インタビュー:アダン・ホドロフスキー

映画『エンドレス・ポエトリー』で主演を務めたアダン・ホドロフスキーにインタビュー

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インタビュー:平塚真里
写真:豊嶋希沙

映画『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』などで知られる、映画監督アレハンドロ・ホドロフスキー。最新作『エンドレス・ポエトリー』は、ホドロフスキー自身の出生を描いた作品で、『リアリティのダンス』の続編だ。1940年から1950年代のチリを舞台に、カルロス・イバニェス・デル・カンポを大統領に据えるための動乱のなか、サンティアゴでアーティストや詩人と出会う青年期のアレハンドロを描いている。

主人公を、ホドロフスキーの末の息子であるアダンが演じ、前作に引き続き、長男ブロンティスが父親役、衣装をホドロフスキーの妻パスカルが担当。一家団結して作られた本作について、アレハンドロを演じたアダンに、幼少時代の家族とのエピソードや父親との関係などについて話を聞いた。

映画『エンドレスポエトリー』より

父親に、偉大な強さがあると改めて思いました

ーホドロフスキー作品というと、家族が出演や制作に携わっていることが特徴です。家族での作品づくりはいかがでしたか

ホドロフスキーの作品ということで、全員大きなプレッシャーがありました。大変だったのは意見が食い違ったときに、気を使わない分、意見をストレートに言い、ぶつかることです。しかし互いの才能を理解し、信頼しているので、家族で作品を作るということは重要なことでした。

ーでは、今まで知らなかった父親の意外な一面や、本作から知ったことはありますか

父親の知らなかった一面というと、労働者階級の非常に貧しい生まれだったということです。話には聞いていましたが、理解していない部分もありました。役が決まったときにチリのトコピジャに向かい、父親が育った部屋で2ヶ月間過ごしたのですが、そこには詩や芸術はなく、商売だけでした。その環境のなかから芸術家になった父親は、偉大な強さがあると改めて思いました。

ーなるほど。そんな父親の下で、どのような幼少時代を過ごしましたか

8歳のときに両親が離婚をしました。それ以降は父親と兄たち、男に囲まれて暮らしました。兄たちは、壁に絵を描いたり、女性を連れ込んだり、友人15人と一部屋で寝ていたりしました。なので、毎日誰かが訪ねてくるような賑やかな家でした。全員に共通していたのが、クリエイティブで芸術に関係していたということです。毎週水曜日は父親がタロットリーディングをするので、兄たちと周りを囲んで話を聞いていました。あと、父親が大学で授業をしていて、(哲学や、肉体と精神の関係性などに関する)スピリチュアルの講義に参加したり。とても貴重な幼少時代を過ごしました。

ーユニークなエピソードはありますか

家族全員が紫色を着ている時期がありました。車も枕もシーツも紫でした。父親の生徒たちも真似をしだして、紫一色。近所の人から、「あそこはカルトだ」と言われていました。紫色だったのは、神聖な色であったのと、尼僧、教会で過ごす人のようにシンプルな生活を目指し、意識の発展と開発だけに集中するという目的がありました。

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映画『エンドレスポエトリー』より

音楽と向き合うきっかけになったのは、ジョージ・ハリスンとの出会い

ー前作『リアリティのダンス』に続いて、本作でも音楽を担当していますが、音楽との出会い、ミュージシャンとしての道を歩み始めたきっかけを教えてください

小さい頃からエルビス・プレスリーが好きで、スターに憧れていました。音楽ときちんと向き合うきっかけになったのは、ジョージ・ハリスンとの出会いです。7歳のときに父親がハリスンの家に行く機会があり、一緒に連れて行ってもらいました。そのときにギターの弾き方を教わりました。ブルースのコードを教えてくれて、メモをもらいました。小さかったのでそのメモをすぐに捨ててしまって。これは、今でも後悔していることのひとつです。その日からピアノやギター、ベースを毎日触るようになりました。

ー本作を見てそれぞれ気づくこと、感じることがあると思うのですが、アダンさんは何か感じることはありましたか

撮影の前に自分の人生のなかで解決していないことがたくさんありました。「サイコマジック」(※1で父親が彼の父親との和解を果たしたように、父親の青年時代を演じることで、遺伝子でつながっている私も癒されました。なので、撮影後にラディカルに変わりました。そして人間になりました。

サイコマジックとは、ホドロフスキーが独自に提唱する心理療法。芸術や禅、神秘主義、近代哲学を融合した思想で、心の問題を癒すことを目的としている

ー父親と母親との問題があったホドロフスキー自身が映画を作り、癒されたことで、アダンさんにも癒しがあったということですかね。ここでいうサイコマジックとは何だったのでしょう

たとえば、20年間精神科に通っていて、やっと何が原因か分かったけれど、それをどう解決するのかが分からないことがあるとします。そこには、肉体と精神に大きな関係があって、肉体も記憶をします。なので、いくら頭で考えても解決できないことがあります。一番の解決方法は、肉体的な行動を起こすことです。今回の場合、映画で役を演じるということでした。たとえば、自分がすごくトラウマになっていることを芝居で演じる。この行為が自分の無意識の層に働きかけることによって問題が解決した、サイコマジックが起こったということです。

ー最後に本作を楽しみにしている日本のみなさんにメッセージを下さい

私たちは国でもないし、名前でもなく、肩書きでもないです。本当は何でもないのに、そこにとらわれています。そこから自由になり、自分で自分を閉じ込めないことです。自分の好きなことをして、全身自分になって自分を生きる。誰とも比べない、比べるな!

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映画『エンドレスポエトリー』より

アダン・ホドロフスキー(Adan Jodorowsky)

1979年、フランス生まれ。ホドロフスキー家の末の息子。『サンタ・サングレ 聖なる血』で映画初出演。その後多くの短編を監督する一方で、ジャック・バラティエの『Rien, voilà l'ordre』、ジュリー・デルピーの『パリ、恋人たちの2日間』など、様々な作品に出演。ミュージシャン「Adanowsky」としても活躍しており、『リアリティのダンス』や本作のオリジナルサウンドトラックなどを作曲している。

映画『エンドレス・ポエトリー

2017年11月18日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開

監督・脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー

撮影: クリストファー・ドイル

出演:アダン・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、ブロンティス・ホドロフスキー、レアンドロ・ターブ、イェレミアス・ハースコヴィッツほか

配給・宣伝:アップリンク

公式サイトはこちら

(C) 2016 SATORI FILMS, LE SOLEIL FILMS Y LE PACTE(2016年/フランス、チリ、日本/128分/スペイン語/1:1.85/5.1ch/DCP)

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