1. Photo: N_Fujita/Shutterstock
    Photo: N_Fujita/Shutterstock George Rickey 'Three Squares Vertical Diagonal' (1972-82)
  2. Photo: Sucha Kittiwararat/Dreamstime
    Photo: Sucha Kittiwararat/Dreamstime

直島で過ごすアートな休日

日本を代表するアートの島で訪れるべきランドマークや、滞在先を紹介

Emma Steen
テキスト:
Emma Steen
翻訳:
Hanako Suga
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タイムアウト東京 > トラベル > 直島で過ごすアートな休日

世界中から「アートの島」として注目される直島。およそ30年前に香川県の観光振興を目的に設立された「ベネッセアートサイト直島」は、犬島、男木島などいくつかの島にまたがり、それぞれの島には、インスタレーションやギャラリーが点在している。 直島に初めてアート作品が常設されたのは1989年のこと。その後は安藤忠雄による建築物や、草間彌生の『黄色いカボチャ』などが続々と誕生し、今では島全体がキャンバスのようだ。

2022年は3年に1度の『瀬戸内国際芸術祭2022』も開催中。ここでは滞在しながらアートに触れられるスポットやするべきこと、宿泊施設を紹介しよう。

宮浦港周辺
Photo: Rayints/Shutterstock

宮浦港周辺

宮浦港は直島に2つある船の入港地の1つ。フェリーで到着した観光客の目にまず留まるのが、乗り場の脇にある草間彌生の『赤かぼちゃ』だ。うっかりかぼちゃだけで満足してしまいそうだが、宮浦港周辺には藤本壮介の『直島パヴィリオン』もある。

この作品は約250枚のステンレスメッシュで組み立てられたもので、彫刻の中に入って歩き回ることが可能だ。夜間にライトアップされると美しい骨組みが立体的に浮かび上がり、とても美しい。

藤本の彫刻から歩いて3分ほどのところにあるのが、大竹伸朗が手がけた『I♥湯』。カラフルなタイルとヤシの木が目印のこのトロピカルな建築物はアート作品でもあり、銭湯としての機能も果たしている。外観だけでなく建物の内装もポップでまるで美術館のよう。浴槽のデザイン、風呂絵、モザイク画なども全て大竹が手がけた。

銭湯の営業時間中(13〜21時)は撮影禁止だが、入浴客以外でも見学できるよう内部を公開している。

1992年にオープンのベネッセハウス ミュージアムは、「自然・建築・アートの共生」をコンセプトとした、美術館とホテルが一体になった施設。直島が「アートの島」として発展するきっかけになった場所でもある。瀬戸内海を望む高台に建つ同施設の設計を担当したのは、安藤忠雄だ。

コンクリートの廊下を歩いていると、壁の隙間から小さな草が生えているのに気づくだろう。この緑の芽は、実はアートインスタレーションの一部。本物のような精巧な植物の彫刻で知られる須田悦弘による作品だ。

施設内にも個性的な作品が展示されている。中でも、杉本博司と安藤建築によるコンクリートの空間に誕生した『光の棺』や、壁一面に広がるテレジータ・フェルナンデスの『ブラインド・ブルー・ランドスケープ』など、ベネッセの豊富なプライベートコレクションの数々は、見応えがある。

宿泊をしなくても館内のアート作品の鑑賞は可能だ。1,050円(15歳以下は無料)で、屋内外のインスタレーションや絵画の数々を見て回ることができる。

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直島でのアート散策のハイライトは、7つの旧邸宅を現代アートのギャラリーとしてリノベーションした『家プロジェクト』だろう。建築物は島のあちこちに点在しており、全てを巡るには1日かかる。

見どころは、200年ほど経過した家屋の修復監修を山本忠司が担当した『角屋』や、歯科医院兼住居だった建物を大竹伸朗が作品化した『はいしゃ』、江戸時代からある神社を杉本博司が改築した『護王神社』など。そのほか、内藤礼やジェームズ・タレルなども同プロジェクトに参加しており、各作品にはその場所の個性や魅力が詰まっている。

チケットは島の案内所、本村ラウンジ&アーカイブで購入することができる。完全予約制の『きんざ』を除く6軒を鑑賞できる共通チケットは1,050円だ。

『きんざ』の予約はこちらから

地中美術館
Photo: Emma Steen

地中美術館

安藤忠雄が設計した地中美術館は、「自然と人間との関係を考える場所」がテーマのミュージアム。建物の大半が地下に埋設されたユニークな設計が特徴で、その構造は収蔵する美術品と同様に息をのむような美しさを持つ。幾何学的なスリットと自然光を生かした開放的な天井が特徴で、装飾などにこだわらずコンクリートなどの素材そのものを採用するブルータリズム建築となっている。

