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シャガールが舞台美術を手がけた伝説のバレエ『アレコ』が「MoN Takanawa」で蘇る

5月29日〜6月7日、高精細の巨大LEDスクリーンで絵画を忠実に再現

Kaoru Hoshino
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Kaoru Hoshino
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アレコ
画像提供:一般財団法人JR東日本文化創造財団 | バレエ『アレコ』のための背景画(1942年)
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1942年に巨匠マルク・シャガール(Marc Chagall)が舞台美術を手がけた伝説のバレエ『アレコ』。その世界観を最新技術で再現する公演が、2026年5月29日(金)から6月7日(日)まで「MoN Takanawa: The Museum of Narratives(以下、MoN Takanawa)」で開催される。

アレコは、ロシアの文豪、アレクサンドル・プーシキン(Aleksandr Sergeyevich Pushkin)の詩『ジプシー』を原作とする劇。自由を求めてロマの一団に加わったロシア貴族の青年・アレコは、一団の娘・ゼンフィラと恋に落ちるが、奔放な彼女はやがて別の若者に心を移してしまう。嫉妬に狂ったアレコが怒りのあまり悲劇的な結末を招く情熱的な物語だ。

アレコ
画像提供:一般財団法人JR東日本文化創造財団キービジュアル

この作品の背景美術を手がけたのが、20世紀を代表する画家のシャガール。ナチスの迫害を逃れてアメリカへ亡命中だった彼にとって、同郷プーシキンの原作に携わる仕事は、故郷へ思いを馳せる特別な機会であっただろう。

全4幕の物語に合わせて描かれた4枚の背景画には、戦時下という過酷な状況に置かれながらも、残酷な現実を直接的に描くのではなく、詩的かつ象徴的な世界観へと昇華させる「色彩の魔術師」らしい表現が見て取れる。

なお、これらの背景絵画の第1・2・4幕を「青森県立美術館」が、第3幕をアメリカの「フィラデルフィア美術館」が収蔵。現在、4幕全てが青森県立美術館に集結し、2027年3月末まで公開されている。

アレコ
画像提供:一般財団法人JR東日本文化創造財団バレエ『アレコ』のための背景画(1942年)

デジタルの力を借りて、伝統的な芸術を未来へつなぐ

今回の上演の注目点は、最新技術を駆使した映像表現だ。2024年の青森県立美術館での公演では、絵画が容易に動かせないため、第4幕の前でのみの披露だったが、本公演では高精細の巨大LEDスクリーンを用い、シャガールの絵画の観たままを忠実に実寸大で再現。これにより、物語の進行に合わせて全4幕の背景絵画を連動させる演出が実現した。

これは単なるイメージの投影ではなく、かつてシャガール自身が「絵画が空間全体に広がる体験」を追い求めたように、絵画と身体芸術が境界を超えて重なり合う「総合芸術」としてのあり方を現代に継承する、新たな試みといえるだろう。

アレコ
画像提供:一般財団法人JR東日本文化創造財団

芸術の垣根を越えた、新たな表現の場

振付・演出は、気鋭の振付家・宝満直也が担当。宝満は「絵画の存在感と共鳴し、相互作用を生み出すエネルギーを意識しました」と振付を行うにあたって重視した点を語った。また、台詞が無いからこそ、表情や仕草の一つ一つまで行き届いた演出にも注目したい。

青森県立美術館館長の平田オリザは、次のように期待を寄せる。「日本では、バレエ好きとアート好きというように分かれがちですが、ヨーロッパではそういった境目はありません。かつてピカソがバレエの衣装を手がけたように、本来さまざまな領域はつながっています。ジャンルの垣根を払うという意味でも『MoN Takanawa』で上演されることには大きな意義があると思います」と語った。

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画像提供:一般財団法人JR東日本文化創造財団演出再現

シャガールの作品を、舞台空間として体感する新たな取り組み。芸術が好きな全ての人にとって見逃せない公演となりそうだ。

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