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奥多摩の沿線まるごとホテル「Satologue」のレストランとサウナがオープン

駅と地域を「一つのホテル」に見立てたマイクロツーリズムプロジェクトが開始

編集:
Genya Aoki
テキスト::
Tomomi Nakamura
Satologue
Photo: Keisuke Tanigawa
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2024年5月16日(木)、JR青梅線の鳩ノ巣駅周辺に位置する沿線まるごとホテル「さとローグ(Satologue)」内に、レストランとサウナがオープンする。沿線まるごとホテルは、無人の駅舎とその近隣の集落の地域資源を「一つのホテル」に見立てるプロジェクトだ。JR東日本の駅舎をホテルのフロントとして活用し、周辺集落の空き家を客室としてリノベーション、住民にホテルキャストとなってもらい、地域ににぎわいを生み出すことを目指す。

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Photo: Keisuke Tanigawa「さとローグ」の外観と自家農園やビオトープが広がる庭

建築を設計したのは、瀬戸内海に浮かぶ移動式ホテル「ガンツウ(guntû)」を手がけたことで知られる、堀部安嗣建築設計事務所である。運営するのは、地域活性化を支援する「さとゆめ」と、東日本旅客鉄道(JR東日本)が担う共同出資会社「沿線まるごと」だ。さとローグはプロジェクトの第1弾として始動し、2025年の春には古民家を改修した宿泊棟も増設される。

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Photo: Keisuke Tanigawaレストラン「時帰路」のカウンター席

奥多摩の豊かなストーリーが凝縮したレストラン「時帰路」

2階部分に誕生したレストラン「時帰路(トキロ)」には、「奥多摩の時を語るレストラン」という意味が込められている。同店はかつて民家だったことから、カウンター席はそこに住んでいた人々が床に座った時の高さと同じ位置に設置した。その目線から美しい借景を眺めることができるように設計しているという。

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Photo: Keisuke Tanigawa窓から緑を望む半個室

店内に一歩足を踏み入れると、スギやサワラなどの木々の香りが漂い、大きな窓からは青々とした緑と多摩川を望むことができる。カウンターの両隣にはテーブル席と半個室もあり、各部屋からそれぞれ異なる景色を眺められるのも魅力である。

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Photo: Keisuke Tanigawa「季節のメニュー」コースの一例

奥多摩の土地のストーリーを込めた、フレンチベースの料理にもぜひ注目してみてほしい。シェフを担うのは、フレンチレストラン「アルゴ」やニューヨークスタイルのレストラン「ザバーン」で腕を磨いた駒ヶ嶺侑太と、ビストロ「レ・ピコロ」、「ビストロエル」などでシェフを務めた高波和基だ。

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Photo: Keisuke Tanigawa

料理はアミューズ、前菜、メインをはじめ5品程度が登場する「季節のメニュー」コース(5,500円、以下全て税込み)のみ。多摩川の上流で育ったワサビや新鮮な川魚、庭で収穫した香り高いユズなど、2人のシェフが厳選した多摩川流域の生産者の食材をふんだんに利用しているところが特徴。今後は敷地内の畑で採れた野菜やキノコも積極的にコースに活用していくそう。

ドリンクは、地元のブルワリ―「バテレ(VERTERE)」のビール、「小澤酒造」の酒などもラインアップする。

沿線まるごとホテル
Photo: Keisuke Tanigawaシェフの駒ヶ嶺侑太(左)と高波和基

「食材には傷ついたヤマメや小ぶりな『治助(じすけ)芋』など、普段は市場に出回らない素材も含まれています。これらは生産者の方に話を聞き、本当は利用できるものだと知ったからこそ活用できる食材たちです」(駒ヶ嶺)

「ほかのエリアで料理をしていた頃は、生産者の方と会う機会もなかったのですが、奥多摩では顔を合わせて生産者の皆さんと対話するからこそ、気付けた魅力的な食材があります」(高波)と、2人のシェフは語る。

