日本橋の地下に現れた劇場型ラウンジ水戯庵をレポート

テキスト:
Mayumi Koyama
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江戸最大の街といえば日本橋だ。五街道の起点であり、商人たちが集まる経済の中心地だった。また、昭和に入って築地に移転するまで、東京の魚市場は日本橋にあったため、江戸前鮨や天ぷらなど、江戸の食文化が開花した地でもあり、今でも老舗料亭などが多く残る。

現在も金融街であり、三越をはじめとした老舗デパートや大型商業施設『COREDO室町』がそびえ立ち、賑わいを見せている。そんな日本橋の地下に、劇場型レストラン&ラウンジ水戯庵(すいぎあん)が2018年3月20日(火)にオープン。タイムアウト東京はいち早く同店を堪能してきた。

オープンしたのは福徳の森と呼ばれる一角の地下。地上には、日本橋の商業を見守ってきた氏神を祭る福徳神社が建つ

劇場型、というわけで観劇をしながら飲食が楽しめる仕組みになっているのだが、水戯庵で楽しめるのは、本物の伝統芸能と日本の食文化。店内中央には、江戸時代に狩野派が描いた鏡板が象徴的な三間四方(約5.4メートル四方)の本格的な舞台が鎮座しており、日替わりで、能や狂言、日本舞踊などのステージが披露される。タイムアウト東京が訪れた日には能の観世流、観世喜之・喜正の舞台だった。ステージとの距離が近いので、パフォーマンスが始まると自然と姿勢が正されるような迫力と厳かさが味わえる。

空間を贅沢に使った、ゆったりとくつろげる店内。「日本を嗜(たしな)み愉(たの)しむ」を基本コンセプトとし、日本の巧緻を極めた伝統工芸の要素を取り入れた室礼だ
優美で艶(あで)やかな能装束をまとっての舞は、息を飲む美しさ

「能楽や歌舞伎の舞台をフルで見るのか」という疑問が上がるだろうが、そうではない。それぞれの舞台の一番の見せ場となる箇所を20分前後にまとめて、解説付きで演じてくれるという美味しいところ取りなシステム。訪日外国人はもちろんだが、伝統芸能を初めて見る人には、上演時間が数時間に及ぶ完全版を観に行く前に、見せ場を体験し、判断できるというメリットがある。

能面の解説

ランチとディナータイムには、200年以上の歴史がある江戸前寿司処のすし栄によるコース料理を味わえ、ティータイムでは老舗の茶や京菓子などが楽しめる。

江戸前、大阪、茶巾と3種の寿司が堪能できるディナーだった

オーナーは、東京の夏の風物詩ともなりつつある、大量の金魚が美しく展示されるアートアクアリウムをてがけたアーティスト、木村英智。日本文化と真剣に向き合う中で、伝統工芸や伝統産業、伝統芸能の魅力を新たな手法で表現したいという想いが強く芽生えてきたゆえの同プロジェクトだそう。

国内外問わず、多くの人に日本古来の芸術、芸能、食を発信する新しいスポットになりそうだ。

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