Photo by Astrid Greif on Unsplash
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フロアから見える景色の変容、DOMMUNE緊急小箱サミット

小規模なクラブやDJバーは、コロナ禍を経てどう変容するか

作成者: Time Out Tokyo Editors
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二度にわたる緊急事態宣言を迎え、ナイトカルチャーが存続の危機を迎えている。「小箱」と呼ばれる小規模なクラブやDJバーは、コロナ禍を経てどのように変容していくのだろうか。

都内を代表する「小箱」のオーナーらが登壇

2021年2月24日、DOMMUNEが無観客配信イベント『日本のCLUBが消える!?緊急”小箱”サミット 〜渋谷の現状から考えるカルチャーの未来 Powered by ve-nu』が開催された。第1部では、DJ、トラックメイカーとして活動するSeiho、Licaxxxを司会に迎え、青山蜂やボノボ、ミツキといった都内の小箱オーナーと店長が登壇。ここ1、2年の現場の変化についてトークが繰り広げられた。

第2部では2020年以降のクラブシーンで爆発的に広まった「デジタル コミュニティー」をテーマに、リアルとバーチャルの二つの軸が生み出す、新たなナイトタイムエコノミーの在り方についてディスカッションを開催。このレポートでは、第2部の内容を中心に伝えたい。

Photo: DOMMUNE
Photo: DOMMUNE

 

青山蜂がバーチャルで再現した有限の空間軸

緊急事態宣言下では、あらゆるアーティストやライブスペースが主体となって「無観客配信」を実施した。電子チケットの販売企業、ZAIKOでは、昨年3月のロックダウン以降、急ピッチで電子チケット制のライブ配信機能を開発し、提供をスタート。昨年は年間で5000本以上の有料配信イベントを開催したという。

ZAIKOの取締役を務めるローレン・ローズ・コーカー(Lauren Rose Kocher)は、有料ライブ配信機の開発経緯について、次のように振り返る。

「もともとZAIKOは電子チケット会社であり、イベントの現場と密接な企業です。イベントが次々とロックダウンの影響でキャンセルされるなか、電子チケットと配信を組み合わせる仕組みを急いで開発したことが功を奏しました。我々は利用者のフィードバックを直接聞き、スピーディーに反映できる。現場を重視するスピリッツこそがZAIKOの強みだと思っていますし、配信やバーチャルの運営も、そういった現場の血が通っている感覚こそが重要だと思います」

音楽の無観客配信イベントがトレンドに挙がるなか、同時にバーチャル空間での音楽配信イベントも急速に普及した。昨年8月、オンラインゲームのフォートナイト内で米津玄師がライブを開催したことは記憶に新しい。

小箱でも、同様の動きがあった。実在するエンタテインメント空間をバーチャルで再現するプロジェクト、ve-nuにおいて、2020年12月、渋谷にある青山蜂の空間を再現した『青山蜂 AOYAMA HACHI 25TH VIRTUAL ANNIVERSARY PARTY』が開催。

12月に開催された『青山蜂 AOYAMA HACHI 25TH VIRTUAL ANNIVERSARY PARTY』(Photo:ve-nu)
12月に開催された『青山蜂 AOYAMA HACHI 25TH VIRTUAL ANNIVERSARY PARTY』(Photo:ve-nu)

 

バーチャル 青山蜂の制作に携わったのは、アーティストのJACKSON kakiだ。彼は青山蜂のプロジェクトのほか、仮想ナイトクラブ配信AVYSS GAZEなど、バーチャルの手法を用いた配信イベントを手がけてきた。

AVYSS GAZE

「コロナ禍を通じて感じた大きな変化の一つが、個人で『バーチャルパーティー』をする人が増えたことでした。Unity(ゲーム制作エンジン)やOBS(ライブ配信用ソフト)など、無料でVR・ARコンテンツを制作や配信できるエンジンが普及したことが大きかったと思います」とJACKSON kakiは振り返る。

