街をアートで彩る、DESIGNART TOKYO 2020が開催

9+1や鈴木康広、村上里沙らおよそ150組のクリエーターが参加

テキスト:
Sato Ryuichiro
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タイムアウト東京がメディアパートナーを務める「デザイナート・トーキョー2020 DESIGNART TOKYO 2020」が2020年10月22日に開幕した。このイベントは、2017年に始まったデザインとアートのフェスティバル。都内各所に張り巡らされた展示を巡って街歩きを楽しみ、気に入った作品を見つけたら購入できるヴェニューもある。

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DESINGART TOKYO 2020

テーマは、「東京からデザイン&アートの文化を再起動」。本イベントはデザインとアートのある暮らしをスタンダードにすることを目指しており、それはニューノーマルの世界でも変わらずに大切だという思いからきている。本記事では、その多彩な展示から見どころを紹介していく。 

1. 新しい働き方を知る

今年のデザイナート東京は、オフィシャルプログラムでもある『NEW HOME OFFICE 展 働き方の新境地』で幕を開けた。この展示には、1518、ヴィトラ/センプレ(Vitra/SEMPRE)、ヴァリエール(Varier/Shinwa shop)、スチールケース(Steelcase/WSI)、エミュー(emu)、ムート(Muuto)が出展。

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ヴァリエールのブース(Photo: Keisuke Tanigawa)

ヴァリエールは、動きたいという身体の自然な欲求をかなえ、自然な姿勢を保つことのできる椅子を作っている点で印象的。デザイン性のみならず、耐久性をも追求するエミューのインテリアは全て屋外でも使用することが念頭に置かれて制作されている。

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エミューのブース(Photo:Keisuke Tanigawa)
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プラグインアーキテクト(Photo: Keisuke Tanigawa)

ガーデン部分で展示されている、プラグインアーキテクト、東京研究所、ワークショップラボによるベンチは、ソーシャルディスタンスを保てるように設計されており、まさに「新しい日常」に適応した作品と言えるだろう。

2. クリエーティブマインドを再起動させる

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YOYのブース(Photo: Keisuke Tanigawa)

表参道エリアでは、二つのオフィシャルプログラムに注目したい。ジャスマック青山ビルで開催中の『REBOOT』では、スガワラジュンヤやヨイ(YOY)など8組が参加、その中でも9+1の作品が印象的だ。

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9+1(Photo: Keisuke Tanigawa)

ガラスに柔らかさを与えられたらどうなるかという視点から制作された作品では、厚さ0.33〜0.55ミリメートルのガラスを波打つような形に焼成した後、化学強化処理を施して触れると柔軟に動くガラスを作り出しており、草間彌生のソフトスカルプチャーをほうふつさせる。そして、何よりもきれいなのだ。

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アルド・ロッシの建築(Photo: Keisuke Tanigawa)

会場となっているジャスマック青山の建築も見逃せない。この建物はアルド・ロッシの設計で1991年に完成、エントランスの12メートルもの吹き抜けが印象的だ。ロッシは実際の建築のほかにも建築理論などの分野で業績を挙げ、プリツカー賞も受賞した世界的な建築家として知られている。

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バッテンアンドカンプ展示風景(NACASA&PARTNERS)

表参道ヒルズを舞台に開催中の『デザイナートギャラリー(DESIGNART GALLERY)』では、バッテンアンドカンプ(Batten and Kamp)秋山亮太、そして鈴木康広を見ておきたい。バッテンアンドカンプは率直に素材の美しさを感じ取れる点が素晴らしく、岩石を生かしている点は多くの人が日本の石庭や山水、盆栽などのイメージを投影するかもしれない。

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秋山亮太展示風景(NACASA&PARTNERS)

秋山は今回、日々のアートワークから生まれたエラーをテーマにしており、絵の具を塗って、低温で焼成した発泡スチロール製の花器、それらを製作するために、さまざまな色彩や塗料で試行錯誤して焼成を試みたサンプルも併せて展示されている。

鈴木は現在最も精力的に活動しているアーティストの一人かもしれない。今回の『日本列島のベンチ』は、日本列島と同じ方位にベンチを設置することで、そこから離れた場所や大地とのつながりを身体で感じられる

