インタビュー:ひさつねあゆみ×北川陽子

ケケノコ族の族長ひさつねあゆみ と劇団快快を主宰する北川陽子にインタビュー

Mari Hiratsuka
テキスト:
Mari Hiratsuka
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タイムアウト東京 > アート&カルチャー > インタビュー:ひさつねあゆみ (ケケノコ族)×北川陽子(劇団快快)

テキスト:Ryuichiro Sato
写真:Kisa Toyoshima

今年で3年目となる鉄工島フェス』は、かつて鉄工所が集中して栄えていた京浜島の特徴や歴史の魅力をアーティストたちとともに発信する1日限りのフェスティバルだ。今年は、アーティスト、パフォーマンスともに例年以上に充実している。ライブでは、初回から参加している石野卓球やFNCYなど多彩なアーティストがめじろ押しだ。

アートワークで注目を集めるのが、9月にぬいぐるみ作家の片岡メリヤスとコラボレーションした舞台『ルイ・ルイ』が話題となった劇団快快(ファイファイ )と、「竹の子族」の文化を引用したファッションや活動に注目を集めるケケノコ族。10年近くの知り合いである2人は、初めて同じ場所でパフォーマンスするという。今回は、その代表である北川陽子(劇団快快)とひさつねあゆみ(ケケノコ族長)に話を聞いた。

自然に入って自然に消えていく

自然に入って自然に消えていく

ーそれぞれ今回の鉄工島フェスでは、どのようなパフォーマンスをする予定でしょうか。

ひさつねあゆみ (以下、H):ケケノコ族は、毎月2回原宿でパフォーマンスをしているのですが、活動の軸となっている「ケケノコ闊歩※」の精神のまま鉄工島に持っていきます。

原宿での闊歩と同じように、鉄工島という場所を感じながら共存できたらと思います。 今回、札幌支部のメンバーも参加し大所帯です。神出鬼没的に登場するので見ていただく方には出会えたらラッキーという感じで楽しんでいただきたいです。

※闊歩:ケケノコ族による街中を派手な格好で踊りながら歩くパフォーマンスのこと。誰でも参加ができる。

北川陽子(以下、K):今回は、鉄工島の歴史や土地を踏まえたものをやります。劇というよりもパフォーマンスですね。『HANEDABUSHI』というタイトルで20分のパフォーマンスを7回やる予定です。

このタイトルにしたのは、漁師の囃子歌である『羽田節』という歌が昔この土地にあったことを聞いたからです。褒めたたえるモチベーションらしいんですよ、手を叩いてフリースタイルで歌うもので。

ー当日、ケケノコ族さんはどんな曲で踊るんですか。

H:いつものレパートリーをフルで踊る予定です。竹の子族が存在していた時代のディスコサウンドから最近のヒット曲まであります。

例えば『ジンギスカン』や『ライディーン/YMO』から始まり『YOUNG MAN(Y.M.C.A)/西城秀樹』『Shangri-la/電気グルーヴ』、最近の曲でいうと『Flamingo/米津玄師』、『夜の踊り子/サカナクション』とか、40年くらいの時代を超えていますね。

レパートリーには2曲を除いて全てケケノコのオリジナルの振りがついています。竹の子族が実際に踊られていた振り付けを受け継いだものも2曲やります。

ーケケノコ族さんは前回も出演されていますが、会場の雰囲気はいかがでしたか。

H:鉄工島のお客さんは、何かを見にくることが前提でなので反応が温かかったですね。 原宿では用意されたステージではなく、公道を闊歩しているので反応が全然違くて。びっくりしたり、大笑いしたり、いい反応ばかりでなく気持ち悪いとか、いい感じのカップルが言葉を失っていたり(笑)。

なので、いつもいかに街や歩行者と不自然でなく共存するためにも邪魔な存在にならないかを気にしています。混んでる道では小さく踊るとか、真顔で踊り威圧感を与えないとか、点字ブロックを歩かないとか。

自然に入り込んで、自然にどっかに消えていくっていう。 色々な人が行き交う街で闊歩し続けるということは、様々な人が共存していくための対話でもあるんです。その精神は鉄工島での闊歩にも繋げていきたいです。

工場を生かして鉄工島の歴史に目を向ける
北嶋絞製作所

工場を生かして鉄工島の歴史に目を向ける

ー北川さんは工場でパフォーマンスされるとのことですが、そこはどういう場所なんですか。

K:北嶋絞製作所さんっていう、金属の絞り部品加工を専門に手がけている工場です。人工衛星の部品や、ロケットの先端部品を制作しているところで。当日は、工場の機械を使いながらパフォーマンスをやろうと思っています。舞台は組まずにそのままで。ワークマンのつなぎを着てやろうかと(笑)。

あと、『ルイ・ルイ』に引き続きシンガーソングライターの白波多カミンちゃんも参加してくれます

ー工場ということで気をつけていることはありますか?

