
インタビュー :鈴木紗理奈
映画『キセキの葉書』で主演を務めた鈴木紗理奈にインタビュー
実話をもとにした脇谷みどりの小説『希望のスイッチは、くすっ』をジャッキー・ウーが映画化した『キセキの葉書』は、阪神淡路大震災から半年後の兵庫県西宮市を舞台に、難病の娘、そして認知症とうつ病を併発した母親に挟まれながらひたむきに生きる女性を描く物語だ。主演を務めた鈴木紗理奈は、離れて暮らす母親の命をつなぎとめるべく、13年間で5000枚もの葉書を送り続けた主人公の美幸を演じた。本作で、マドリード国際映画祭の最優秀外国映画主演女優賞を受賞し、これからの女優としての活動も期待される鈴木紗理奈に、本作について話を聞いた。
ー本作に出演したきっかけを教えてください
ネイティブに大阪弁を喋れる人ということで何人か女優さんの名前が挙がっていたのですが、この役を挑戦するにあたって一番意外性があるのが私だったそうです。今回の役が難病の娘と認知症の母の狭間で生きる女性ということで、バラエティを中心に活動してきた私とイメージが一番離れた役でした。プロデューサーが、そういうキャスティングが面白いと思い選んでいただき、出演が決まりました。
ー監督のジャッキー・ウーから演技についてアドバイスをもらいましたか。印象に残っているエピソードはありますか
監督のジャッキーさんは、演技について尋ねた意見に明確な答えを返してくれる方でした。様々なアドバイスをいただいたのですが、演技プランがあって、鈴木紗理奈としてセリフを言ったとき、それを殺して言ったときに、映画の主人公を応援したいと観ている人に思ってもらうにはどれを軸に演じたらいいですかという質問を監督にしたことがありました。そのときに、2手くらい先の意見が返ってきて、その返答をいただいたときから全信頼を置いて、監督の言うことを忠実に再現しようと努力しました。映画は実話に基づいていますが、脇谷さん本人をコピーするのではなく、監督は「映画では違う女性になってもいい、観客に共感されることを一番大事にしたい」とおっしゃっていました。なので、芝居するという感覚をやめて、その役を生きるつもりでナチュラルに演じました。
ー鈴木さんも、お子さんがいると同時に芸能活動も行い、
親として共感できる部分ばかりでした。私は母親として子どもを守らなければいけないという気持ちで生きています。主人公の美幸はもっと色んなことを背負っているんですけど、どの母親も背負っているものがあります。たとえば、自分が倒れたらこの子はどうやって生きていくねん、っていう。そういう親心というものを今回、全面に出せたと思います。


ーマドリード国際映画祭で最優秀外国映画主演女優賞を受賞したときはどのような気持ちでしたか
とても嬉しい気持ちでした。日本の映画はもちろん、海外の映画も撮影したからといって必ずしも劇場で公開されるものではないんです。とくに日本の場合は劇場での公開が難しいです。なので最初に、映画館で公開されたらいいなという思いがありました。その後、劇場での公開が決まり、映画祭に出品する話もあがって。マド リード国際映画祭にノミネートされたことを聞いたときには、充分だと感じていました。スペイン行きが決まり飛行機に乗っている頃には、行くからには賞を取りたいという気持ちに変わっていました。受賞後には、さらに多くの人に観てもらいたいと思いました。
ー主演女優賞を受賞したことによって何か反響を感じますか
受賞したことで、上映する劇場が約10倍に増えました。舞台あいさつに回っているのですが、満員の劇場で涙した観客に出迎えてもらうことに毎回感動しています。今は、劇場での公開、主演女優賞の取得などこうなったらいいなと思っていたことが少しずつ積み重なって、まるで映画に起きた奇跡が自分にも起きた気がしています。
ー今後も映画への出演はしていきますか。予定されている作品があれば教えて下さい
機会があればもちろん挑戦したいと思います。特にやってみたいジャンルは、コメディです。やはり、20年以上コメディ、バラエティの世界で活動してきたので、挑戦してみたいジャンルのひとつです。

鈴木紗理奈(すずきさりな)
映画『キセキの葉書』
2017年11月4日(土)より全国公開
監督:ジャッキー・ウー
出演:鈴木紗理奈、八日市屋天満、福富慶士郎、土屋貴子、申芳夫
配給:ミューズ・プランニング