にしくん
画像提供:にしくん

元AV監督兼男優のにしくんに聞く、アダルト業界のリアル

SEX:私の場合 #4 AV新法から撮影現場の裏側まで

編集:
Hisato Hayashi
寄稿:
Honoka Yamasaki
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タイムアウト東京 > LGBTQ+ > SEX:私の場合 > 元AV監督兼男優のにしくんに聞く、アダルト業界のリアル

サラリーマン勤務時代を経て、23歳でアダルト業界に足を踏み入れたにしくん。身長109cmの元AV(アダルトビデオ)監督兼男優として才能を開花した彼は、まさに「等身大」で活躍する人物だ。監督作品の中には「アクシデントでカラダが小さくなった成人男性」という設定でストーリーを展開することも。アダルト業界に新たな風を吹き込むにしくんに、タブー視されがちな障がい者の性を明るみに出そうと考えたきっかけを聞いてみた。

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サラリーマンからアダルト業界に転身
AVデビュー前、サラリーマン時代のクラブイベント『FILMNIGHT』(画像提供:にしくん)

サラリーマンからアダルト業界に転身

ーアダルト業界に足を踏み入れたきっかけはなんでしょうか。

もともとプログラマーとしてサラリーマン生活を送りながら、夜はクラブダンサーなどの活動もしていました。あるアダルト業界に関わる人たちが集まるイベントに参加したとき、お客さんから『全日本クンニ選手権』という企画に誘っていただきました。軽い気持ちでその企画に参加してみたら、決勝戦まで進んでしまったんです(笑)。最終的に、風俗歴20年以上のレズビアン女性に負けてしまったものの、「日本一クンニがうまい男」としての称号をもらい、いろいろな人が食いついてくれました。

ーそこから人脈が広がっていった?

そうですね。それから『ぽこ×たて』という深夜番組で話題になった「絶対にイカない女vs絶対にイカせる電マ」企画の第2弾をFC2やYouTubeにアップするとのことで、出演の話をいただきました。当時サラリーマンとして働いていたのですが、脱ぐわけでもないし、これくらいならできるだろうと出演しました。

そこから当時は今ほどYouTubeの規制が厳しくなかったこともあり、アダルト系ユーチューバーとして活動を始めました。アダルトグッズを販売する会社にスポンサーになってもらい、『デンマ』をマイクに見立てた「デンマイク」を持ち、AV女優さんとアダルトトークする企画を半年以上続けていました。

にしくん

AV男優、田渕正浩主催のイベント『セクアカナイト』(画像提供:にしくん)

ー実際にアダルト業界に精通する人たちと働いてみてどうでしたか?

世間と業界の認識のギャップに差があると感じました。とあるAV女優さんが、自分が好きでやっている仕事なのに、地元で身バレして悩んでいると話してくれたことを覚えています。そのとき、「アダルト業界」も「障害」と同じように、世間の目が生きづらさをつくっていることがあるのだと感じました。

僕は「障害者」になりたくてなっているわけではないけど、物心ついた頃から障害者であり、障害のある自分に慣れてきて、自分なりに対策やお願いする方法もわかっています。なので、周りが思っているほど障害は大したことではなく、そこまで同情されたくないと思うんですね。これってアダルト業界と似てるなと感じ、酔った勢いではありましたが、障害者とアダルト業界両方のイメージを変えていきたいという話をしましたね。

時代と共に変化するアダルト業界
『ちいさくなったボクと、憧れの同級生JK』(2017年)出演者:阿部乃みく、桃菜あこ(明海こう、小泉まり)、なごみ、はるのるみ(画像提供:にしくん)

時代と共に変化するアダルト業界

ー本格的に活動し始めてから、どのように感じましたか?

