齋藤貴弘
齋藤貴弘

ナイトライフと文化産業の新しい可能性

これまでの前提が崩れた今こそ、時代に合ったルールメイキングを

作成者: Time Out Tokyo Editors
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タイムアウト東京 >ポストコロナ、新しい日常。> インタビュー:齋藤貴弘

テキスト:庄司里紗

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビューシリーズを行っている。

第12弾は、風営法改正やナイトタイムエコノミー推進におけるルールメイクを主導してきた弁護士の齋藤貴弘だ。国内外の音楽シーンやカルチャーに精通する齋藤に、日本のナイトタイムエコノミーや文化産業が直面する現状、そして、そこから見える日本の新しい文化産業の可能性を聞いた。

コロナ禍が浮き彫りにしたナイトタイムの価値と魅力

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本のナイトライフ産業は深刻な状況に置かれています。2016年の風営法改正を経て、観光庁はナイトタイムエコノミーをインバウンド観光施策の重要な柱の一つと位置付け、さまざまな振興施策を打ち出していました。

オリンピックに向けた大規模都市計画には、ナイトクラブの夜間活用といったプランが組み込まれたほか、宿泊を誘引し、飲食などの消費につながる夜間観光は、観光消費拡大の起爆剤として地方創生の切り札とさえいわれるようになっていました。

しかしながら、コロナ禍で状況は一変。ライブハウスやナイトクラブを含む「夜の街」は、感染の温床になる3密(密閉・密集・密接)の典型であると連日のように名指しで報道され、観光も人の移動により感染を拡大する危険なものとして大きく規制されました。官民一体となって大きな盛り上がりを見せていたナイトタイムエコノミーや観光関連産業は、感染を広めるリスク産業といわれるようになり、産業自体の存亡に関わる壊滅的な打撃を受けている状況です。

このように約束された右肩上がりの未来は一瞬で消え去り、さまざまな前提が失われました。しかしながら、夜の街が生み出してきた文化までもが失われたわけではありません。むしろ、その価値や魅力は以前にも増して高まっているように思います。

例えば、音楽シーンについて言えば、これまでライブハウスやクラブといったヴェニューを中心に夜の街を盛り上げてきましたが、コロナ禍によってライブハウスの営業が困難な状況でも、音楽は別の表現場所を求め続け、止まることなく、むしろより活発に音楽表現がなされるようになりました。

ライブエンターテインメントは2月下旬から営業自粛せざるを得ない状況に置かれていますが、他方でオンラインにシフトし、新たな表現手法を広げています。

営業停止中の箱を使って、無観客のライブやDJセットをオンライン上で配信するケースも爆発的に増加しました。人と会うこともできず自宅で待機しなければならなかった時間に、これまで以上に多くの音楽を聴き、感動を得て、救われた人も多いのではないでしょうか。

オンラインシフトの波が音楽業界にもたらす新しい可能性

オンラインはライブコンテンツに距離と時間のバリアフリーをもたらします。遠方に住んでいる、あるいは仕事や家庭が忙しくなりライブを卒業してしまったという音楽ファンのライブへのアクセシビリティを高めることができるのがオンラインです。

もちろん、限定された場所や時間ゆえの貴重な体験という側面がライブにはありますが、音楽に触れることができる選択枝が多様になれば、これまで取りこぼしていたファン層を広げていく契機となり得ます。

オンラインはアーティストにとっても表現の選択肢を増やしていきます。コロナ禍の前、ライブ中心に活動していたある若手バンドのメンバーと話したのですが、彼は「小規模ライブハウスからスタートして徐々にファンを増やし、会場規模を大きくして成功していくことに対してある種のマンネリや限界を感じている」と言っていました。

ライブ活動を休止し、楽曲制作に力点を置き、インターネットを使った海外への発信にシフトしていた彼の音楽活動は、コロナ禍による影響を全く受けていませんし、むしろオンラインプラットフォームが整備されていくなかで、コロナ前よりも活動の可能性は広がっています。

このようなオンラインシフトの流れは、次々と配信プラットフォーマーを生み出しています。スムーズな配信環境を整えるのみならず、課金やドネーション、ファンとの交流やアーティストグッズのeコマースなど、収益性を高めるための様々なサービスを付加し、サービスの優位性を競っています。各社のサービス実装は、平時ではありえないスピードです。

さらに楽曲のオンライン利用の手続きも整備されつつあります。CDやレコードといった原盤を使った音楽配信には、レコード会社と実演家の個別の許諾が必要となりますが、その場の雰囲気にあわせて臨機応変に選曲するDJプレイなどは個別の許諾を受けることはできません。

