Photo of the Day - 鉄工島フェス 2019

テキスト:
Hisato Hayashi
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2019年11月3日、第3回目の『鉄工島フェス』が無事に開催を終えた。鉄工所などの工場が並ぶ京浜島を会場に、あちこちで音楽ライブやアート展示が催され、人けのない休日の工業地域に活気と彩りをもたらす1日となった。天候は途中で雨がぱらつく場面も見られたが盛り上がりは止まず。会場作りにおいてはアートと音楽、双方のファンが楽しみながら新たな文化に触れるきっかけをつないだことも期待される。

ここでは、当日の様子を写真とともに振り返る。『鉄工島フェス』特有の緩やかな熱気を感じてもらいたい。

∈Y∋『レコーン』

まずはアート作品やパフォーマンスについて紹介しよう。

ボアダムスの中心メンバーとして実験的なパフォーマンスを展開する∈Y∋は、ワンフロアを使ったサウンドインスタレーションを発表。あらゆる角度から聞こえる音や、ドローイングなどの集大成に熱心なファンも足を運んでいた。

西野達『鉄工島の夜の主たち』

 会場で最大の規模となった西野達のモニュメントは、京浜島の環境を生かし、工場の技術者たちの協力をアートへと昇華した作品。人が住めない京浜島の「夜の主役たち」をテーマに、トラックや街灯、事務所の椅子やソファなどが積み上げられている。

 鯰(なまず)『Chill House』

 会場内の展示やパフォーマンスは、ユーモアなセンスと独特の「ゆるさ」を持つ作品が多く、アート初心者にも入りやすい間口が広がっていたように思う。

なかでも3人組のアートユニット鯰の作品は、リサイクルショップで収集した物やゴミを利用し、会場に作った「部屋」でメンバー達が飲み会を行うというインスタレーション。部屋の激しい揺れや、屋根から流れ落ちる水から地震などの災害体験を想起させるものの、中で行われる飲み会は日常の延長そのもの。日常と非日常的体験の差異をユニークな切り口から提示していた。

ケケノコ族

 1980年代に社会現象となった「竹の子族」の文化を引用し、ファッションやパフォーマンスで活動に注目を集めるケケノコ族。会場では神出鬼没に現れ、『ジンギスカン』や『ライディーン/YMO』『YOUNG MAN(Y.M.C.A)/西城秀樹』『Shangri-la/電気グルーヴ』『Flamingo/米津玄師』『夜の踊り子/サカナクション』などのレパートリーを惜しみなく披露してくれた。

チョロちゃん(推定:三毛鯖♀)

 鉄工所の一角をアートスペースとして運営するバックルコーボー(BUCKLE KÔBÔ)の看板猫、チョロちゃんもお出迎え。人懐っこく愛らしいチョロちゃんに、来場客もメロメロな様子。 

 SIDE CORE『LEGAL SHUTTER TOKYO』

 ストリートアートと工場の相性の良さを目撃できるSIDE COREの作品。ペイントされたシャッターは、フェス終了後も引き続き残される。

フェスフード 

EL CAMION

フェスの楽しみの一つといえばフード。今年は入場無料のフードエリアの出店が12店舗に増え、クラフトビールや本格コーヒー、ケバブやピザ、カレーなどのエスニック料理の屋台が並んだ。EL CAMIONの4種飲み比べセットは、カボチャとスパイスの風味がきいた期間限定ビールがいいあんばいだ。 

キッチントラッカー/ANADOLU☆KEBABU 

 さわひらき『Platter/Memoria』

 2階から全体を見下ろせる北嶋製作所を会場に、映像作品を用いたインスタレーション作品。記憶の中にある風景、白昼夢のようなアニメーションが、京浜島周辺の景色とも重なるノスタルジーを喚起させた。

快快HANEDABUSHI

劇団快快も同じく北嶋製作所を舞台に、今回のために新しく作ったパフォーマンスを企画した。社会性とポップで柔らかなユーモアを併せ持つメッセージはそのままに、工場の技術者とも協力し、漁師の囃子歌(はやしうた)である羽田節をテーマにした『HANEDABUSHI』を披露。  

 ライブ会場は、須田鉄工所、清新工業所、ゑびす興運、ムソー工業の4工場・全5ステージ。ガールズラッパーユニットのchelmicoや、ゲスの極み乙女メンバーの休日課長らから成る3人組ユニットDADARAY、キノコ帝国と自身のソロ活動も積極的に行う佐藤千亜妃など、現在の音楽シーンにおいて実力をはせるアーティストがそろい、それぞれの音を響かせていた。

さかいゆう

軽やかな歌声が人気のさかいゆう。バンドセットで登場しセッションを披露。

鉄工島FES 2019 ライブ会場風景

フラッグシップヴェニューとして位置付ける須田鉄工所にて。終演を迎え、会場を包む熱気はこの日最大の盛り上がりとなった。

 『鉄工島フェス』は今後の開催も予定している。気になっている人は、このレポートを参考に来年ぜひ足を運んでみてほしい。

Photo:Yuki Nakamura

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