Urban garden on Champs-Élysées
Image: PCR-Stream / Time Out

2022年世界のトレンド:都市を変える新しい緑地

世界中の大都市で緑化計画が進行中

テキスト:
Julia Webster Ayuso
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鉄とコンクリートのジャングルが広がり、緑といえば所々に植木鉢が置かれている程度。都市に対してこのようなイメージを持つ人は多い。しかし、その状況は徐々に変わりつつある。世界中の都市では21世紀のための「リデザイン」が進行中で、できる限り緑を増やそうという動きが見られる。

都市林業、リビングウォール、屋上緑化など、手法はさまざまだが、各都市は自然を身近なものにするため、常に創意工夫を凝らしている。都市を緑化することは、気候変動への対策の鍵であり、人口が増加する都市をより住みやすい場所にするための手段となるためだ。

都市における「森」の創出

おそらく、最も野心的な緑化の形は「都市の森」であろう。字面だけ見ると矛盾しているようにも思えるが、このコンセプトは急速に普及しつつある。例えばカナダのモントリオール市は、主要な通りを数百本の木といくつかの池を備えた森林のある広場にする計画を発表した。

またパリでは、市長がパリ市庁舎などの主要ランドマークの隣に「都市の森」の創出を計画。また、シャンゼリゼ通りでは360本の新しい木を植えて「特別な庭園」を復活させ、パリっ子を呼び戻すことを目指している。都市緑化を担当する副市長は、こうした計画について「コンスタントに熱波が来るなど、地球温暖化の影響に直面している都市で、重要な都市冷却の機能を提供できる密集植栽地を作るという発想です」と説明する。

Bosco Verticale.
Photograph: Libero_Monterisi / Shutterstock.com

都市に最適な「垂直の森」

しかし、密集した都市部で樹木を植えるスペースを確保するのは容易ではない。そこで、イタリアの建築家ステファノ・ボエリがミラノのために考えたのが「垂直の森(Bosco Verticale)」。この画期的な計画は、2つの居住区に1ヘクタールの森林に匹敵する800本の低木を植えるというもの。ミラノではまた、2030年までに300万本(市民1人につき1本)の植樹を目指す「フォレスタミ(Forestami )」という先駆的なプロジェクトも進行中だ。

ボエリがデザインする「緑の建物」の需要はうなぎ登り。現在、国連やロンドンのキュー王立植物園と協力して、30カ国で90の都市林を育てており、オランダのユトレヒトでも、360本の木と9640本の低木や花で覆われた高さ300フィート(約92メートル)のタワーが完成する予定だ。一方、中国では広西チワン族自治区である柳州に「森林都市」を建設し、深刻な公害問題を解決しようというSF映画並みのプロジェクトが進行している。

既存インフラの活用

「垂直の森」は、人口密集地ではかなり賢いソリューションだが、公園のように住民が利用することはできない。そこで、既存インフラを改良することで、緑の公共空間を創出する機会を見いだした都市がある。こうした都市は、景観建築の象徴であるニューヨークのハイライン(2009年に完成)にヒントを得て、古い鉄道線路を活用し、長い高架公園を造ろうとしている。 

例えばロンドンでは、カムデンとキングスクロス間の鉄道高架橋に全長1キロの緑の歩道を造る計画がある。イタリアのトリノでは、トラムの線路を再利用した長さ700メートルのプレコリニアパークが2020年6月にオープンし、いぎわいの創出に成功した。 

利用されるのは古い鉄道跡だけではない。自動車を抑制して、空いた道路も緑化しようという例もある。

マドリードでは最近、車が通るバリェカス橋を、130ヘクタールの広さの公園にする計画が承認された。これにより、毎日17万台もの自動車が行き交う場所から、住民が緑地やスポーツ施設を利用したり、公共交通へアクセスするための場所となる。

線型の「リニアパーク」は、空気の質を改善するための緑の回廊として機能することもある。ソウルでは「風の道」と呼ばれる森をいくつも造ることで、クリーンで冷たい空気を中心部に送り込み、公害に対処している。

A parklet in Hammersmith, London
Photograph: Meristem Design

「パークレット」の可能性

このようなプロジェクトからは未来の都市を感じるかもしれないが、全てが最先端のインフラプロジェクトである必要はない。それぞれの地域のニーズに合っているものであれば、小規模の変革でも、人と自然との関係を再定義する力があるといえる。

その好例は「パークレット」だろう。これは、駐車場の空きスペースをテラスや小さな庭に変え、芝生やベンチ、遊具などを置いて歩行者が楽しめるようにした空間のこと。パークレットは、社会的結束を高めるコミュニティースペースであるだけでない。交通量を減少させ、生物多様性を高めることに寄与し、都市における気候変動対策を助けることもできるのだ。

ロンドンでは、パークレットキャンペーンにより、こうした「ミニレジャー空間」が広まった。主催者は市長に対し、住民が自分の道路にパークレットを作ることを申請できるようにするよう求めており、将来的には市内の全ての道路にパークレットを設置したいと考えているという。一方、シドニーとメルボルンでは、行政が駐車場をにぎやかな屋外飲食スペースに変えることについて許可を出す動きも見られる。

いくつかの都市の市長たちは、パンデミック後に「これまでのように」戻ることはできないと警告しており、都市環境に自然を取り入れるための革新的な方法を見つけることが重要であるとしている。もし現在考えられている計画の全てがうまく進めば、都市での生活は今後、より環境に優しく、より快適なものになっていくだろう。

原文はこちら

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