そのため、世界的に広く認められているDJ配信は日本では法的にはグレーで、日本の優れた音楽を海外発信するためのボトルネックとなり、長らく課題とされていました。関係者のこれまでの調整を経て、一定の解決に向けて進みつつあるようです。

もちろんライブエンターテインメントも、着々と再開に向けた準備を進めています。オンライン配信とライブ体験は全く別物です。オンライン配信はライブの代替手段には絶対になり得ません。

身体に響く圧倒的な音響体験、照明演出なども含めた総合芸術としての臨場感、会場に充満する熱狂や興奮、これらライブならではの体験は、コロナ以降さらにさらに強く渇望されるようになっています。ライブ業界は、ウイルス専門家と関係を深めながら営業再開に向けたガイドラインを策定し、音楽実演家団体やコンサートプロモーター団体が連携した強力なロビイングによってイベント再開催のための巨額の公的資金を獲得したりもしています。

新しいライブエンターテインメントの場所も今後増えていくでしょう。欧米諸国に比べ、屋外を活用した音楽表現が少ないと感じていたのですが、ルーフトップやオープンテラスの屋外施設、ウォーターフロントや公園の活用が進んでいくと思います。飲食店では歩道利用が特例措置として可能となりましたが、このような取り組みは音楽の分野でも可能性は十分にあると思います。

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ナイトライフ産業と政治行政セクターの関係構築も進む

とはいえ、依然ライブエンターテインメント業界にとって前代未聞の苦しい状況は続いています。とりわけ、高額の賃料を負担し続けているベニューへの公的支援は全くもって足りていないです。ライブハウスは営業を再開したものの、ガイドラインに沿って大幅に客数を減らしていますし、今後は大型換気設備の購入費用なども必要になってくるかもしれません。

雇用調整助成金や持続化給付金、無利子無担保融資などの公的支援は順次拡充されてきていますが、止血ができている状況にあるとは到底言えません。

ライブハウスはこれまで事業者間の組織化が十分なされておらず、被害状況の把握や公的支援の要請がスムーズにできない状況にありました。公的支援が十分でなかった反面、アーティストや強いファンコミュニティに支えられており、クラウドファウンディングによって一定の資金を集めていますが、より持続可能性な体勢を構築するために業界のネットワーク化が進められています。

先日発表した、観光庁と一緒に実施した東京のナイトカルチャーのリサーチ「Creative Footprint」では、文化コンテンツは優れているものの、文化表現を持続可能なものとする公的支援環境、政治行政分野へのアクセシビリティが低いという結論になりました。

このような課題がコロナ禍でまさに顕在化してしまったのですが、政府支援を求めるなかで、文化、エンターテインメントセクターと政治行政セクターとの関係構築も進んでいます。その結果、経産省や文化庁からいまだかつてない規模の巨額な金銭支援策が打ち出されました。壊滅的な状況にあるエンターテインメント、文化を救うための極めて重要な施策です。

必要なのはアーティスト活動を支える持続可能な仕組みづくり

こうした緊急の止血措置に加え、今後必要になっていくのは、アーティストが独立して継続していくための仕組み作りや環境整備でしょう。

例えば、イギリスの著作権管理団体PRS For Musicは、徴収した著作権使用料のうち分配できない金額をPRS Foundationとして基金化し、アーティストや音楽団体支援に充てています。PRS Foundationは、2000年の発足以降、著作権使用料から計3,300万ポンド(43億円以上)の資金を得て、7300以上のプロジェクトに提供してきました。将来にわたる音楽の価値の最大化、持続可能な形で音楽シーンを成長させていくといった事業ポリシーのもと、現在は年間300万ポンド(約4億円)の予算で様々な支援プログラムを実施しています。

支援プログラムには、「音楽家」や「組織」が利用できるオープンな助成金制度のほか、ジェンダーギャップの解消といった特定のニーズに対応して設置されるパートナーシップなども用意されています。支援対象の選定は、業界の専門家により構成される独立した委員会によって行われ、その専門的な知識とネットワークによって、支援プログラムの質の高さと革新性は高く評価されています。

いまだ世界をリードし続けるイギリスの音楽シーンの裏側には、このような仕組みがしっかり機能しています。日本にも同様の仕組みを築くべく、私が代表理事を務めるナイトタイムエコノミー推進協議会は、昨年度より観光庁のナイトタイム事業を支援させていただいています。

私たちはナイトタイムを活用した公募事業に対して、単に助成金を渡すのではなく、まず事業内容を精査し、地域が持つポテンシャルを伸ばし、課題を解決する手法を一緒に検討します。そして、その手法を実施するために予算が必要な場合に、初めて助成金を使ってもらいます。