3. ポストコロナのアートを考える

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『HAKONIWA』(Photo:Keisuke Tanigawa)

渋谷ヒカリエのクリエーティブスペース8で開催中のdaisy* / 稲垣匡人による展示がおすすめだ。『HAKONIWA』は、カメラで顔を取り込むとゲームの中のキャラクターとして画面の中に入れるが、そこでゲームらしい出来事は特に何も起こらない。それによってゲームと現実の境界を問い直そうと試みる。

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『SHOWDOWN X』(Photo: Keisuke Tanigawa)

『SHOWDOWN X』は同じく画面の中に入って、車を破壊したりドラゴンボールの元気玉のような技を繰り出せるだけでなく、二子玉川蔦屋家電+で展示される同じ作品と接続され、両会場の来場者が同じバーチャル空間上で互いを見たり、つながることも可能。海外との接続を当初は考えていたという。

稲垣は「デジタルによる作品そのものが価値を持ち始めるのではないか」とする一方で、最終的には物理的な存在に戻ってくるのだから、そのバランスも大切」と話す。

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『Ancient Aquarium 8K』(Photo:Keisuke Tanigawa)

コロナ禍でリアルの世界においてオンライン会議など急速にサイバーが存在感を増し始め、極端な意見も多くなる中で、こうしたバランスのとれた見方のできる作り手が両者の在り方を模索しているのは幸運なことかもしれない。

4. 気鋭の日本画とファッションのコラボレーションに見とれる

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村上里沙と新作『清・優・麗』(Photo:Keisuke Tanigawa)

トリーバーチ銀座本店では、日本美術院院友の村上里沙が新作を中心に5点を展示中。村上は水面や水面に映える水草などに関心を持って制作してきた。今回は新作2点を含む5点を展示、このコラボレーションに際して描いたという『清・優・麗』は、トリーバーチの清い、優しい、華やかというさまざまなトリーバーチの女性像にちなんでいる。この作品は3点に分かれており、同じ場所を描いているようで、実際には背景や色彩などの異なる精緻な絵画空間を構成している。

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今回の展示に合わせて村上が描いた新作(Photo:Keisuke Tanigawa)

タイトルや異なるイメージの女性という視点は近代洋画の代表的な画家、黒田清輝『智・感・情』を思い起こさせるが、異なる世界の併存は四季花鳥図のように一つの画面に四季を盛り込む伝統的な日本美術の手法を連想させる。

リフレクションというテーマは洋の東西を問わず普遍的であるが、それでもやはり、この画家は日本画の確固たる系譜に連なっているのだ。

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大竹寛子の新作(Photo:Keisuke Tanigawa)
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Photo: Keisuke Tanigawa

サルヴァトーレ・フェラガモ銀座本店は店舗外のディスプレイで、大竹寛子の作品とコラボレーションしている。大竹は「自然の摂理である循環」をテーマに、フェラガモの自然をモチーフにした衣装にインスパイアされた作品を展示。また、バッグの色彩に合わせて美しい色遣いの抽象画も目にすることができる。

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大竹の抽象画と合わせてのディスプレイ展示(Photo:Keisuke Tanigawa)

5. 古典と最先端を体験する

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コムデギャルソン アーカイブコレクション / 川久保 玲

六本木では、東京ミッドタウン1階で開催中の『コムデギャルソン アーカイブコレクション/川久保玲』で、もはやデザインの歴史の一部となった感もある川久保の手がけた内装の中で、コムデギャルソンのアーカイブ展示を堪能できる。10月11日にオープンしたばかりのANB Tokyoも、現在最も新しいキュレーションの展示を体験できる見逃せないスポットだ。

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ENCOUNTERS at ANB TOKYO(撮影:山中慎太郎(Qsyum!))

ほかにも外苑前や代官山、さらにはオンラインなどで数多くの展示が開催されている。詳細は公式サイトを参照してほしい。11月3日(火・祝)までの開催。

DESIGNART TOKYO 2020の詳しい情報はこちら

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