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Photo: Keisuke Tanigawa

メインは、「東京和牛、黒ニンニク、ワサビ」。シェフたちが実際に足を運んで選び抜いた、あきるの市「竹内牧場」の豊かな味わいの「秋川牛」を熟成させて使用する。黒ニンニクとマデラ酒を合わせた甘みのあるソースを添えることで、肉のうまみをさらに引き出している。

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Photo: Keisuke Tanigawa薪(まき)を生かしたサウナ「風木水」

豊かな緑と空気を全身で楽しめるサウナ「風木水」

日々の疲れを癒やしたい人やリラックスしたい人は、1階のサウナ「風木水(ふうきすい)」へ。平日は2人2万2,000円、土・日曜・祝日は2人2万4,200円で楽しめる(定員4人)。料金にはポンチョやハット、タオル、アメニティなども含まれている点もポイントだ。

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Photo: Keisuke Tanigawa川の水を利用した水風呂と外気浴スペース

倉庫を改装したサウナでは、林業で栄えた地域の素材を生かし、薪(まき)を活用している。サウナを一歩出ると、近隣の川から引き込んだ水を利用した水風呂があり、天然の緑に包まれる外気浴スペースも用意されている。

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Photo: Keisuke Tanigawa2つ目の外気浴スペース

さらに、森林の奥にもう一つある、隠れ家のような外気浴フィールドにもぜひ足を運んでみてほしい。この地ならではの豊かな緑と空気を全身で楽しみつつチルアウトしよう。

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Photo: Keisuke Tanigawa書籍がずらりと並ぶラウンジ

サウナで汗を流して「ととのった」後は、レストラン1階のラウンジへ移動するのがおすすめだ。ソファ席の向かいの壁には、奥多摩で活動する「おくたま文庫」が選書した本がずらりと並び、気ままに読書を楽しむことができる。

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Photo: Keisuke Tanigawa地場の食材をたっぷり使ったサウナ飯

ラウンジでは、庭のハーブを使用したドリンクや、近隣の川魚をはじめとする新鮮食材を利用したハンバーガーもオーダーできるのがうれしい。緑を眺めながら、地場の食材を使った「サウナ飯」でほっと一息ついてみては。

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Photo: Keisuke Tanigawa生態系のプロであるNPO Birthが監修したビオトープ

元養魚場という土地と地域の生態系を生かした美しき作庭

庭のランドスケープデザインは、歴史を踏まえた作庭を得意とする彌永秀一が手がけた。川から引いた流水を使い、養魚場だったという特殊な土地を再生した。生態系調査のプロフェッショナルとともに動植物にとっても健やかに生きられる場所になるよう、唯一無二のフィールド作りを目指している。

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Photo: Keisuke Tanigawa全て手積みのワサビ田

レストランで午前中(11時から)に食事を予約した場合は、ランチがスタートする15分前から地域に暮らすスタッフのガイド付きで、自然を巡るフィールド散歩を体験できる。敷地内に自生する草木やたい肥から手作りした無農薬の野菜畑、清らかな水が流れるワサビ田、地域の生態系を大切にしたビオトープなど、ここだからこそ出合うことのできる自然を思う存分満喫しよう。

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Photo: Keisuke Tanigawa関係者を集めた開業レセプションにて

民家だった建物の歴史や、養魚場の趣を残す土地、地域の営みを大切にしながら、革新的なイノベーションで新しい物語を紡ぎ始める「さとローグ」。来年には宿泊棟も増設され、沿線まるごとホテル化がさらに進んでいく様子が楽しみだ。

電動バイクや電動トゥクトゥクなども鳩ノ巣駅でレンタル可能なので、これらを活用すれば奥多摩もより周遊しやすくなることだろう。都心の喧騒(けんそう)に疲れたら、雄大な自然と土地の資源を生かしたサウナ、豊かな食に浸れる沿線まるごとホテルに、ぜひ足を運んでみてほしい。

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