Keisuke Tanigawa
Keisuke Tanigawa

「ネパールに落ちた」店主の新店が豪徳寺にオープン

掘れば掘るほど面白い、オールド ネパール トウキョウの『ダルバート』からネパールの世界へ

テキスト:
Shiori Kotaki
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開店準備中から豪徳寺界隈で話題になっていた一軒が2020年7月9日、ついにオープンした。窓越しに見えるアチャールを発酵させている瓶が印象的なこの店は、『ダルバート』をはじめとしたネパールの食文化を堪能できるレストラン、オールド ネパール トウキョウだ。

ダルバート専門のネパール料理店ダルバート食堂や、ネパール産とインド産のスパイス販売とスパイスカレーの提供を行うスパイス堂を大阪に構え、その両店も人気であることから、7月2日から6日までのプレオープン期間中も大盛況だった。

ネパールの国民食『ダルバート』
『ダルバート』とは、100以上の民族が暮らしているといわれるネパールで、唯一全国で食べられている料理だ。調理方法などは地域によって異なることもあるが、ダール(豆のスープ)とバート(白飯)を基本とした構成は、どの地域も同じだという。今では、ダールとバートに、カレーやアチャール(日本でいう漬物のような役割を担う箸休め)、タルカリ(野菜を使ったおかず)などが添えられていることが多いが、かつて貧しい家庭では、ダールとバートのみで食事をしていたところもあったようだ。

同店で提供される『ダルバート』の構成は、ダール、白飯、カレー(1種類か2種類かを選ぶことが可能)、タルカリ、サーグ(青菜のスパイス炒め)、4種類のアチャール、ネパールスタイルのサラダ。これらが一つのプレートに盛られて提供される。

左上にある葉っぱのようなものは金時草。飾りのように見えるが食べられるので、忘れず味わってみてほしい(photo: Keisuke Tanigawa)
左上にある葉っぱのようなものは金時草。飾りのように見えるが食べられるので、忘れず味わってみてほしい(photo: Keisuke Tanigawa)

ネパール料理は、インド料理に比べると使用するスパイスの量がかなり少ないのが特徴で、ほとんどの料理がターメリック、クミン、チリ、フェヌグリークの4種類のスパイスを適宜組み合わせながら作られている。スパイスとしてはシンプルな味付けだが、反対にニンニクとショウガはたっぷりと使われるのでうま味が詰まっており、意外と日本人も親しみやすい。

また、同店では基本的に植物性食品を使っているほか、肉や魚を使わないカレーも用意されているので、ラクトベジタリアン、ラクトオボベジタリアン、ペスコタリアンには対応している。

店主の本田遼が手がけた本。ダルバートとネパール料理の教科書のような内容なので、この本をチェックしてから訪れればより料理を楽しめるだろう(photo: Keisuke Tanigawa)
店主の本田遼が手がけた本。ダルバートとネパール料理の教科書のような内容なので、この本をチェックしてから訪れればより料理を楽しめるだろう(photo: Keisuke Tanigawa)

現地の人との出会いこそが面白い
一度味わえば誰もがとりこになってしまうであろうこの奥深い味わいは、本田がネパールに足を運んで、様々な食事を味わったり、学校や食堂で料理を学んだり、そして現地の人に話を聞きながら自分自身で作り上げたものだ。

本田は、もともと和食レストランで働いていたが、その店のまかないでカレーを作ったことをきっかけにスパイスに目覚め、もっとスパイスについての勉強をしたいと思うように。そんな時、たまたま友人がネパール料理店でアルバイトをしていたことから、その店で彼もアルバイトもするようになったのだそう。しかし、働いているうちに「この店のレシピは本当に正しいのだろうか」と疑問を持つようになり、23歳で初めてネパールに旅立った。

この旅立ちこそが、彼が「ネパール」という国の魅力に「落ちて」いったきっかけである。

内装のレンガはネパールをイメージ。半個室のようなスペースもある(photo: Keisuke Tanigawa)
内装のレンガはネパールをイメージ。半個室のようなスペースもある(photo: Keisuke Tanigawa)

今でも年に数回はネパールに行っているという本田だが、現地で体験した話を聞くとなかなか大変そうだ。しかし、話をしている様子を見ていると、彼にとってはこの大変そうな体験こそが面白くてたまらないのだということが伝わってくる。例えば、長距離バスだと思って乗り込んだら、トイレ休憩や食事の付かないローカルバスで、「トイレに行きたいからちょっと止めて!」などと運転手にお願いしながら14時間バスに揺られて目的地にたどり着いた、なんて話も笑いながらしてくれた。

また、「今、覚えたい民族料理が三つあるんです。今すぐにでもネパールに行きたい」とも話していたが、料理の覚え方にも彼らしさが見える。まずは「どこに行ったら自分の食べたいものが食べられるのか、どのお店がおいしいのか」という聞き込みを現地の人に行う。人によって答えは違ってくるので、実際に店に行ったりしながら彼らの共通点を見つける。料理を味わったら、また裏付けをしながらいろいろな人に話を聞く。こういったフィールドワークを重ねながら、現地の味を手に入れていくのだ。

大阪から東京、そしてネパールへ
本田のその行動力と物怖じしない姿を尊敬の眼差しで見ていると、3〜5年後にはネパールにオールド ネパール(ネパールで店を持つことを見据えて豪徳寺の店名にはトウキョウをつけたのだそう)を誕生させたいとすでに考えているから驚いた。

ネパールにやってきたツーリストが、ネパール料理ではなく、自国の料理を食べていることを残念だと感じていた本田は、「ネパールの食文化をより豊かにし、観光産業の一つとして成立させたい。そのためには、今のネパールで見られるようなローカル的な食事の出し方では難しく、ネパールの食文化を知ってもらえるようなプレゼンテーションというものが必要になってくると思う。だから、味はオーソドックスでありながらも、古典的ではない、新しいネパール料理の見せ方をしていきたい」と意気込む。

近いところでいうと、オールド ネパール トウキョウでは8月からコース仕立てのディナーを提供する予定。これは、まずカジャ(餃子のような『モモ』をはじめとした『ダルバート』以外の食べ物。おつまみのようなイメージ)と、それらに合うアルコール(ネパールでもよく飲まれる焼酎や、料理に合う白ワインやオレンジワインを予定)を軽く楽しむ。その後にダルバートを味わい、最後にデザートで締めるというメニューだ。カジャとアルコールでワイワイした後に、ダルバートで締めるという流れはネパールでは一般的。ネパール料理はもちろん、このネパールならではの文化も伝えていきたいと本田は言う。

意外と触れたことがなかったという人も多いかもしれないが、実は掘れば掘るほど面白いネパールの食や文化。この機会にぜひ、オールド ネパール トウキョウから「ネパール沼」にはまってみてはいかがだろう。

オールド ネパール トウキョウの詳しい情報はこちら

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