多くの事業においてボトルネックは予算不足ではありません。逆に予算があると、他事業者に外注してしまい、自分たちのナレッジにすることができず、国の助成金がなくなった途端に事業はストップしてしまいます。お金を渡すのではなく、稼ぐ方法を一緒に考え、そのために必要な範囲でお金を出すというのは先に紹介したPRS Foundationの手法に近いかもしれません。

音楽業界は今、これまで築き上げてきた業界の基本フォーマットが強制的に解体され、非連続なイノベーションの真っただ中に置かれているといえます。 一般的に、それまでの前提を変え、常識や価値観も覆し、質的に転換してしまうのがイノベーションです。コロナ禍は、これまで前提としていたものをわずか数カ月で奪い去りました。

コロナは音楽業界に破壊的なダメージを及ぼし、多くの関係者を大変な状況に追い込んでいます。他方で、今ほど皆が、音楽が持っている価値や大切さ、この価値を持続可能なものにしていくやり方について真剣に考えたことはなかったのかもしれません。

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コロナ禍を「まだ見ぬ未来の風景」を作るチャンスに

音楽の話が続いてしまいましたが、これは音楽やナイトライフに限られません。同じく壊滅的なダメージを受けている外食産業や観光産業なども同じだと思います。

レストランに大切な人と集い飲食をすることの意味とともに、そこで食事をサーブしてくれるスタッフのホスピタリティーや、場を演出してくれるインテリアや調度品、ライティングやBGMの大切さを再確認しました。

観光についても同様です。日常から飛び出し、地域固有の文化や自然、そして人々に触れ、そのような体験から癒し、感動やインスピレーションを得ることがいかに大切だったかを思い知りました。このようなbeforeコロナにあった本質的な価値を大切にしつつも、産業アップデートにつなげていく。そんなイノベーションの真っただ中に置かれている状況はどの産業分野も同じだと思います。

先日ある方とwith、afterコロナの産業推移について話をしていた際、コロナチャンスという言葉が出ました。ここ1、2年したら終わってしまうであろうコロナ期に、これまでの産業をいかに次世代型にアップデートさせるかという意味合いです。

不謹慎だと指摘されるかもしれませんが、その人自身、コロナによって最もダメージを受けた産業分野に人生を捧げ、多くの関係者が被っているダメージは誰よりも理解しています。ダメージが甚大過ぎるからこそ、チャンスにしないといけないという思いが強いのだと思います。

さまざまな前提が失われてしまい、約束された未来はもう存在しないのかもしれません。しかし他方で、それは新しい未来を作っていく環境にいることも意味します。with、afterコロナは、未来の風景が明確に用意されていた時代には見えなかった、誰にもまだ見えていない風景を作り出せる時代と言えるかもしれません。

私は弁護士ですが、法律家の役割も大きく変わってくると思います。これまでは規定のレールに外れないよう、従来のルールを守らせるのが法律家の役割でした。これからは産業構造が大きく変わる。ルールを時代にあわせて変えていく。今法律家に求められているのは、誰もたどり着いたことがない場所に向かうためのレールを敷く手伝いをすることだと感じます。

コロナ禍で、政治行政セクターの方とのやりとりは飛躍的に増えました。前述のCreative Footprintで課題とされた文化と行政の距離感は、急速に縮まっています。まさにルールメイキングの時代だと痛感しているところです。

齋藤貴弘
齋藤貴弘

齋藤貴弘(さいとう・たかひろ)

弁護士。1976年、東京都生まれ。学習院大学法学部卒業。2006年に弁護士登録。2016年、ニューポート法律事務所を開設。近年は風営法改正を主導するほか、ナイトタイムエコノミー議員連盟の民間アドバイザリーボードの座長、夜間の観光資源活性化に関する協議会の委員を務め、各種規制緩和を含むルールメイキングに注力している。

著書に『ルールメイキング ナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論』(齋藤貴弘・著/学芸出版社)。風営法改正を主導した齋藤が、その困難な道のりをまとめた記録。時代にそぐわない日本の法規制をアップデートするプロセスや手法について詳説されている。

ナイトライフをもっと知るなら……

Photo by Dil on Unsplash
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ライブハウス業界団体が感染拡大予防ガイドラインを発表

