あいちトリエンナーレ訴訟
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「あいちトリエンナーレ」の負担金問題、名古屋市の敗訴が確定

3月6日付、未払い金3,380万円余りを支払い命令

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Sato Ryuichiro
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2024年3月7日、「あいちトリエンナーレ2019」(芸術監督:津田大介)の負担金を巡り、同トリエンナーレ実行委員会と名古屋市で争われた裁判で、名古屋市の敗訴が確定した。

この裁判は、2019年に開催された同トリエンナーレ内の展示「表現の不自由展・その後」の内容を理由に、名古屋市市長の河村たかしが実行委員会に支払うはずの負担金、約3,380万円の支払いを拒否し、実行委員会が支払いを求めて起こしたものだ。NHKの報道によると、最高裁判所は7日までに名古屋市の上告を棄却、同市に3,380万円余りの支払いを命じた判決が確定したという。

「表現の不自由展・その後」は、「表現の不自由」をテーマに、慰安婦問題を象徴する「平和の少女像」(キム・ソギョン&キム・ウンソン)や、昭和天皇の画像を燃やす「遠近を抱えて PartⅡ」(大浦伸行)などを展示した。その展示内容に対して抗議やテロ予告などが相次ぎ、トリエンナーレ実行委員長で愛知県知事の大村秀章に対して河村は中止を要請、開催3日目にして展示が中止された。

その後名古屋市は、公金を支出するのが著しく不適切だなどとして負担金約1億7,100万円の一部、3,380万円余りの支払いを留保していた。これに対して、実行委員会は市に支払いを求めて提訴し、1審、2審ともに市に支払いを命じ、市が最高裁に上告。東京新聞によれば1審の名古屋地方裁判所は、展示の強い政治性を認めながらも「負担金の交付によって、市が作品の政治的主張を後押ししているとは言えない」との見解を示し、「芸術祭は公共事業であるから政治的中立が求められる」との理由で不払いを正当化した市の主張を退けたという。市が一部作品を「ハラスメント」「違法性は明らか」とみなしたことについても、東京新聞の社説は、「表現活動に反対意見があることは不可避であり、多彩な解釈が可能な芸術作品が斬新な手法を用いることもある。鑑賞者に不快感や嫌悪感を生じさせるのもやむを得ない」との認識を示して、市の主張を退けたと報じている。

2審の名古屋高等裁判所も一審判決を支持し、市側の控訴を棄却していた。最高裁判所第3小法廷(裁判長:林道晴)はこれらの判決を支持し、6日付で市の上告を退ける決定、2審の判決が確定した形だ。朝日新聞によれば、今回の判断は、上告できる理由に当たる憲法違反などがないという理由にとどまるという。最高裁の判決を受けて大村は、「主張が全て取り入れられ、妥当で当然の判決」と述べた。一方の河村は、「残念を通り越している」「『表現の不自由展・その後』の展示内容に税金は使えないと主張してきたが、最高裁が判断を下さずに棄却したのは問題」と述べている。

なお、名古屋市は2023年1月、負担金支払いの留保で生じる遅延損害金の増加を避ける目的から、負担金とそれまでに生じた遅延損害金、合計約3900万円を仮払い済みだ。

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