さくらももこ展
Photo: Runa Akahoshi

全世代に愛されるさくらワールドに迫る、「さくらももこ展」が横浜で開催

「そごう美術館」で約300点のカラー原画や直筆原稿を一堂に展示

編集:
Genya Aoki
テキスト:
Runa Akahoshi
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漫画家、エッセイスト、作詞家であり、脚本家のさくらももこに迫る「さくらももこ展」が2023年4月22日(土)〜5月28日(日)に開催する。場所は、横浜の「そごう美術館」で、約300点のカラー原画や直筆原稿を一堂に展示。「描く」ことと「書く」ことを楽しみ尽くし、季節の移ろいや小さな日常をこよなく愛したさくらの世界が堪能できる。

さくらももこ展
Photo: Runa Akahoshi

この記事では、序章〜最終章の7つエリアで展開される同展の見どころを紹介していく。

序章 さくらももこができるまで

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このエリアでは、少女時代から漫画家デビューまでの道のりを、当時の持ち物や情景を描いたイラストをもとに辿ることができる。最初に出迎えるのは、1996年に作られた「作者紹介」の垂れ幕だ。「すきなこと」「にがて」のほかに、「金魚すくいは?」や「ねこ」「藤木は」など、ユーモアたっぷりな項目が盛りだくさん。

さくらももこ展
Photo: Runa Akahoshi

1965年5月8日の出生から、1984年7月13日にデビューが決定し、作家「さくらももこ」が誕生するまでの表は興味深い。静岡県清水市(現在の清水区)の小さな八百屋に生まれたさくら。初めて絵を描いたのは自宅のふすまだという。エッセイ「おんぶにだっこ」では、「お父さんやお母さんやお姉ちゃんの絵を描いた。家族の絵を描いてあげれば喜ぶだろうと思ったのだ」と後述している。

そのほか、馴染みの「たまちゃんとの出会い」や「まんが家になりたい」など、見逃せないエピソードが語られている。

第1章 ももことちびまる子ちゃん

さくらももこ展
Photo: Runa Akahoshi

代表作「ちびまる子ちゃん」は、自身をモデルにした主人公「まる子」が、家族やクラスメートなどの愉快な仲間と過ごす昭和の日常が描かれた国民的マンガだ。同章では、さくらとちびまる子ちゃんの出合いを紹介する。ここで注目してほしいのは、まる子と動物たちが描かれたカラフルな絵。これは、初めてカラーで制作された作品を、バナーにして拡大した展示物だ。

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壁側には、「ちびまる子ちゃん」の原画が展示されている。ほのぼのとしながらも、どこかブラックかつカオスなストーリーから目が離せない。

第2章 ももこのエッセイ

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さくらは、高校3年生の時に書いた作文が「現代の清少納言」と称されたことから、エッセイ漫画を書くことを思い付いたという。そんなさくらが直筆で記した原稿用紙に囲まれた章が「ももこのエッセイ」だ。エッセイを制作する際は、構成を全て頭の中で考えた後に、紙におこすのだそう。展示された用紙を見ると、ほとんど修正箇所がないのが分かる。

さくらももこ展
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展示されている3つのタイトルをつなげて読むと「あのころ」「まる子だった」「ももこの話」となる。すなわち、さくらがまる子のような小学生だった頃の出来事を書いた作品だ。マラソン大会が嫌で仮病を使ったことや、どうしても治らない忘れ物の癖など、「ちびまる子ちゃん」に登場するエピソードも数多く収録されている。

第3章 ももこのまいにち

さくらももこ展
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同章では、日常にフォーカスした展示を行う。さくらは、1994年に男児を出産してから、子どもと過ごす時間を大切にしたいと思うようになり、絵本や絵日記などの創作を始める。

息子からもらった手紙と似顔絵や、身近な人のために作ったバッジなど、さくらが大切にしてきた、日々の生活での小さな幸せが感じられる。

第4章 ももこのナンセンス・ワールド

さくらももこ展
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さくらが「ナンセンス(馬鹿げたこと)」に取り組んだ作品「神のちから」「神のちからっ子新聞」を展開。読む人を混乱させるような怪しい魔力があり、男性ファンも多い。

さくらももこ展
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「神のちからっ子新聞」は、架空の存在である「ボンバー編集部」が発行する新聞記事という設定で、全てがフィクション。なんでもありな内容だ。額は段ボールでできており、曲がっている。まさにナンセンスを体現した展示である。

第5章 ももことコジコジ

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Photo: Runa Akahoshi

1991年に落書きから生まれた正体不明の宇宙の子「コジコジ」。メルヘンなストーリーや絵本を経て、1994年に漫画化された。そんな謎多きコジコジに焦点を当てる。初めて描かれたコジコジは豪華絢爛な額装で、なんともいえぬシュールさを醸し出している。

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Photo: Runa Akahoshi
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奥に進むと、コジコジの住むメルヘンの国が描かれた巨大な作品と、原画が並ぶ。ギャグセンスが高いストーリーで自然と笑顔になるが、赤ちゃんのようなかわいらしい見た目から何気なく発せられる核心をついた言葉に、いく度もハッとさせられる。

最終章 アトリエより

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Photo: Runa Akahoshi

最終章では、さくらももこの自宅にあるアトリエの様子を知ることができる。国内外で買い集めた民芸品のコレクションで飾られたリビングや、仲間と歌って集まるカラオケスナック「ドレミ」など、にぎやかな空間だったことが伝わる。だが、仕事場の写真を見ると、約1畳半ほどのスペースと驚くほど小さい。必要なもの全てに手が届くように作られた空間で、お気に入りのインドネシアのタバコやガラムの缶を再利用したペン立てなど、さくららしさが満載だ。

さくらももこ展
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最後は、「さくらももこの手引き」で締められる。さくらは、仕事とプライベートと分け隔てなく、人を楽しませることが好きだった。その思いは作品に引き継がれ、この先何年も読者に笑顔を届け続けるだろう。同展を訪れて、さくらももこが作り出してきた世界を堪能しよう。

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