DOMMUNE代表の宇川直宏は、「フォートナイトは無限に広がる幻想空間を構築しているのに対し、青山蜂の取り組みは、現実にある公共の場を、限りある空間として再現している。それがリアリティーを担保しているし、見る人に特定の空間軸を共有するキモになっていると思います」と、青山蜂の取り組みについて「フォートナイトとは全く違う空間共有がされていること」をポイントに挙げた。

デジタルコミュニティのエネルギーがリアル空間に還元される可能性

一方で、青山蜂のオーナー後藤は「アイデアを言うのは簡単だが……」と前置きした上で、本番に到るまでの制作過程についてこう指摘する。「再現度の高さに驚きつつも、バーチャル空間内でコンテンツとしてやれることが少なく、物足りなさを感じたのは事実でした。バーカウンターでドリンクをオーダーできたり、DJブースの中をのぞけたりするようになれば、もっと『蜂にいる』感覚は生まれるんじゃないかな、と。バーチャル蜂は、実験を繰り返しながら作っていくものなのだと感じました」

ve-nuのデジタルプロデューサーを務める丸山研司は、後藤の意見を踏まえ、「クラブに5、6時間滞在するのは珍しくない。でもそれって、音楽を聴いて踊る合間に誰かと雑談したり、スマホをいじったりする『遊び』があったからなんですよね。デジタル空間上に長時間滞在するのは、さすがに集中力が持ちません。だからこそ遊び要素をもっと入れるべきだと思いました」

青山蜂(Photo: Keisuke Tanigawa)
青山蜂(Photo: Keisuke Tanigawa)

では、バーチャルで得た体験価値をどのようにリアルへ還元し、つないでいくべきだろうか。タイムアウト東京を運営するORIGINAL.INC代表の伏谷博之は、デジタル上で生み出される「コミュニティー」の可能性について言及する。

「日本の小箱がプレイヤー同士、あるいは箱同士で一定のリアルなコミュニティーを持っていることはすごく大事。ただ同時にバーチャル空間やSNSなど、オンラインでつながっていることも、コロナ禍において重要だと感じました。

例えば、ストリートカートに乗りながら東京観光できる公道カート「マリカー」を運営するMARIモビリティは、国内クラウドファンディングに大失敗したんです。そのニュースが海外に伝わった時、日本を訪れたことのある観光客からの反響は大きかった。

もしお客さんとSNSなどでつながりを保ってさえいれば、クラウドファンディングも成功していたかもしれない。その上で、デジタルツインのフロアに対しコミュニティーが100万人生まれたとすれば、リアルなフロアに人が流れる期待もできるはずです」

ナイトタイムエコノミーとは、多様性を示す宣言である

デジタルの切り口からポストパンデミックな小箱の在り方についてディスカッションがなされたが、そもそもなぜ小箱を存続させるべきなのか。それは、伏谷が触れていた通り 「都市の経済」に直結するからである。

シドニーはもともと『24時間シティ構想』を掲げていたのですが、夜間の治安が問題となり、2014年に飲食店の閉店時間を早めるロックアウト法が施行されたんです。夜に病院へ運ばれる人はいなくなった一方で、都市の経済と文化は一気に低下。昨年11月にロックアウト法が緩和され、徐々にナイトタイムエコノミーが取り戻されつつあります。

海外におけるナイトタイムエコノミーとは必ずしも『夜の街を盛り上げよう!』という意味ではないんです。むしろ本質は、夜間にパフォーマンスを発揮できる人の居場所を作る、という多様性を目指す宣言。人々が生きるための選択肢の一つであることは、忘れちゃいけない」

今回のディスカッションは、「今活躍しているトラックメイカーやDJらの多くが小箱を経験しています」という、司会のSeihoとLicaxxxの言葉から始まった(彼らもまた小箱経験者である)。

文化の発信地であり、コミュニティースペースとしても機能し、多様性の象徴ともとれる空間、小箱。「会えない時代」におけるサバイブを経たダンスフロアが、バーチャルと交錯し、今後どのようにローカルシーンを発展させていくのか。未来への希望と期待が垣間見える5時間であった。

テキスト:高木望

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