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もてなしブームのなかのユニバーサルツーリズム

もてなしブームのなかのユニバーサルツーリズム

障害者をはじめとするマイノリティや福祉そのものに対する「意識のバリア」を取り除くべく開催されていた『2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展』。タイムアウト東京がディレクションするシンポジウムでは、「Beyond Diversity」をテーマに科学やテクノロジーの進歩により拡張していく世界について、ダイバーシティの先にある未来をディスカッションが行われた。

第4回では「Beyond inclusion」をテーマに、近年はユニバーサルツーリズム推進に傾注し、共生社会の実現を目指す若原圭子と、株式会社KADOKAWA『ウォーカー』総編集長の玉置泰紀が登壇。空前のもてなしブームのなかで、障害者や高齢者などを含むすべての人に充実した旅の体験を提供するには、また、もてなしとは何なのかについて話し合われた。

ユニバーサルツーリズムとは、年齢、性別、国籍、障害の有無などにかかわらず、すべての人が楽しめる旅行を指す。登壇した若原圭子は、そのユニバーサルツーリズムを推進するコンサルタント活動を行っている人物だ。若原は、日本には高齢化に環境が追いついていない状況があり、また増加する訪日外国人旅行者の言語や習慣の違いなどによる様々な課題を解決していく必要もあると話す。

世界に例を見ないスピードで高齢化が進んでいる日本では、言語や習慣の違う外国人旅行者や居住者を含めると、配慮の必要な人の方が将来的に多くなるとされている。しかし、現在バリアフリーの環境を整えるにあたり、リスクは大きいが利益は少ないと考えられ、またノウハウもないことから、企業が取り組みづらくなっていることが課題だ。2020年に向け、相手を理解し寄り添う「心のバリアフリー」が真のもてなしにつながり、全員に当てはまるわけではなくとも、多くの人に合わせられる最大公約数を考えた街づくりが必要であるのではないかと、若原は語った。

株式会社KADOKAWA『ウォーカー』総編集長の玉置泰紀は、歴史やゲーム、ファンタジーの世界を現実の世界と重ね合わせ、情報のメタ化を通してツーリズムを発信していくのが面白いのではないかと話す。2016年9月に発足した「アニメツーリズム協会」もそのひとつの例で、アニメやマンガの舞台や、作者とゆかりのある土地などを88ヶ所選定し、観光スポット化させることで観光客の呼び込みにつなげる試みを行っている。

また、2020年のオリンピックに向け、駅の看板の統一や各駅へのエレベーターの設置など都市インフラのバリアフリー化が進んでいることを挙げた。観光の目玉となる伝統的な建造物も同様に整備が行われているが、建物のなかには手を加えることができないものも数多くある。しかし、バリアフリーにこだわりすぎるのではなく、「ここまでなら入れる」、「外から眺める」などできるできないの判断を明確に持つことも必要と話し、そのできることとできないことの情報を明確に発信していくことで、観光の充実度を変えられる部分もあるので、発信の方法も大切になると話した。

若原圭子
生活起点による観光、旅行業、地域活性化の戦略策定や、マネジメント、ユニバーサルツーリズム推進のための調査、研究、分析等を専門とする。店頭旅行業のBPR、旅行者購買行動調査、旅行者の地域での行動調査、地域パワーインデックス調査等。近年はユニバーサルツーリズム推進に傾注し、共生社会の実現を目指している。

玉置泰紀(株式会社KADOKAWA ウォーカー総編集長)
KADOKAWAが発行する雑誌『Walker』を総括しているウォーカー総編集長。産経新聞にて6年記者として活動したのち、大阪府警本部捜査1課を担当、角川の編集長4誌を経て現職にいたる。そのほかにも、京都市埋蔵文化財研究所理事、大阪府日本万国博覧会記念公園運営審議会委員、おおさかカンヴァス審査員など活動は多岐にわたる。

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