ニュース 音楽

緊急事態宣言が全面解除された2020年5月25日以降、街の経済活動は徐々に再開されている。東京都が設けていた段階的な休業要請の緩和も、6月12日にカラオケ店やパチンコ店などの遊興施設への要請を解除する第三段階へと移行した。 このステップ3に含まれていなかった「接待を伴う飲食店やライブハウス」といった業種については、6月19日から行うさらなる緩和で要請を解除するという。政府は13日にこれらの業種の営業再開に向けて、感染防止のための注意事項をまとめたガイドラインを公表したが、同日、ライブハウスの業界団体らも、再開に向けた具体的な感染対策のガイドラインを発表した。   LHC   この「ライブホール、ライブハウスにおける新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」は、一般社団法人ライブハウスコミッションとNPO法人 日本ライブハウス協会、飲食を主体とするライブスペース運営協議会、日本音楽会場協会の4団体の連名で発表された。 ガイドラインでは、「ライブホール、ライブハウス等店舗の事業者、店舗にて公演を行う主催者は、店舗の規模や公演の様態を十分に踏まえ、店舗の管理と運営に従事する者、公演を鑑賞等するために店舗に来場する者、出演者及び公演の開催に携わるスタッフへの新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、必要な対策を講じる必要がある」という基本的な考えのもと、店舗事業者と公演主催者の2者に向けて具体的な対策を示している。 店舗事業者については、店舗ごとの構造的、立地的な視点に立った「リスク評価」や「店舗内の各所における対応策」、「従事者に関する感染防止策」「周知・広報」「保健所との関係」、公演主催者については「公演前の対策」「公演当日の対策」「公演後の対策」といった項目に分けて、場面ごとに講じるべき対策の例が挙げられている。 ガイドラインの内容は「今後の対処方針の変更のほか、新型コロナウイルスの感染の動向や専門家の知見、店舗を利用する公演主催者であるイベンター、プロモーター並びに実演家団体等の意見等を踏まえ、必要に応じて適宜かつタイムリーに改訂を行う」とされている。 観客間のソーシャルディスタンスの確保や細かな消毒作業など、対策の実践は店舗と主催者にとって決して楽なものではないが、業界の再生のための、そして生の音楽体験を取り戻すための第一歩はここから踏み出すしかない。 『ライブホール、ライブハウスにおける新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン』の詳しい情報はこちら 関連記事 『飲食店は0時まで、東京アラートの解除でステップ3に移行』 『7月のハワイ直行路線全便やヨーロッパなどへの一部路線が欠航に』 『「人道上の事情あれば」外国人の再入国を許可へ』 『空港で検査実施、アイスランドが6月15日から観光客受け入れへ』 『7月開始予定の「GO TO キャンペーン」が延期に』

Creative Footprint TOKYO 2020より
Creative Footprint TOKYO 2020より

Creative Footprint Tokyoの調査結果が公開、東京の評価は?

ニュース 音楽

都市のミュージックヴェニューを調査するプロジェクトCreative Footprint(CFP)が、東京を対象にした調査の内容をまとめた報告書を公開した。 CFPが報告書の発行を行うのは、2017年4月のベルリン、2018年9月のニューヨークに続いて、東京が3都市目になる。CFPは、アムステルダム初のナイトメイヤー(夜の市長)であるミリク・ミラン(Mirik Milan)と、ベルリンのクラブコミッションメンバーであるルッツ・ライシェリング(Lutz Leichsenring)によって設立された、ライブミュージック会場や多目的に使用できるアートスペースなどに関するデータを収集するリサーチプロジェクトだ。 アフターコロナについての議論が活発になりはじめた今、本調査はナイトタイムエコノミーの価値を再確認し、本質的な文化体験を考える上での有用な視点を改めて提示してくれる。 調査の目的 報告書は4章に分かれ、CFPの概要を記した第1章では、夜間はさまざまな経済活動の場であるとともに新しい文化が生まれ育つための土壌でもあるとし、この「夜間帯の文化的価値の評価に関する調査」である「クリエイティブ・フットプリント東京」の重要性を説いている。 今回のCFPの調査を担当した齋藤貴弘(ニューポート法律事務所 パートナー弁護士)と梅澤高明(ATカーニー日本法人会長/CIC Japan会長)が理事を務めるナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA)についての紹介の欄では、同議会から調査の目的についてのコメントが寄せられている。 「世界から実験的で創造性に富んだ人々を引きつける都市(=クリエイティブシティ)をつくる上で、ナイトシーンの充実は不可欠だ。そのような人々は創造性を刺激する文化シーンとローカルコミュニティーがある都市、そして多様なライフスタイルを受け入れる都市に集まる。ナイトタイムエコノミーが都市開発の重要要素であるゆえんだ。本調査が、観光と文化と都市開発を接続した形での議論と行動のきっかけになれば幸いだ」   CFP   続く「観光と文化とまちづくり」と題された第2章では、ナイトタイムエコノミーを含む体験型観光施策を観光産業だけで完結させるのではなく、文化振興やまちづくりと有機的に連結させていくため、さまざまな有識者のコメントを引用しながら、文化、観光、まちづくりをつなぐための視点が提示されている。 観光は、異国の文化に触れることで私たちの知的好奇心を満し、新しい人生観や価値観との出合いにより、人生を豊かに変容させる契機となる。また、地域の文化のユニークさや価値は往々にして旅行者によって発見され、文化が持つ価値の再発見、再創造の機会を提供できるのも観光だ。このように観光を単なる経済活動としてではなく、文化体験や文化交流の場として捉えたとき、豊かな刺激や気づきを与えてくれる地域固有のオーセンティックな文化が重要な役割を果たす。そして新しい文化を生み出し、育てていけるまちづくりが文化観光推進のために極めて重要となる。 観光は文化推進、そして文化を生み出すための都市力と一体として考える必要がある。東京の文化力はどう評価されるのか。実際の調査結果とその分析が記されている第3章の内容を見てみよう。   持続可能な形で文化を育てているローカルヴェニューが重要 CFPの基本コンセプトは「ライブハウス、ナイトクラブ、ミュージックバーなどのミュージックヴェニューを調査対象とするが、ミュージックヴェニュー単体の調査ではないし、これらをランク付けするものでもない。 音楽は時代の空気

