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「思いがけない2時間の作品に救われる経験を」支配人の稲田良子にショートインタビュー

2025年12月19日、神保町に新たな映画館「シネマリス」がオープン。2スクリーンで構成されており、「小さくても 善いものを」をコンセプトにえりすぐりの映画を届ける。
エントランスはミントグリーンの壁が印象的で、地下でありながら天井が高く開放感のある空間。コーヒーや紅茶などのドリンクや軽食を提供するカフェスタンドが設置されている。シネマリスのアイコンであるリスを形どったクッキーは、神保町の洋菓子店「maru.」で製造されたものだ。
「シアター1」は、赤を基調とした華やかな空間。新作ロードショーと特集上映を行う。後述する「シアター2」にも共通しているが、どの席からもスクリーンが観やすいようにミリ単位で調整したという。また、ビロードの座席が、クラシックな名画座のような雰囲気を醸し出している。
同シアターのオープニング上映作品は、『私は何度も私になる』『ジュンについて』『最初の年 民意が生んだ、社会主義アジェンデ政権』『チリの闘い 武器なき民の抵抗』の4作品。また、開館記念特集上映第1弾として、『男たちの晩歌 4Kリマスター版』や、特別上映の『鯨が消えた入り江』などを含んだ『レスリー・チャン特集+1 春夏秋冬、張國榮(いつも心にレスリー・チャン)』が行われる。
「シアター2」は、落ち着いた青がテーマカラー。月額2,500円(以下全て税込み)または年額2万2,000円の定額会費を支払うことで見放題の「サブスク制」を導入しており、好きな映画を何度でも観られるのが特徴だ。さらに、「サブスク対象外の作品」も会員割引料金で鑑賞できる。詳しくは公式ウェブサイトを確認してほしい。
サブスク上映作品の第1弾として『ミツバチのささやき』『瞳をとじて』が2026年1月1日(木)まで上映。1月2日(金)〜1月15日(木)は、『枯れ葉』『ロボット・ドリームス』の2作品が決定している。
なお、事前の連絡は必要だが、車椅子の人もエレベーターで移動できるので安心だ。トイレもバリアフリー対応のものがあり、シアターにも車椅子のまま入室できる。
また、取材時に支配人の稲田良子にショートインタビューした。これまで映画業界とは無縁の会社員生活を送ってきたとのことだが、「映画館は、会社や学校、家庭など、日常から逃げ出す2、3時間の隠れ家、そこに救われる人も多い場所」と映画館への深い愛情を感じるコメントを寄せてくれた。
—神保町といえば、ミニシアターのパイオニア「岩波ホール」が2022年に閉館したことが記憶に新しいです。やはりその存在を意識したのでしょうか? またその「継承」という点でコメントをいただけるとうれしいです。
ここの物件がとてもすてきだったので、この場所にオープンすると決めたんです。だから、神保町になったのは偶然でしたが、運命だったと思います。
ですが、映画好きとしてはやはり、「神保町」というと「岩波ホール」を想起するんですね。岩波ホールの高尚さはとても真似できるものではないですが、その志の一部でも継承したいと考えています。
そして、神保町が好きな人、「岩波ホール」が好きだった人に、「シネマリス」に足を運んでもらえるよう頑張ります。
—「サブスク制」が特徴だと思うのですが、お客さんにどんな体験をしてほしいですか?
会費を払えば1本約500円以下で観られるシステムになっています。お気に入りの映画があれば、何回でも観ていただきたいです。
あと、今はどこでも自分の好きな映画が簡単に観られる時代ですが、偶然の出合いがあってほしいとも思います。私も2本立ての上映を観に行った時に、お目当てではない方の作品が面白かったという経験があります。お客さまに足を運んでもらうためにも、信頼されるキュレーションをしていけるように頑張ります。
—キュレーションの方向性について教えてください。
レスリー・チャン特集はもちろん、『ジュンについて』など、「小さくても 善いものを」という私たちの理念に通じるような作品を上映していけたらと考えています。アジア圏の映画をはじめ、女性やマイノリティーの視点など、多様な文化の窓口になるような作品を選んでいきたいなと。また、自分が観てもらいたい映画だけでなく、スタッフたちと話し合いながら、バランスのいいキュレーションができたらと考えています。
—街との連携や回遊などは意識しているのでしょうか? またどのような場所になっていってほしいですか?
映画を観た後は街に出て、本屋さんを巡ったり、カレーを食べたり、喫茶店で映画の感想を話したりしてもらえたら。近隣のお店と相互割引のような連携もできたら、と考えています。
場所としては、居心地のいい場所になってほしいですね。緩やかにくつろいでいただいて、映画ファンの交流の場・コミュニティーとしての居場所を提供できたらと考えています。あとは何より、映画館は「会社や学校、家庭など、日常を離れたひと時の隠れ家で救われる場所」だと思うんですね。いろいろな層の人にとって優しい映画館を目指しておりますので、ぜひお越しいただけるとうれしいです。
神保町にこうして、また映画の火がともった。我が家でくつろぎながら外さない映画を観るのもいいが、思いがけない作品との出合いが与えてくれる感動は忘れがたいものだ。この新たな映画館で運命の1本に出合えるかもしれない。
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