荒木町、夜の散歩ガイド

歴史と文化の交差点で、粋な大人たちと酔いどれ探検へ

テキスト:
Kunihiro Miki
広告
テキスト:間庭典子
写真:中村悠希

タイムアウト東京ナイトライフ>荒木町、夜の散歩ガイド

30年前まで検番(芸者と料理屋・芸者屋・待合との連絡事務所)があり、芸者衆で華やいでいた荒木町。徳川家康が鷹狩りの際に立ち寄った、津の守弁財天の池など江戸情緒が残る名所も多く、今も噺家(はなしか)や作家など、粋を極めた文化人が足繁く通う一帯だ。さまざまな文化や時代が交錯する路地を進み、風情のある割烹で酔いしれるもよし。はたまた、アフリカの酒をあおり、マジックバーで遊び、カントリーソングに包まれてるもよし。個性的な店が軒を連ねる荒木町の夜を探検し、未知なる世界への扉を開いてみよう。

関連記事
四ツ谷で過ごす24時間

酒仙に地酒を学ぶ。

与太呂

全国各地の酒蔵から金賞酒が入荷する、地酒好きにはたまらない居酒屋。アユの寒干しやカキ、酒粕チーズなど、燗(かん)に合う旬の肴(さかな)も評判だ。

店主選りすぐりの地酒を飲み比べるイベントも定期的に開催し、静岡県の初亀、群馬県の水芭蕉など、人気の蔵元を招いて語り合うことも。情報発信地のような役目も果たす、生きた「日本酒学」を学べる希少な一軒。

歴史を感じるカウンターはいぶし銀のような渋さで、昭和の日本映画の世界に迷い込んだような感覚になるだろう。

華麗な手さばきに酔う。

Magical Bar 荒木町 隠れんぼ

一流マジシャンによるショーを目の前で楽しめるマジックバー。料金は2時間飲み放題でマジックのライブ込みで6,500円から。食事付きなど、用途に合わせてプランが選べる。

マジシャンは日替わりで、メディアで活躍する人気魔術師も登場する。ステージ以外にもテーブルマジックを披露してくれ、本格的なカクテルが飲み放題なのもうれしい。

風船の中からシャンパンが出現、火の中から花が……などサプライズマジックで祝ってくれるパーティープランも好評だ。

広告
和食で夢心地になる。

旬菜料理 山灯

荒木町には昔ながらの老舗も多いが、世代交代もあり、新進気鋭の料理人による伝統を踏襲した革新的な割烹も増えている。

旬菜料理 山灯は旬の食材を「正しい和食」で味わえる店。あん肝や柿のなますなど、その季節ならではの料理と燗(かん)酒とのマリアージュで夢心地になるだろう。座席は、職人の手業をライブで見ることができるカウンターや、大勢で楽しめる座敷席もある。木〜土曜は夜中まで営業しているので、さまざまなシーンに対応してくれる得難い店だ。

カントリーの世界に飛び込む。
  • 音楽
  • 四谷三丁目

パインフィールド

荒木町のカントリーパブ、パインフィールドはカントリーミュージックの聖地。オーナーのサンシャイン松野はラジオ番組でも長らく活躍した、日本のカントリー界の生き字引のような存在。

運がいいとカウンター越しの生ライブを堪能でき、初心者にも分かりやすくカントリー講座をしてくれる。常連客がエルビス・プレスリーを歌い、生伴奏をカントリー調で、なんてコラボレーションに立ち合えるかも。40年以上使い込んだ鍋で煎ったポップコーンはここでしか食べられない味だ。

広告
深夜の夕食はワインで楽しむ。

Kitchen428

荒木町の夜は長い。そのため深夜にちゃんとした食事ができるバーも多い。このKitchen428も毎晩27時まで営業し、『霜降り馬肉のカルパッチョ』や『エスカルゴと茸のブルゴーニュ風』など本格的なフレンチを提供している。

『鶏白レバーのムース』(800円)など軽めの前菜から、ハンバーグやステーキなどのがっつりとしたメニューまで、気軽にシェアできる居酒屋スタイル。アルコールもワイン、マール・グラッパから焼酎と幅広い。柳新道通りの路地裏にある隠れた名店だ。

アフリカの大地を五感で感じる。
  • レストラン
  • 四谷三丁目
  • 価格 2/4

トライブス

南アフリカのワイン、ケニアのビール、ガーナのヤシ酒などアフリカ大陸全域のアルコールを堪能できるアフリカンバー。

ラム酒やジンなども豊富で飲み比べてみるのも楽しい。クスクスやラクダのハンバーグなどアフリカの伝統料理も味わうことができ、なかでも南アフリカのソーセージブルボスは南アフリカ政府観光局が認定した本場そのものの味。ジャングルのジオラマがある内装も独特で、アフリカ大陸に上陸したような気持ちになれる。外のテラス席もゆったりしていて心地いい。

