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万能&超多作な天才芸術家の足跡をポップに辿る

六本木の「国立新美術館」で2026年9月21日(月・祝)まで開催する「ピカソ meets ポール・スミス 遊び心の冒険へ」に行ってきた。パリの国立ピカソ美術館が所蔵するパブロ・ピカソの作品を、スウィンギンロンドン最後の砦である英国人デザイナー、ポール・スミスがレイアウト監修し展示するというコラボレーション企画である。
いきなり結論から書いてしまうが、これは、良かった。ピカソのヴィヴィッドな色彩とモダンなスタイリッシュさが、ポール・スミスのスウィンギン感覚とマリアージュしているし、空間デザインの発想も大胆でたのしい。ワンブースをひとつの作品だけで丸々使い切るなど、たくみな演出をほどこす本展の姿勢は「映え」ギリギリだと思うが、だからこその間口の広さがある。デートとかにめちゃくちゃ向いてると思う。
絵画に限らず、陶芸も版画も彫刻もコラージュもクラフトワークもなんでもやった、総作品数が15万点以上をほこる万能&超多作の芸術家ピカソの、さまざまな時期からセレクトされた本展は大変な振り幅があり、「ピカソってこんな作品もやってんだ~」的な発見が満載である。万能多作ということはつまり、たえず自分の中にやりたいテーマをもち、それをどんどんひたすら更新し続けたっちゅーことであり、たえまなく移り変わっていった創作精神を、本展ではエッセンシャルに体感することができる。
ピカソってこういうのもあるんだ
没後50周年を記念して2023年に開かれた展示を元にした本展は、自身のピカソのイメージにまったくなかった作品が盛り沢山だった。
たとえば初っ端、「トロンプ・レスプリ(精神を欺く者)」と名付けられたエリアには、なんと自転車のハンドルとサドルが両壁面にズラリと並べられている。そして中央奥の壁面には牛の頭部のような鋳造品が設置してあり、要するに「ここのど真ん中に牛っぽいモノがひとつあっただけで、脇のハンドルとかサドルも全部意味変わってきませんか?」的なことらしい。
さらに次のセクションでは、13歳から自主制作誌を作っていたというほど雑誌好きなピカソが、『VOGUE』の表紙に落書きしてつくった作品がズラリと並ぶ。言ってしまえば歴史の教科書に落書きする中学生とあんまり変わらないのだが、芸術におけるリミックス行為の先駆という見方もできる。これを作品ということにしたセンスがまず新しい。1950年代頃の作品らしいが、早い、早すぎるぜ。
キュビスムってそういう流れなんだ
あとピカソといえば真っ先に思い浮かぶのがキュビスムだけども、そのキュビスムの前後の流れも紹介されていて、体系的に変遷が理解できたのもよかった。古代美術とか非西洋の美術からの影響があってこういう作風になっていったのね的な。ビートルズはインド行ったからサージェントペパー作れたのねみたいな感じで、作風の変遷が腹落ちできると、それだけでピカソという作家が少し身近に感じたりもする。キュビスムっていうと基本的に人物画のイメージがあったけども、風景や建物を平面上に解体する実験画も多く手がけてたとか全然知らなかったっすねえ。
大量生産品とか日用品とか廃物を組み合わせるアッサンブラージュをやっていたというのも知らなかった。『妊婦』って作品とか、要するにめちゃくちゃ抽象化した彫刻ってことなんだと思うけど、こんな立体アプローチもやってらっしゃるんですかって感じだった。
新しい表現を追求し続けるのみではなく、温故知新でときには古典をちゃんと振り返っていたりもする。第一次大戦後などは秩序への回帰をテーマに、背景や色すらない超シンプルなドローイングなども描いている。これが昔のソ連アニメみたいでまたカッコよかった。
カッコいいもユルいも可愛いも
カッコいいといえば、『コリーダ:闘牛士の死』もよかった。闘牛が大好きだったピカソは闘牛をテーマとした銅版画や絵画なども大量に制作しているのだが、この作品はサイケというかシュールというか、かなりインパクトあるネジレ曲がり具合でしびれた。『ジョジョの奇妙な冒険』みたいだと思った。本当にいろんなカッコよさをピカソはやっている。
かと思えば、マネの代表作『草上の昼食』をめちゃくちゃデフォルメして作ったトントン相撲風の厚紙ハンドクラフトその名も『草上の昼食(マネに基づく)』というのもあったりする。ヴィレヴァン系というかゆるキャラ的というか、非常にとぼけた味わいで、「こういう球も投げてくるんですねぇ」って感じだった。またピカソは数千点もの陶器を制作していたりもするのだが、それもなんともかわいらしくてシャレている。普通に欲しい。ムチャクチャ楽しんで作ったような感覚が伝わってくる。ていうかピカソは本当にずっとムチャクチャ楽しみながらいろんなことをやりまくったんだなと思った。
ポール・スミスのポップな批評眼
また手法や作風のみならず、作品中の色や柄に着目したポール・スミスの視点のおもしろさも本展のみどころのひとつであろう。ストライプやボーダーといった図柄からインスピレーションを受けて構成されたフロアは、シンプルにすげえオシャレだし、ポップな批評感覚もある。冒頭でも書いた通り「映え」ギリギリではあるが、マジで写真撮りがいあるツクリになっているとも思うが、従来の学術的批評とは異なる文脈でピカソワールドが味わえるというのもこれまた事実だ。要するに、すこぶるたのしいね。
物販もすんげえよ、ポストカード、バッジ、ブロックメモ、リトグラフ、マグカップ、マグネット、箸置き、クリアファイル、その他諸々思いつく全てがある。ピカソもポール・スミスもオシャレな伊達男であるゆえ、グッズはどれもこれもめっちゃ可愛い。つまりショッピングも楽しめるというワケだ。
過去に開催されたピカソ展の中でも、おそらくもっともデートコース適性が高いであろう展示。オレはすげえ好き。
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