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墨田区の魅力を60層にレイヤー化した「メタ観光マップ」がついに完成

『観光会議「メタ観光マップで考えるこれからのすみだ」』レポート

編集:
Genya Aoki
寄稿::
Tomomi Nakamura
メタ観光会議
Photo: Genya Aoki
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2021年12月4日、『観光会議「メタ観光マップで考えるこれからのすみだ」』がすみだ産業会館とオンラインで開催された。『メタ観光』とは昨今注目を集めている、新しい観光の在り方としてのスタイル。地域の文化資源の価値を歴史的意義だけでなく、アニメーションの聖地や「インスタ映え」などさまざまな角度で捉え、それを複数のレイヤーとしてオンライン上の地図『メタ観光マップ』に落とし込み、楽しむ観光のことだ。

「メタ観光マップ」イメージ
「メタ観光マップ」イメージ(Photo: Genya Aoki)

同イベントは、「メタ観光」を活用して墨田区で観光の未来を探る『すみだメタ観光祭』の集大成である。『すみだメタ観光祭』は、メタ観光推進機構が主催を務め、墨田区、墨田区観光協会、アートプロジェクト『隅田川 森羅万象 墨に夢』と連携して9月から有志の地域住民や各種専門家、アーティストを交えて、『メタ観光マップ』の作成に取り組んできた。

観光会議では、同日にリリースされた『メタ観光マップ』の制作内容を報告するとともに、マップを活用した今後の墨田区の観光についてパネルディスカッションを展開した。

メタ観光祭
牧野友衛(Photo: Genya Aoki)

プログラムはメタ観光推進機構代表理事の牧野友衛(まきの・ともえ)と『隅田川 森羅万象 墨に夢』統括ディレクターである荻原康子が代表あいさつを行い、その後、メタ観光推進機構理事である真鍋陸太郎がメタ観光マップの楽しみ方について解説。マップには地域を紹介しているウェブサイトやテレビ番組のアーカイブなどの既存情報や加え、アーティストや各種専門家によるワークショップで発見された新たな観光資源が追加掲載されている。

「メタ観光マップ」イメージ
「メタ観光マップ」イメージ(Photo: Genya Aoki)

「メタ観光」ではマップ上に並ぶ情報を「タグ」と呼び、その数はおよそ1700にも及ぶ。このタグは60ものレイヤーに分かれ、さらに食事、観光、文化、アートなどのようにカテゴリー分けすると、色分けされたアイコンで表示される。

「レイヤー」のイメージ
「レイヤー」のイメージ(Photo: Genya Aoki)

1つのスポットを選択すると、同じ場所に多層レイヤーのタグが表示される。例えば三囲神社を見てみると、葛飾北斎ゆかりの地であると同時に、珍しい狛犬(こまいぬ)がいるスポットであったり、落語の舞台でもあることを認識できたりと、単一の場所をさまざまな視点から見つめることができる点が魅力だ。

「メタ観光マップ」のイメージ
「メタ観光マップ」のイメージ(Photo: Genya Aoki)
「メタ観光マップ」のイメージ
「隅田川」だけで検索してみると、川の流れに沿ってさまざまなレイヤーが重なり合っていることが分かる(写真:すみだメタ観光マップ)

またタグをクリックすると、説明する写真やテキストが表示される。さらに、参照サイトの確認や各種SNSへの共有もできる。現在地も分かるようになっているので、街歩き中でも活用可能だ。膨大な情報量がインプットされており、気付くとスマートフォンばかり観てしまうので、「ながら歩き」になってしまわないように注意してほしい。

シビックプライドにつながる物語 

すみだメタ観光会議
Photo: Genya Aoki

マップの解説後は、キュレーターの橋本麻里と東京スリバチ学会会長を務める皆川典久が登壇、『すみだメタ観光祭』で10月に写真のワークショップ『写真で紡ぐ街の物語ワークショップ in すみだ』のモデレーターとなった森隆大朗をゲストに迎えた。 

