重度障がい者らが操作、「分身」ロボットが運営するカフェオープン

テキスト:
Miroku Hina
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体を動かすことが困難な重度障がい者らが、自らの「分身」を使い、接客からメニュー提供までをこなす。そんな近未来的なカフェが112630日、1237日の計10日間、日本財団ビル(東京都港区)内に実験的にオープンする。ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者をはじめとした障がい者や、ひき込もりの人々などがロボットを遠隔操作し接客するという試みで、外出困難者の就業機会の創出を目指す。

接客をするロボット「オリヒメ(OriHime-D」は、オリィ研究所と、一般社団法人分身ロボットコミュニケーション協会(ARCA)が、日本財団の助成を受け、共同で開発を進めてきた。

カフェでは、外出困難者が操作する「分身」ロボットによる接客の可能性を実証。開催期間中、オリィ研究所が公募した外出困難者らが店員となり、5台ほどのロボットをパソコンや専用機器から遠隔で操作し接客する予定。操作者は、肉声や録音音声で客と実際にコミュニケーションをとることもできる。

財団では、ロボットを導入する企業も募集しており、2020年までの常設店開店を目指すという。

822日、同ビルで行われた会見に登場した「OriHime-D」は、滑らかに前進して手を振ったり、トレーから飲み物を手渡したりする動きを披露。当日の操作は、障がいで自力で起き上がることが困難というオリィ研究所秘書の村田望が、自宅から遠隔で行った。「OriHime-D」は、障がいのレベルに合わせてあごや視線の動きなどを利用した操作も可能だ。

オリィ研究所代表の吉藤に飲み物を手渡す「OriHime-D

同研究所代表の吉藤健太郎は、「(OriHime-Dが普及すれば)例え身体が動かなくても、誰かのために働き、収入を得ることができる。あらゆる人が、自分らしく、自由に働くことができるという考えを広めたい」とコメント。日本ALS協会元会長の岡部宏夫は、「こぼさないか心配したが、私でもコーヒーを渡すことができた。自分で人をもてなせるのは、大変な喜び。自身の世話ができる未来にもつながり、大きな希望を感じる」と、視線で操作する文字盤を用いて語った。

会見に登場した岡部(左から2番目)や吉藤(同3番目)ら

重度障がいを持つ人々が、自身の「分身」を通じて、人々と気軽に会話を交わす日も遠くはないのかもしれない。技術の発達による新しい社会の実現の取り組みに、ますます目が話せない。

 

デモンストレーションで家族に菓子を運ぶ「OriHime-D

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