東京のクラブ「青山蜂」が摘発、風営法の改正後初。関係者に衝撃

テキスト:
Hiroyuki Sumi
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警視庁は1月29日、ナイトクラブを無許可で営業したとして、風営法違反(特定遊興飲食店の無許可営業)の疑いで、渋谷の「青山蜂」の経営者ら3人を逮捕した、と発表した。朝日新聞などの報道によると、経営者らは「歴史があり、スタイルを守りたかった」と話しているという。風営法改正でナイトカルチャー再興などが期待されていた中での摘発に、関係者の間に衝撃が広まっている。

2016年の風営法改正で、店内の明るさなど一定の条件を満たしたクラブは「特定遊興飲食店」として、一部エリアで、許可制で営業できるようになっていた。青山蜂はエリア外だった。

逮捕容疑は、今年1月28日、渋谷の店舗内で、特定遊興飲食の許可なく、不特定の飲食客に対し、深夜、酒類を提供し、音楽や照明の演出などを行い、ダンスさせるなどした疑い。報道によると、3人とも容疑を認め、「昔からここでやっていた。歴史があり、スタイルを守りたかった」などと話しているという。

青山蜂は、世界的DJケン・イシイが通っていたことなどでも知られる。歴史あるクラブが摘発されたことで、関係者には大きな動揺が広がった。クラブ事業者やDJらでつくる「クラブとクラブカルチャーを守る会」は声明を発表。「特定遊興飲食店営業の許可を取得し、地域社会の一員として、住民の方々と対話の機会を得ながら、営業を行っていくことが非常に大切」としながらも、「一方で、営業所設置許容地域が街の実情に見合わない狭い範囲で指定されてしまっているという現実もある。特定遊興飲食店営業の許可を得たくても取得できない店舗も出てきていると聞く。多くの方々のご意見を伺いながら、ナイトカルチャー、クラブカルチャーの発展のためにどのようにすべきかを模索し続けていきたい」とした。

規制緩和に向けて動き出した矢先の摘発

風営法をめぐっては、5年ほど前、関西で歴史あるクラブの摘発が相次いだことから、改正に至った。店内の明るさなど一定の条件を満たしたクラブは、一部エリアで、許可を得れば営業できるようになった。だが現状では、対象地域外にあるクラブは、認可を求めることすらできない仕組みになっているため、自民党の議員連盟が昨年、対象地域の拡大を目指すことなどを盛り込んだ政策提言を国に提出。今回の摘発はその矢先の出来事だった。

議連の有識者会議座長で弁護士の齋藤貴弘は、「営業エリアの拡大に関して、警察とも議連とも前向きな議論ができていた。今年は(対象エリアが)広がっていくだろうというタイミングでの摘発で、これまでの議論がひっくり返ったような感じがする」と驚きの様子。無許可で営業せざるを得ないクラブは依然として多いが、齋藤は「そこで働いている人たちもたくさんおり、家族もいる。許可がないからすぐ閉店する、というわけにはいかない」と強調した。

同時に、事業者側の自発的な行動の必要も指摘し、「国としても、(事業者側が)どこに営業可能エリアを広げたいのか知りたがっている。そこに対する事業者側のコミットが少なかったかもしれない。今回の摘発で、事業者側も自発的に動く必要が出てくる」と話した。

海外では…

海外では、伝統あるクラブを守るための様々な取り組みがされている。ロンドンでは、伝説的クラブ「Fabric」が、2016年9月に当局によりライセンスが剥奪されてしまったが、2週間以内に営業を再開。今では、当局がナイトライフ活性化を担う「ナイトシーザー(夜の市長)」のポストを新設し、クラブの防音設備費用を負担するなどしている。ベルリンでは、世界的テクノクラブ「Berghain」を文化施設に認定、付加価値税の税率を軽減している。

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