丸の内TOEI
Photo: Kisa Toyoshima | スクリーン1
Photo: Kisa Toyoshima

東京アーカイブ:第4回 丸の内 TOEI

65年間にわたり鑑賞文化を盛り上げてきた映画館

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Photos:Kisa Toyoshima

惜しまれながらもなくなっていく東京の名所を写真で記録する「東京アーカイブ」。第4回は、1960年に開館した、東映最後の直営劇場「丸の内 TOEI」を紹介する。

戦後日本映画の黄金時代が到来した1950年代、各映画会社は東京の一等地に自社直営の劇場を構えていた。その中で、同業他社に肩を並べるため、東映にとっても都心に「フラッグシップ劇場」を持つことが急務だった。

1960年、東映は本社オフィスと、直営劇場「丸の内東映」が入る複合施設「東映会館」を、西銀座通り(外堀通り)に誕生させた。これは映画館数が過去最高を記録した1960年、そして家庭にテレビが本格的に普及する直前のことで、映画館が、多くの人々に中心的な娯楽として親しまれていた時代である。

開館当初、同館は地上1階に東映作品専門の劇場「丸の内東映」、地下1階に洋画封切館「丸の内東映パラス」を備える体制で運営されていた。1989年、丸の内東映パラスは「丸の内シャンゼリゼ」に改称。その後、2004年10月に全館の名称が現行のものに統一され、以降は2スクリーン体制で上映を続けている。

同館の大きな特徴は、劇場と呼ぶにふさわしい広々とした空間設計にある。特に「スクリーン①」には2階席が設けられており、天井の高さはビルの4階分に相当。そのスケール感は劇場空間ならではのダイナミズムにあふれている。

こけら落としは、歌舞伎役者の二代目大川橋蔵が主演の、沢島忠が監督した作品『海賊八幡船』。以降、同館では東映作品の上映やイベントにとどまらず、北大路欣也や吉永小百合、役所広司、舘ひろしといった名優たちの舞台あいさつも数多く行われてきた。観客にとってはもちろん、俳優陣にとっても思い入れの深い劇場だったことは間違いないだろう。

この65年間で、映画の上映方法や鑑賞の仕方は大きく変化した。35ミリフィルムの映写機による上映から、シネマコンプレックスが台頭し、デジタルシネマ映写機へと移り変わるまで、立ち見で鑑賞するのも当たり前の時代もあった。

丸の内 TOEIの閉館を機に、スクリーンや緞帳(どんちょう)、座席に使われている生地などをクラウドファンディングの返礼品としてアップサイクルし、日常使いできるアイテムへと生まれ変わらせる。歴史が詰まったどんなアイテムがあるかは公式ウェブサイトでチェックしてほしい。なお、クラウドファンディングは、2025年7月31日(木)まで実施中だ。

閉館を目前に控えた現在、フィナーレを飾る特別上映企画「さよなら 丸の内 TOEI」が開催中。東映がこれまでに配給してきた名作から話題作まで、同社の鮮やかなエンターテインメントの歴史を象徴する作品が、スクリーンに再びよみがえる。

2025年7月27日(日)の映画館の営業終了をもって、丸の内 TOEIおよび本社ビル「東映会館」はその役目を終える。東映本社も移転した跡地は、東映がホテルや商業施設などを含む複合施設として再開発する予定だ。

本記事では、同館支配人の小林恵司と、東映広報の加藤菜々子協力の下、閉館を約1カ月後に控えた6月20日に収めた丸の内 TOEIの姿をアーカイブする。

丸の内TOEI
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