エンター
Photo: Keisuke Tanigawa

Z世代がターゲット、エンターが育むクラブカルチャーの未来

アフターアワーも開催、夜の渋谷はどう変わる?

テキスト:
Nozomi Takagi
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渋谷を代表する大型クラブである「サウンド ミュージアム ビジョン(Sound Museum Vision)」と「コンタクト(contact)」が閉店した2022年9月。約半年後となる2022年12月に、両クラブを運営するグローバル・ハーツが、新たなヴェニュー「エンター(ENTER)」を渋谷にオープンした。タイムアウト東京では、成長過程の最中にあるオープン直後のエンターを取材。今後の運営方針について、関係者に話を聞いた。

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Photo: Keisuke Tanigawa

渋谷駅から徒歩7分、ミヤシタパークの向かいに誕生した新たなクラブ

JR渋谷駅から「レイヤード ミヤシタパーク」の方面に歩いて約7分。ミュージックバー「不眠遊戯ライオン」と同じビルの6階に、新たなクラブ「エンター」がオープンした。エレベーターで昇って最初に目に留まるのは、ネオン管で作られた店舗のロゴだ。

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Photo: Keisuke Tanigawa来年以降、エントランスの壁に装飾を施すなど、徐々に改装を加えていく予定

店名には「アーティストごとに異なる世界観があり、その世界観への入り口でありたい」と「人々を楽しませる娯楽を指すENTERTAINMENT (エンターテインメント)のENTER」という2つの意味が込められている。

店内はワンフロアスタイルで、収容規模はおよそ60人前後。しかし2022年12月15日(木)から3日間で開催されたオープニングパーティーの初日には、朝までに約500人もの来場者を記録したという。

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Photo: Keisuke Tanigawaフロアを囲むように配置されたスピーカーは、「コンタクト」のメインフロア「Studio X」で使われていたもの

サウンド ミュージアム ビジョンやコンタクトに比べると、キャパシティーは一回り以上縮小している。しかし、フロアの中央に楕円(だえん)形のDJブースが設置され、プレーヤーとの距離が近いことは、この規模ならではの魅力だろう。

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Photo: Keisuke Tanigawaブースの周縁にはドリンクが置けるカウンターがあり、DJの選曲を間近で見ながら酒が楽しめる

狙うはZ世代以降の若者が集まる空間

エンターでは基本的に、平日がエントランス1,000円、週末は2,000円(イベントに応じて変動)という、都内では比較的足を運びやすい料金形態をとる。従来のグローバル・ハーツ系列にはない点としては、毎週金・土曜日の早朝から午前9時までアフターアワーズ営業を行っていることだろう。

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Photo: Keisuke Tanigawaバーカウンターの奥には、座りながら音楽が楽しめるソファスペースも。こちらもアップデートを重ねていく予定だ

ナイトイベントからそのまま追加料金なしで滞在することも、アフターアワーズから新規で入場することも可能(入場料は原則1,000円)。週末に夜通し踊り倒してもなお、遊び足りなさを感じている元気なオーディエンスにとって、朝の遊び場が増えたことは朗報だといえる。週末のアフターアワーズを導入した経緯について、グローバル・ハーツ代表の村田大造は次のように語る。

「エンターでのアフターアワーズの開催は、弊社の既存店の中でもZ世代のアーティスト育成とお客さまを主軸にしているため、彼らの元気(POWER)を限界まで引き出して大きくすること、そして、アフターの時間帯でも大箱のような音響で長時間プレイでき、また聴ける場所が必要だと考えたからです」(グローバル・ハーツ代表・村田大造)

オープンして2週間が経過しようとする現在、実際にエンターを訪れる来場者は若年層が多い。平日、週末を問わず、上階の「不眠遊戯ライオン」からはしごする人も多いという。現時点では20〜30代前半のDJを中心にフックアップしているエンター。うわさを聞きつけ、アジアを中心とする海外のプレーヤーから「出演させてほしい」と問い合わせを受けることもある。

エンターの店長である齋藤直希は、エンターという新たな空間を「夢の箱」にしていくことを目標に掲げる。

「エンターが大きい・小さい・有名・無名などではなく、訪れた方全員がプラスの感情で家に帰ることを目指していきたいです。

フロアーやバーで音楽を聴いて踊ること。新しい人と出会うこと。新しい音楽を発見すること。エンターを訪れる理由はさまざまあると思います。その上で一人一人がポジティブな感情で帰路につき「明日一日頑張ろう」「将来はアーティストになろう」と未来へ前向きになれる。そんな場所へと育てていきたいです。

アーティストの方々にも、感情のジェットコースターに乗っているような、臨場感のあるプレイでお客様を魅了していただきたい。未来につながるプレイを、エンターで培ってもらいたいと思っています」(エンター店長・齋藤直希/C)

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Photo: Keisuke Tanigawaバーカウンターにはコンタクトに在籍していたスタッフの姿も。スタッフは随時募集している

現在、そしてこれからの渋谷のナイトカルチャー

コンタクトが伝説的なクラブ「イエロー(YELLOW)」や「イレブン(eleven)」「エアー(AIR)」の系譜を継いでいた通り、今回誕生したエンターにも脈々と、国内ダンスミュージックの血が流れている。しかし今年9月のビジョンとコンタクトの閉店というビッグニュースを前に、「渋谷から大箱がなくなってしまう」と嘆く声は後を絶たなかった。

今後グローバル・ハーツでは、エンターを国内クラブシーンのどういったポジションに据えることを目標にしているのだろうか。また、2023年以降はどういった「場作り」を目指しているのか。

「今後の国内のクラブシーンの発展のためには、Z世代以降の若者の力を引き出すことが必要です。若い世代と上の世代との垣根をなくし、皆が家族のように支え合える、本物のクラブシーンを作っていきたい。エンターは、その役割を担う場になりたいという思いから生まれました。

2023年以降の計画は、まだ決定した案件はありません。もちろん、ビジョンやコンタクトの機能を持ち合わせた場の提供は必要だと考えているので、引き続き、場所の選定や交渉も諦めずに続けていきます」(村田)

MAD MAGIC ORCHESTRA “Be Here Now”
Photo: MAD MAGIC ORCHESTRA “Be Here Now”

12月31日(土)には、カウントダウンイベントも開催する予定だ。系列店である「DJバー ブリッジ」 「DJバー&ラウンジ レップ(WREP)」「DJバー ブリッジ 新宿」からは追加料金1,000円で、「フリーダム(Freedom)」からは無料でエンターに入場できる。まだ足を運んでいない人は、年越しの回遊ルートにぜひ組み込んでみては。

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