京ほど快適な都市はない」と感じていました。でもその快適さは、不自由を抱える人々の暮らしにくさと表裏一体でもあるんです。完璧を求めるがゆえの他者への厳しさが、弱い立場の人たちにも向けられてしまう。この不寛容な空気を、大会開催までに何とか改善したいと思っています。

−たしかに東京は海外の都市に比べ、心理面でのバリアフリーがまだまだ進んでいないという声も聞かれます。

例えば留学していたミラノや、昨年の大会開催地のリオデジャネイロで感じたのは、「できないことは悪いことではない」という寛容さです。人も街も完璧じゃないから、助け合うのが当たり前。健常者でも障がい者でも関係なく支え合う。人はそれぞれ多様な個性や異なる能力を持つものだ、という価値観が根付いているからです。だからこそ彼らはアイコンタクトで他人の状況を察し、手を差し伸べることができるんだと思います。

−改善点がある一方で、東京がもっと世界にアピールすべき魅力や強みはあるのでしょうか。

本来、日本人は想像力豊かで相手を思いやることに長けた人々ですし、それは日本や東京の強みでもあると思います。だからこそ2020年の東京大会までに、その想像力を異なる背景を持つ外国人や障がいを持つ人などにも広げてほしいですね。

−具体的にはどのような想像力を持つべきでしょうか。

例えば、東京は食の都として知られる一方で、菜食主義者やイスラム教徒が安心して食事できる場は限られています。でもそれぞれの飲食店がほんの少し想像力を働かせて、彼らに対応したメニューを用意すれば、簡単に解決できますよね。混雑した電車内のベビーカーに対しても、子連れで外出する母親の大変さに思いを馳せれば、冷たい視線を送らずに済む。街の段差をなくすだけでは街は変わらない。一人一人の意識の変化こそが街を変える力になるんです。

−オリンピック・パラリンピックを経た東京は、どのような街になっていると思いますか。

私たちの活動拠点の一つである「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」では、健常者も障がい者も関係なく、それぞれがスポーツやアートなど個々の目標に向かって努力しています。ここで起きていることを、都市というスケールに拡張できたら最高でしょうね。誰もが唯一無二の個性を持つ一人の人間として尊重される街が私の理想です。

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栗栖良依(くりす よしえ)

1977年、東京都生まれ。東京造形大学卒、イタリアのドムスアカデミーでビジネスデザイン修士取得。2010年、骨肉腫を発病し右下肢に障がいを抱える。2011年、「横浜ランデヴープロジェクト」ディレクターに就任し、スローレーベルを設立。2014年にNPO法人化、現在は代表を務める。

日経マガジンFUTURECITY第2号から転載

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