1993年の『ハンディキャップをぶっとばせ!』という障害者のセックスを映し出した作品がお蔵入りになったり、低身長症のレスラーによる小人プロレスが縮小したり、障害者差別を含めた規制が厳しくなったりしていく中で、障害者が出演するAVを出すことは不可能だと言われました。

障害者の性は表に出すべきではないという倫理観のなかで、どのようにしてアダルト業界に進出できるかを模索していたところ、僕が上に立って僕を使うという結論に至りました。

つまり、僕がAV監督とAV男優が同一人物になることで、世間では可哀想だからという正義感が理由で、上に立つものを叩いて活動停止させるというロジックを壊せると思ったんです。そこからは、男性が興奮する需要を最優先するAVではなく、「性と障害」というものを使って何がつくれるかを試行錯誤していました。

にしくん

『ちいさくなってしまい、ギャルたちのオモチャにされたボク』出演者:AIKA、MIRANO、月嶋あかり(画像提供:にしくん)

ー自ら新しく開拓しようと考えたのですね。最近では女性向けのAVなど、男性だけでなく幅広い層に向けられている印象です。

そうですね。人気タレントやユーチューバーが元AV女優だったり、現役で働く人はまれではなくなっていることから、アダルト業界を身近に感じる人は増えた印象です。あとは、スマートフォン1台で活発にコミュニケーションができる時代で、アダルトビデオが自然に目に触れることで抵抗がなくなってきているのかなと。

最近では、中高生の学生からアダルト業界に携わりたいとのメッセージが来ていますが、学生が親近感を抱いていることに関しては問題提起すべきだと考えています。

ー時代の流れとともに認識も変わっているのですね。

最近、海外を始め日本でも「pornhuber(ポルノハバー)」という人たちが増えてきています。自分で撮影した動画を共有サイトに投稿し、収益を得る仕組みです。日本ではいまだに、事務所やメーカーでアダルトビデオに出演するやり方が主流ですが、今後インフルエンサーのような立ち位置で活動するAV男優、女優さんが増えてくるんじゃないですかね。

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撮影現場の裏側
『マジックミラー号』の撮影で(画像提供:にしくん)

撮影現場の裏側

ー最近では「AV新法」を巡る議論が多く見受けられますが、にしくんはどのような意見をお持ちですか?

さまざまな論点が交差している印象ですが、そのなかでもAVそのものを規制しようと声をあげる団体を多く見かけます。

その人たちが実際に当事者の声を取り入れているかはわかりませんし、まずはアダルト業界が社会的に理解されるべき存在として認識されることが大事なのかなと。セックスワーカーの主体性を無視することで、「被害者性」を強調する意見が生まれてくるのはタブー視されているからこそだと感じます。

世界で勝負できる日本のビジネスとして、AVはアニメと並んで挙げられるほど大きな影響力があります。ものすごいスピードでAV新法が通されましたが、当事者である業界関係者の意見を取り入れた上で慎重に議論を行っていくことが大事だと感じています。

ー撮影のあり方についても問題視されていますが、実際に現場を経験してみてどのように感じていますか?

私もアダルト業界について何も知らない頃は、騙されたり強要されてAVに出演させられる女優が多いと思っていましたし、業界自体に闇深い印象がありました。

しかし、実際に働いてみると世間の目があるからこそ、細心の注意を払っていることを知りました。撮影前に細かいプレイ内容の説明をしたり、契約書を出演者が声に出して読んで署名するまでの様子を撮影したりと、リスク管理を徹底しています。裸になって行為はするといえど、映像作品をつくる仕事でもありますし、少なくとも私が携わった現場を見る限りはみんな真面目に働いていました。

ー「性は隠すべきもの」だという固定概念から、アダルト業界の実態が表に出にくくなっていることは考えられそうですね。タブー視されている「セックス」について、にしくんはどのように認識しているのでしょうか?

「コミュニケーションの一環」として捉えています。世の中にいる人が途絶えない限り、セックスは存在するので、特別に思うことはありません。逆にセックスをタブー視し、正しい情報にアクセスできない環境をつくってしまうことで、性病や避妊などケアすべき点を怠ってしまうリスクが考えられます。みんな隠れてセックスしているでしょうし、もっと表向きに語られてもいいと思います。

Contributor

Honoka Yamasaki

Honoka Yamasaki

昼間はライターとしてタブーなトピックを発信する傍ら、夜はディープな街、新宿二丁目でドラァグクイーンと踊るダンサーとして活動。あらゆる性や嗜好について取材。メディアでは取り上げられにくい話題を、形式に捉われずに発信する雑誌purple millenniumを運営。

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