ニュース

デザインシーンの現在地を示す実験的な見本市「alter. 2025, Tokyo」が開催

墓石の運搬技術の応用や、使い切りの窯道具に新たな用途を見出した試みなど

Kaoru Hoshino
テキスト
Kaoru Hoshino
Editor
alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa Toyoshima | ALL CLAMPの展示
広告

次世代を担うデザイナーたちのプロジェクトを発表する実験的なイベント「alter. 2025, Tokyo」が、2025年11月7日(金)〜9日(日)の3日間限定で初開催されている。

会場となる「コレド室町」内の「日本橋三井ホール」には、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、フォトグラファーなど、ジャンルを横断する59名のクリエイターが集い、11組のプロジェクトとしてそれぞれのプレゼンテーションを行う。

alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa Toyoshima会場の風景

ターコイズブルーのカーペットが一面に敷かれたホールには、新鮮な感性を併せ持つデザインチームが、それぞれの展示空間を広げる。今、最も時代の空気を敏感に感じ取り、次のシーンを切り拓いていくであろう若手たちによる見本市だ。

参加するのは、国際的な審査員による選考を経て選ばれた先鋭たちだ。審査メンバーには、「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」のキュレーター、ターニャ・カンツ・フワン(Tanja Cunz Hwang)をはじめ、パリの「ポンピドゥー・センター」のキュレーター、オリヴィエ・ゼトゥーン(Olivier Zeitoun)、さらに設計事務所「DAIKEI MILLS」を率いる中村圭佑が名を連ねる。

本記事では、中でも注目のプロジェクトをいくつか絞って紹介したい。

alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa Toyoshimapacking listの展示

白い縄で包まれた家具がひときわ目を引くのは、次世代の輸送や梱包のあり方を再考するグループ「packing list」。梱包といえば、エアキャップやテープを使うのが一般的だが、彼らは縄で角を保護して運ぶという方法を提示した。これは、石工職人が暮石を運ぶ際に縄のみで角を守り、効率的かつ環境に優しい方法で運搬する技術に着想を得たものだ。

驚くべきは、この方法が実際に発送にも使える上、複雑な形状の物体でも1本の縄で一人で梱包作業が行える店である。縄は繰り返し使用できるので、今後、こうした技術が一般化されることを期待したい。

alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa Toyoshima石工職人による実演

次に、多様な発想の展開で注目を集めていたのが、異なる分野で活躍する5人で構成されたクリエーターチーム「HAMA Reimagined」だ。彼らが焦点を当てたのは、焼き物を作る際に用いられる窯道具「ハマ」である。

alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa ToyoshimaHAMA Reimaginedの展示

磁器は焼成時に収縮する特性があり、焼台も同じように縮まなければ高台が変形したり割れてしまう。そのため、窯に入れる磁器と同じ収縮率の粘土を使って作られるハマは基本的には一度しか使えず、焼成後は廃棄されてしまうのが現状である。そんなハマを、テキスタイルデザイナーをはじめ、木工や陶芸作家が、新たなオブジェクトに作り変えた。

ほかにも、既製品のクランプの「挟む」という行為そのものに焦点を当てた「ALL CLAMP」の展示なども印象的だ。どちらの作品も、単なる機能の発展や応用にとどまらず、造形としての美しさにおいても際立っており、その研ぎ澄まされた感性に驚かされる。

alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa ToyoshimaALL CLAMPの展示

しかし、機能を備えているからといって、それだけで優れたプロダクトとは限らない。「Unseen Objects」は、鋳物の製造過程で用いられる道具や治具といった、これまで見過ごされてきた物の造形に着目。実際にそれらを鋳造することで、偶発的に生まれるフォルムの美しさを浮かび上がらせる。

alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa ToyoshimaUnseen Objectsの展示
alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa ToyoshimaOMOIYARI PROJECTの展示

一方、「POETIC PROTOTYPING -Forms of Invisibility-」は、吐息をシャボン玉に変換する装置や、極めて高い透過度の素材で作られたブラインドによって「視線」を際立たせた。人間の行為を可視化しようと試みるプロジェクトだ。

alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa ToyoshimaPOETIC PROTOTYPING -Forms of Invisibility-の展示

展示を観終えたら、併設のマーケットもぜひ覗きたい。カリモクの工場から出た端材を組み合わせて作られた什器には、アートブックやクリエーターたちの作品が並び、実際に購入できる。

alter. 2025, Tokyo
Photo: Kisa Toyoshimaショップの様子

入場料は1日券が2,000円(学生 は1,000円)、3日通し券が3,000円(学生は2,000円)、中学生以下は無料。日本のプロダクトデザインに新たな潮流が生まれる瞬間を、ぜひ目撃してほしい。

関連記事

素材に挑む若手クリエーターに注目、「DESIGNART TOKYO 2025」が開幕

東京、11月に観たいアニメーション映画のリバイバル上映

11月に行くべき国際フェスティバル4選

東京の最新情報をタイムアウト東京のメールマガジンでチェックしよう。登録はこちら

最新ニュース
    広告