アメリカの砂漠に新しい都市を建設する計画が浮上

ビャルケ・インゲルスが設計、大規模開発に冷ややかな声も

Ed Cunningham
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Ed Cunningham
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この画像は砂漠の蜃気楼(しんきろう)でもなければ、イーロン・マスクによる最新の火星植民地化計画の想像図でもない。これは億万長者の投資家であるマーク・ロリーと、著名建築家のビャルケ・インゲルス率いる建築事務所、BIG(Bjarke Ingels Group)が組んで進めている最新プロジェクトのデザインイメージだ。

この野心的な計画は、アメリカ西部の砂漠にトロサ(Telosa)という都市をゼロから建設するというもの。今後40年間で、15万エーカー(約600平方キロメートル)の超広大な敷地に、あらゆる機能がそろった500万人を擁する都市を建設することを目指している。

トロサの広報担当者によると、このプロジェクトは「都市生活の世界標準となり、人間の可能性を広げ、将来の世代のための青写真となるような新しい都市をアメリカに作ること」をビジョンとしているという。

もう一度、上のデザインイメージに目を戻してみよう。斬新な建築物や、未来的な公共交通機関、緑や自然に満ちた空間が見える。好みによって、まばゆいほど素晴らしいユートピアと思う人もいれば、平静を保てなさそうなディストピアと感じる人もいるかもしれない。

Design for the city of Telosa
Photograph: BIG and Bucharest Studio

このプロジェクトでは、非常に「こなれた」マーケティングがされていて、プロモーション全体に「持続可能」「平等」「人間の可能性」といったバズワードがちりばめられている。しかし、そうしたことをそのまま受け取った人ばかりではなかったようだ。

建築やデザイン情報を提供するウェブサイトであるDezeenに掲載されたトロサについての記事には、多くの人から「虚栄心の塊のようなプロジェクト」「環境に配慮した風のラスベガスのよう」「自己中心的な億万長者のおもちゃ」と否定的なコメントが寄せられた。

トロサは「世界で最も持続可能な都市」になるというロリーの主張にもかかわらず、人々はラスベガスがすでに深刻な水不足という悲惨な状況に直面している中で、新たな砂漠の都市を建設する意味があるのかと疑問を投げかけたのだ。確かに、エネルギーや水の使用量は莫大(ばくだい)なものになるだろうし、そもそもトロサの広さはラスベガスの約10倍もある。 

Design for the city of Telosa
Photograph: BIG and Bucharest Studio

果たしてトロサは、人類の未来のための超持続可能な青写真となるのか、それとも多大な費用がかかるグリーンウォッシュの失敗作となってしまうのか。しばらく様子を見なければならないだろう。

トロサの公式ウェブサイトにはたくさんの情報が掲載されている。本当に興味が湧いた場合は、家の片付けを始めた方がいいかもしれない。プロジェクトが順調に進んだ場合、2030年には最初の住人の入居が始まる可能性があるそうだ。

原文はこちら

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