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コロナ禍で聞こえてきた外国人の声

ともに安全に暮らせる新しい日常を求めて

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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タイムアウト東京では、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックに対する人々の状況や意見を知るため、読者アンケート『#StayHome Survey(ステイホーム・サーベイ)』(以下、サーベイ)を行った。期間は緊急事態宣言下の2020年4月17日〜5月12日で、「健康」「安全」「ライフスタイル」「旅行」と四つのカテゴリー別に実施。アンケートには合計約400人からの回答があり、コロナ禍に人々がどのように過ごしているかリアルな声が聞こえてきた。

コロナ以前の日常が戻ってくるかどうかは誰にも分からないが、このサーベイを読み解くことで、「新しい日常」に何が必要とされるのかを考える一助となれば幸いだ。

ステイホーム・サーベイから見えた6のこと

1. 迅速で透明性が高い多言語情報が不足している

調査結果から、非常事態における迅速で透明性の高い多言語情報が不足しているということが明らかになった。「新型コロナウイルスに関する日本のメディアの報道は十分に有益であるか」という質問に読者の50%が「情報不足」と回答していることから、東京に在住、もしくは滞在している人にとって、必要な情報にアクセスしづらい状況あったことが推察できる。

このことから、今回に限らず、非常事態や政府の重要な発表に対して、在住外国人への情報伝達の遅れが生じる可能性がある。

「今、日本政府に要望はありますか」という質問には、「新型コロナウイルスの検査を適切に行ってほしい。毎日行われるテストの数は限られている」「検査数の向上と、英語を話すものが利用できる設備を増やすべき、英語でのより多くの情報提供が必要だ」などの意見が挙がった。

 2. 日本の医療に関する不安

日本の医療に関する不安の声も多く聞かれた。「日本で英語の医療サポートはすぐに受けられると思うか」という質問に、約50%が「欠けている」または「ほとんど利用できない」と回答。「PCR検査を受ける方法を知っているか」には、78%が「いいえ」と回答している。

先ほどの情報伝達の問題にも通じるが、医療に関する情報がしっかりと在住の外国人に届いていたとは言えない状況だったようだ。海外で遭遇する今回のような災禍では、言語も通じづらく、外国人は日本人以上に不安を抱えていたと考えられる。緊急時はもちろんだが、普段から医療等に関する情報を確実に伝達できる環境の整備が必要だ。

3. 情報不足と医療への不安が精神的ストレスをもたらしたかもしれない

「健康と安全」に関する調査を行ったのは、42127日。47日の緊急事態宣言からおよそ2週間後である。この時「現在の精神、感情的な健康状態はどうですか」という質問に、35%が「不満である」と回答した。

自宅隔離で職場や学校の仲間らとの交流が絶たれるなか、家族や友人も海外という在住の外国人にとって、この期間はさまざまな不安を抱えていたのではないだろうか。普段から、職場だけでなく、地域コミュニティや趣味の集まりなどで、外国人との繋がりを作り、緊急時には積極的に声をかけるなどしていく必要がありそうだ。

4. 状況の改善に対して楽観的な見解も多かった

4月当初の「状況はいつ改善すると思いますか」という質問に対して、「7月末以降、あるいは10月末には状況が改善されるのではないか」という前向きな意見が半数を占めた。非常事態宣言が解除され、徐々に日常を取り戻しつつあるなか、前向きな気持ちで過ごす人は増えているのではないだろうか。残念ながら、コロナ以前のように自由に海外との行き来ができる状況ではないが。

5. 旅行を恋しく思う人が多く、日本へは年末に訪れたい意向も

コロナ禍によって旅行ができなくなったことは多くの人にとって相当ショックだったようだ。「今、一番できなくて残念なことは何ですか」という問いに対し、最も多い割合を占めたのは「旅行」(30%)という回答であった。

日本への旅行意向は高く、年内に日本を訪れたいと計画している人は40%以上。国際旅行は、本当に訪れたい場所へ、そこを愛してやまない人たちから再開されると言われているが、調査からも根強いファンはどんな状況でも日本への再訪問を望んでいることが分かる。

6. 「新しい価値」の提供や「ポストコロナの旅」を考える必要があるかもしれない

ポストコロナの観光には衛生面での安全確保という新たなニーズも出てきており、インバウンドの復活にはそうした対策とメッセージが欠かせなくなる。

特にポイントとなるのはソーシャルディスタンシングへの対応だ。「ポストコロナの旅行では何を優先しますか」という質問には、36%の人が「混雑を避ける」と回答。通勤ラッシュや人気観光地の混雑など、混み合った場所に行くことが日常となっていた日本だが、これまでの状況を継続すれば、精神的ストレスを生み、結果、ツーリストを遠ざけてしまいかねない。

新たなトレンドとしては、バーチャル旅行への関心が高まっている。バーチャル旅行に関しては、約60%の人が興味があると回答。ジャンルとしては、「自然と屋外」(26%)、「街の眺望」(18%)、「芸術と文化の名所」と「史跡」が(16%)の順に人気が高かった。

旅行はリアルに体験してこそ価値があるものだと、バーチャル旅行の可能性を否定する向きもあるが、むしろ、移動が制限されている今だからこそ、積極的に活用し、実際の観光体験の魅力を伝え、さらには、訪問したいという気持ちを高めていく必要がある。もちろん、バーチャル旅行でしかできない体験も検討していかなければならないが。

タイムアウト東京では、以前も在住外国人に対する調査を行い、8割近くの回答者が「日本で暮らす上で不便や課題を感じている」との回答をしていた。残念ながらコロナ禍の生活で、課題はより鮮明になったのではないだろうか。

イタリアなどと並び高齢化世界ランキングのトップである日本にとって、外国人人材の活躍できる社会の実現は、緊急の課題だ。しかしサーベイの結果を通じて見えてきたのは、行政サービスや医療、日常生活における必要な情報が少ない、届いていない、それを手に入れる術がわからない、などである。このような情報共有の多言語化の遅れは、改善すべき大きな課題であるとあらためて認識したい。

本来であれば、日本にとって最大のチャンスとなるはずだった2020年。誰もが予想していなかった形で早くも半年が過ぎようとしている。2020年の後半に向けては、在住の外国人とともに安心して暮らせる環境整備やポストコロナの新しい観光を模索していく時期にしていきたい。

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