すみだメタ観光会議
Photo: Genya Aoki

同ワークショップは、森が主催する『今治今昔写真』から着想を得た。高齢者に昔の写真を持ち寄ってもらい、その写真と同じ場所、構図で若者に写真を撮影してもらうことで世代を超えた交流が生まれるというものだ。墨田区の住民に個々の思い出が詰まった場所を共有して物語を書き起こすことで、地域価値を語り合えるコミュニティーが形成されるだけでなく、市民一人一人の地域に対する誇り、シビックプライドも高まるという。もちろん同ワークショップで撮影された写真と物語も、マップに掲載されている。

専門的な目線で発掘された街の魅力

すみだメタ観光会議
暗渠マニアックスが暗渠の楽しみ方をレクチャー(Photo: Genya Aoki)

次に電線愛好家の石山蓮華(いしやま・れんげ)ドンツキ協会会長の斎藤佳(さいとう・けい)、2人組の暗渠(あんきょ)専門家である暗渠マニアックスの3組の専門家が登壇。10月に行われた、墨田区の魅力を専門家による独特な視点で発掘する『メタ観光スタディーズ』で講師を務めた面々がワークショップを振り返りながら、おすすめの作品などを紹介した。

メタ観光会議
斎藤が「ドンツキ遺産」というものがあれば認定したいと推奨するドンツキ、歴史的価値の高い民家と珍しい電線などいくつもの見所があるスポット(Photo: Genya Aoki)

どこにでもある電線やドンツキ、見落としてしまいそうになる暗渠も、自分から能動的に関わり、視点を変えて撮影することで十分楽しめるコンテンツになるという話題で場内が盛り上がった。

アートが生み出す新たな価値

本城直季
『Sumida Riverside』(Photo: Genya Aoki)

後半は、アーティストによる「地域の新たな魅力の発掘」をテーマに、墨田区にまつわる作品を制作した4人の作家が登場。「見立て」をテーマに活動する鈴木康広や、丸シールで夜景を表現する大村雪乃、都市風景をジオラマのように撮影する本城直季、「懐かしく、切ないと感じるポートレート」を撮影し続ける架空荘(かくうそう)が、作品について各々の言葉で語った。

4人の作品は12日(日)まで、『すみだ新景』と題してすみだ北斎美術館で展示している。

「メタ観光マップ」
自身の作品を説明する架空荘(Photo: Genya Aoki)

大村は、「両国大橋」と呼ばれる高速道路のジャンクションの夜景を丸シールで表現した『Ryogoku highway』 を出展。橋をくぐる色とりどりの屋形船が放つ光彩が、橋の円柱や水面に反射して独創的な色合いを生み出すグラデーションを、シールの質感なども使い表現している。ぜひ現物を観てほしい作品だ。

「メタ観光マップ」
『Ryogoku highway』(Photo: Genya Aoki)

鈴木が10月にフィールドワークを通して参加者と共に作り上げた『すみだ見立て観光地図』は、まさに日常の中に潜むアートだ。何かに見立てて再解釈された風景写真ほか23作品は、いずれもユニークなものばかり。『プロトリケラトプスは生きていた』『ガラスのパズル』など観れば思わずうなずける作品から、説明を読んでハッとする作品まで幅広い。『メタ観光マップ』では90以上の作品が紹介されているので、街歩きの際はぜひ参考にして、自分だけの見立てを発見してみてほしい。

メタ観光祭
『プロトリケラトプスは生きていた』(Photo: Genya Aoki)

第2部では、墨田区産業観光部部長の鹿嶋田和宏と墨田区観光協会理事長の森山育子を招いてパネルディスカッションを実施。墨田区は相撲、伝統工芸、町工場、向島文学、墨田川など、観光素材となるコンテンツは十分あるが、スカイツリーの一点集中から抜け切れていないという課題について語った。今後はメタマップのレイヤーを随時追加し、レイヤーごとの街歩きツアーの生成、レイヤーを活用した宝探しゲームなどのイベント開催も企画している。

「メタマップを活用することで多くの観光資源ができ、まさにスカイツリーのような一極集中地から人が分散し、街全体に人が回遊する良い流れが生まれていくのでは」と、牧野。12日には、皆川がツアーガイドを務める『すみだメタ観光祭 メタ観光公式ガイドツアー』が予定されている。変わっていく墨田の観光の在り方に、これからも目が離せない。

『すみだメタ観光祭』の詳細はこちら

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