今回はフェスなので、ライブ目当てのお客さんが多いから気をつけないといけないと思っています。あと、空間が広くて大きいけど、機械がたくさん置いてあるからあんまり動けなさそうなところですかね。お客さんはパフォーマンスを上から見ていただくことになります。

―上から見るとは、お客さんはパフォーマンスを見下ろすような感じですか

K:そうです。3、4メートル上から見下ろすかたちになります。1回で20人くらい入れるかな。上から見下ろされるのは初めてなので、それを意識したパフォーマンスができればいいなと思っています。

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自分の好きな部分を好きでいたい

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―そんなお二人のパフォーマンスに関連してお聞きしたいと思います。ケケノコ族さんはそもそもなぜ竹の子族を意識するようになったんですか?

H:改めてふと現代の視点から竹の子族を見たら、すごく面白かったし単純にファッションが可愛いと思ったのが意識したきっかけですね。また、現代にあの原色サテン生地でダボっとしたスタイルは知る限り派手にリバイバルされていなかったので、文化とファッションを引用しつつアップデートして、竹の子族をしらない世代にも伝えていけたら面白いのではないかと思いました。

形は変わっても根本にある心のオアシスのようなホコ天の概念は、歩行者天国でなくとも現代もネットの中とかあらゆる形であると思います。だからこそ、あえてストリートに出て装いやダンスを誰でも楽しめるシステムを作りたいなと。ケケノコ族をきっかけに竹の子族を知ったメンバーも沢山います。

それと同時に「そういえばあったわね~」と懐かしんでくれる方もいたり。竹の子族が世代を超えて共通語になっていて、人ってそういう風に繋がれるのかという発見がありました。

―衣装やメイクが特徴的ですね。竹の子族もびっくりのユニークな進化をしているような?

H:『ケケノコウェア』やシマシマの『横断歩道ライン』など、それぞれの違う持ち味の個性を引き立てながらケケノコらしさも演出できるようなおすすめアイテムがケケノコにはいくつかあって、メンバーはそれを使ってアレンジするのがみんなとっても上手なんです。なので、メンバーのファッションの細かいところまで注目してほしいな。小物使いとか自由で清々しいですよ。

人形すごいいいかも

人形すごいいいかも

―北川さんも、あることにはまると実際にその現場で働くと聞いたのですが。以前は人形にはまっていたとか?

K:まだはまってますね。あるとき、「人形すごいいいかも!」ってなって、1週間後にはもう面接に行ってました。人形のこともっと詳しくなりたいって思ったんですよね。たぶんそれまで全く興味なかったのに、昔のCMを見て、急にすごいかわいいってなって。

昔、歌舞伎にはまったときは歌舞伎座で働いていました。 

―人形のことは、作品には生かされているんですか。

K:全くないですね!完全に趣味です。

H:ぬいぐるみ作家の片岡メリヤスさんと一緒にやってた『ルイ・ルイ』とかには登場してたよね?

K:あー、確かに。気づかないうちに使ってるのかな。

―北川さんは、個人的な部分も取り込んだりすると思うのですが、「芝浜」で感動したように趣味でも。

K:ありますね。でも、あんまり理解してもらえないこともあるので。趣味と作品は別なので、やっぱり分けたいですよね。

―最後にお二人から一言ずつ

H:1年ぶりのケケノコはメンバーも増えて北海道からの参加者もいます。新鮮な化学反応が今から楽しみです。

K:ありがとう!ケケノコに合わせられるか分からないけど。見れたらうれしいな。

ひさつねあゆみ (ケケノコ族)

1983年生まれ。『ケケノコ族』の族長。ケケノコネームはケケ・ヒサツネ。文化服装学院卒業後、アーティストとしてジャンルレスに活動している。2016年にミスID特別賞受賞した。 

北川陽子(劇団快快)

2008年に東京を中心に活動する劇団快快(FAIFAI)を結成。主宰としてほぼ全公演の脚本を手がける。2010年9月に代表作『My name is I LOVE YOU』でスイスの
チューリヒ・シアター・スペクタクルにてアジア人初の最優秀賞『ZKB Patronage Prize 2010』受賞した。2019年9月に2年振りの新作として公演を行った『ルイ・ルイ』ではぬいぐるみ作家の片岡メリヤスとコラボレーションし、話題を呼んだ。