広告
伝統の豚しゃぶ鍋を囲む。
  • レストラン
  • 鍋料理
  • 四谷三丁目
  • 価格 2/4

三櫂屋

四谷で豚しゃぶ一筋26年の歴史を持つ名店。名物の豚しゃぶ(1人前2,950円)は、ネギと湯葉だけでいただくシンプルなものだ。引き算だからこそごまかしがきかないため、素材は厳選している。

小規模農家で丁寧に育てられた豚肉の香りを生かすために、自家製たれにはあえてかんきつ類を使わず手づくり生しょうゆをベースにきりっと整え、だしには日高の極上三石ケリマイ産昆布を使用している。備長炭と南部の鉄鍋によって適温が長時間保たれ、アクがほとんど出ないのは驚きだ。地酒に合う肴(さかな)も多いので、ゆったりと過ごせるだろう。

関連記事

蒲田、夜の散歩ガイド
  • ナイトライフ

東京の南東、大田区の真ん中に位置する蒲田は、一見これといった特徴がない街だと思うかもしれない。しかし、この街には豊かな歴史やユニークでディープな店、素晴らしいレストランであふれているのだ。 かつて蒲田は、現在の原宿や渋谷と同じような流行の発信地だったことがある。戦前は映画の町として知られ、有名な松竹スタジオ(若き小津安二郎が監督デビューを果たした場所)があった。その後、松竹スタジオは1930年代後半に移転。戦後数十年にわたり、太田区の小規模工場が日本の大企業にとって重要な部品供給源となると、再び蒲田を中心とした商業活動が行われるようになり、これまでとは違った形で有名になった。 今日、蒲田エリアは活気のある店(大手手芸店のユザワヤ本店など)や黒湯、羽田空港にアクセスしやすいことなどで知られている。ここでは、蒲田に住むスタッフ2人のおすすめと取材を進めていく中で知り合った蒲田愛あふれる住人から聞いた、アフター5から楽しめる夜のディープスポットを紹介したい。

  • ナイトライフ

猥雑さと昭和の香りが残る渋谷百軒店は、大人が集う繁華街というイメージをもつ人も多いかもしれない。道玄坂側の入り口にはストリップ劇場や無料案内所が立ち並び、少々近寄りがたい雰囲気を放っている。しかし近年、世代交代した店が増え、新しいカルチャーと昔ながらの老舗が残るユニークなエリアへと進化を遂げつつあるのだ。 そもそも渋谷百軒店は、関東大震災直後に「百貨店」をコンセプトに形成された商店街。その後、1945年の東京大空襲により、街は全焼する。昭和になるとジャズ喫茶やレストラン、テアトルの映画館などが立ち並ぶ飲食街としてにぎわいを取り戻した。ここでは、その名残が感じられる1931(昭和6)年に創業した老舗や、スナックを引き継ぎDJバーとしても営業する店など、アフター5から早朝まで楽しめる百軒店の居酒屋やバー、レストランを紹介する。 関連記事:『夜の門前仲町ガイド』『立石飲み歩き14選』

広告
四ツ谷で過ごす24時間
  • レストラン

甲州街道の関所、大木戸もあった四ツ谷界隈(かいわい)は江戸の時代から多くの人が行き交う場所だった。皇居や迎賓館赤坂離宮にも近く、今も各国の要人が訪れる。都心にもかかわらず、昔ながらの個人商店が変わらず愛されているのも特徴だ。上智大学をはじめ教育機関も多く、国際色も豊か。四ツ谷は、さまざまな世代や文化が交じり合うダイバーシティの街なのだ。街中でもさまざまなカルチャーに接するチャンスがある。ブラジル音楽のライブが連日行われているサッシ・ペレレや、ジャズ喫茶いーぐる、カントリーパブのパインフィールドなど、その世界の神髄に触れられる名店も多数。 江戸時代から続く老舗酒屋の角打ち、スタンディングルーム鈴傳には通な常連客が通う。花街らしい華やぎが残る食通の街、荒木町は世代交代が進み、若手が参入し活気づいている。一見ハードルが高く見えるこの界隈だが、臆せずその懐に飛び込んでほしい。それが文化交流の第一歩なのだから。

おすすめ
    関連情報
    関連情報
    広告