ウォルター・デ・マリアの『タイム/タイムレス/ノー・タイム』や、ジェームズ・タレルの『オープン・フィールド』などの作品が有名だが、クロード・モネの『睡蓮』を展示するために特別に設計された『クロード・モネの部屋』は、数あるアート空間の中でも最も魅力的な展示スペースの一つといえる。

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韓国人アーティスト李禹煥(リ・ウファン)と安藤忠雄のコラボレーションによる、型破りな美術館。「もの派」を主導したことで知られる李は、東アジアと西洋の概念を融合させた透明感と静寂を表現する作品で有名だ。

地形に合わせて設計された館内には、1970年代以降にが制作した絵画や彫刻が展示されている。ミニマリズムを愛し、石やコンクリートなどの素材を用いることで知られる安藤と、李のビジョンの調和が表現された、直島のランドマークの一つだ。

3年ごとに瀬戸内海の島々を舞台にした『瀬戸内国際芸術祭2022』が、開催されている。常設展示のほかにも1シーズン限りの企画展も開催され、33の国と地域から184組のアーティストによる214点の作品が集結する。

アゼルバイジャン出身のアーティストで、カーペットを再構築した斬新な作品で知られるファイグ・アフメッドや、故郷カンボジアで集めた自然素材を用いて抽象的な立体造形を制作するソピアップ・ピッチなど、海外からの注目アーティストたちも多数参加。

国内からは青木野枝南条嘉毅歴史的な伝統芸能を踏まえつつ現代的な歌舞伎を上演する、木ノ下歌舞伎も登場する。

会期は前回の2019年に引き続き、春会期2022年4月14日(木)〜5月18日(水)、夏会期8月5日(金)〜9月4日(日)、冬会期9月29日(木)〜11月6日(日)の計105日間だ。

会場は直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、 沙弥島(春会期)、本島(秋会期)、高見島(秋会期)、粟島(秋会期)、 伊吹島(秋会期)、高松港周辺、宇野港周辺。基本の移動が船となるため、時間に余裕を持って複数回訪れるのもいいだろう。

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宿泊施設
Photo: A&C Ltd

宿泊施設

美術館とホテルを兼ねたベネッセハウスでの滞在を目的に、島を訪れる人も多いはずだ。小さな直島の宿泊施設には限りがあるが、予算や目的に合わせた施設もあるので安心してほしい。

低予算で宿泊したいバックパッカーには、築120年の日本家屋をリノベーションした島小屋がおすすめ。室内でテントを張るユニークなゲストハウスで、低予算での宿泊が可能だ。ブックカフェとしても運営されており、日中は地元の人がのんびりと過ごしている。

中級クラスのホテルを探している場合は、2つ星のフランコイルバトンワークスで休日を過ごすといいだろう。フランコイルはカフェとしても営業しており、自家製のフレンチトーストと淹れたてのスペシャルティコーヒーを味わうことができる。

バトンワークスはスタイリッシュなシャレースタイルのアパートメントホテル。宿泊客用に無料レンタルできる電動自転車が用意されているのもうれしい。曲がりくねった坂道の多い直島の観光には、電動自転車は必須だ。

直島での時間を贅沢に過ごしたい、という人は2022年4月にオープンしたばかりの直島旅館 ろ霞での滞在はいかがだろうか。日本旅館とモダンラグジュアリーが融合した館内には、気鋭アーティストの作品が展示されている。瀬戸内海の海と山の幸をふんだんに使った食事にも注目だ。

交通手段
Photo: Akio Miki JP/Shutterstock

交通手段

東京から直島へのアクセスは少し手間がかかるが、その分冒険心をくすぐる旅になるはずだ。まずは飛行機で高松市へ向かおう。高松港から直島へ直行する四国汽船のフェリーが出ている。

また、東海道山陽新幹線の博多行きに乗車し、岡山県の宇野駅に向かう方法もある。宇野港から直島までフェリーが出ており、乗船時間は20分ほど。

島々の間を運行する船の数は1日数本なので、フェリーの時刻表を確認しながら移動した方がいいだろう。

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