『鉄鋼島フェス』の詳細はこちら

インタビュー:西野達
  • アート

ものづくりの島、羽田空港のすぐ隣に位置する人工島を舞台に、多様なジャンルの音楽ライブやアートを楽しめる『鉄工島フェス』が、今年で第3回目を迎える。 会場となる京浜島は本来工業専用の地域。開催に向けて、鉄工所の空きスペースを利用したバックルコーボー(BUCKLE KÔBÔ)を拠点に現地制作を行う作家も多く、アーティストの創造性と工場で働く人々の熟練した技術の融合には期待が寄せられる。 タイムアウト東京では、2019年11月3日(日)の開催に先駆け、会場でも一際目を引くであろうモニュメントを制作中のアーティスト、西野達(にしの・たつ)にインタビューを行った。 

鉄工島FES開催目前、熟練の技とアートが融合する工場内を初公開
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  • イベント

大田区に浮かぶ人工の島、京浜島(けいひんじま)を知っているだろうか。 1986年に竣工したこの島は、地域の大半が工業団地。特に機械金属加工の工場が多く、島内では、各国へ輸出する半導体やロケットの先端、パラポラアンテナなどが生産されており、その技術力の高さは世界的にもトップクラスだ。 そんな一風変わった「鉄工所の島=鉄工島」の特徴や歴史の魅力を発信しようと、島内では2016年から工場の技術と、アーティストたちの創造性を掛け合わせたイベント「鉄工島FES」を開催。2018年は11月4日(日)の開催を予定している。当日は島内にある4つの工場や製作所などが会場となり、ライブやアーティストの作品展示が行われる予定だ。 10月18日には、「鉄工島アイデアジャンボリー」の一環で島内の工場を巡るツアーが行われた。2019年のフェス開催に向け、発足以来、初めて一般から出展者を募集する同フェス実行委員会が、出展に興味のあるアーティストなどを対象に実施した今回のツアー。フェスに協力している島内の工場を見学するツアーを皮切りに、次年度の招聘アーティストが生まれるのだという。当日は、美術大学の学生や、アクセサリー作家、会社員など約20人が集まり、工場の職員らの案内で、普段は目にすることのない工場内部の様子を見学した。当日の様子を、写真と共にレポートしよう。  最初に訪れたのは、70年以上、金属の絞り部品加工を専門に手掛けている北嶋絞製作所。当工場に勤務し、フェスにもアーティストとして出展している高橋輝雄(たかはし・てるお)が工場内を案内してくれた。当工場では、主にジェット戦闘機に使用される燃料タンクの先端部品などを生産しており、見学中も熟練の従業員らが手早く金属材料を加工していた。 こうした工場から出る金属の端材などが、アーティストの作品の材料となる ツアーで訪れた工場は、材料となる端材や会場の提供だけでなく、アーティストと協力して作品を作り上げるパートナーでもある。そして、高橋も仕事の合間にフェスに参加するアーティストの作品制作をサポートしている一人だ。見学の最後には、工場でボツになった部品などで制作中の作品の一部分を披露し周囲から感嘆の声があがったが、「たまに、従業員がゴミだと思って捨てちゃうんですけどね」と明かし、参加者らを笑わせていた。 制作した部品を手に、金属の風合いにこだわり「端材を外に置いてしばらくサビさせることもある」と語る高橋 続いて訪れたのは、管工事や、エレベーター設置などの機会器具設置工事を専門に行っている須田鉄工所。フェス実行委員会の拠点でもあるBUCKLE KÔBÔ(バックルコーボー)が隣接しており、印象的な看板やグラフィックが目を引いた。 工場内でくつろぐ猫たちの餌を小脇に抱え、参加者らを案内してくれたのは、同社代表の須田眞輝(すだ・まさき)。主生産品である浄水槽タンクの制作過程などを詳しく説明してくれた。普段は見ることのできない浄水槽の内部や溶接の様子などを、参加者らは興味深そうに覗き込んでいた。  職人もアーティストたちからのアイデアを楽しんでいる フェスの開催について、須田に一帯の工場がどのように捉えているか尋ねると「自分たち職人は、図面通りの部品を正確に作るのが仕事なので、その中に創造性はない。でもここに出入りするアーティストたちは対極で、自由な創造性が全てです。島の職人も、彼らが出す様々なアイデアを楽しんでいます」と、教えてくれた。   須田鉄工所代表の須田 ツアーの最後は、フェ

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