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先を見据えた取り組みが注目されるClubCommission Berlinとは

ニュース ナイトライフ

ベルリンにはクラブやフェスティバル、文化イベントの主催者ら約250人の会員を擁する、「ClubCommission Berlin」という地域団体がある。彼らは新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でベルリンのクラブやライヴミュージックヴェニューが閉鎖を余儀なくされた3月中旬に、意思決定のスピード感でドネーション型ストリーミングプラットホーム「United We Stream」を始動した。 このプラットフォームでは、トレゾア(Tresor)やウォーターゲート(Watergate)、ホッペトッセ(Hoppetosse)、アバウトブランク(://about blank)をはじめとするベルリンのクラブが参加していたが、現在は世界中の43都市、111のヴェニューで展開されている。 寄付金は5月上旬の時点で約450,000ユーロ(約5千270万円)が集まっており、番組をホストしたオーガナイザーや出演アーティストへのギャランティーは、ホスティングプールの20%の中から各クラブの判断により支払われる仕組みだ。   ClubCommission Berlin   ClubCommissionがこうした規模の取り組みを即座に実現させることができたのは、ベルリンのクラブ業界の内外で広域にわたるネットワークと信頼関係を構築してきたからだろう。彼らの活動の中心はベルリンのクラブカルチャーの促進と保護であり、コミュニティーやカルチャーが生み出される現場と、行政や企業との間に立ち、仲介役を務めるのがその主な役割だ。 今回、取材を受けてくれたのは、ClubCommissionの役員兼スポークスマンを務めているルッツ・ライシェンリング(Lutz Leichsenring)。 近年ベルリンで顕著に見られるジェントリフィケーションからクリエイティブなスペースを守るための活動に取り組んでいるほか、アムステルダムの元ナイトメイヤーのミリク・ミラン(Mirik Milan)とともに、都市のミュージックヴェニューを調査するプロジェクトCreative Footprintを立ち上げ、実施していることでも知られる。    Lutz Leichsenring   ベルリンのナイトシーンに関する政府からの支援状況 前述のUnited We Streamに集まった多額の寄付金に対し、クラブが存続していくにはそれでもあと毎月1千万ユーロが必要だとルッツは言及するが、政府からの支援のおかげで、今のところ多くのクラブが持ちこたえられているという。企業や個人事業主、フリーランスに向けた政府からの支援状況について、ルッツは、ベルリン市は連邦政府と協力し、クラブシーンを応援する4つの対策を現在発表しているという。 1. 短時間労働 短時間労働とは、労働時間の一時的な削減で、それに応じて給料も減少する。短時間労働ゼロは、仕事が完全に停止することを意味する。目的は、仕事を維持しながら人件費を削減することにより、会社の財政的負担を一時的に軽減することだ。従業員が失った給料は通常(部分的に)、職業案内所からの短時間労働補償によって補填される。 2.最大500億ユーロの緊急援助 連邦政府は新型コロナウイルス流行により経済的に困窮する個人事業主(Solo-Selbständige)と小規模企業(kleine Unternehmen)に対し、連邦資金から合計で最大500億ユーロの緊急援助を決定。 申請者の経済的存在を確保し、深刻な流動性のボトルネックを解消するため、助成金という形で即時の財政支援を提供した。この資

Time Out Tokyo
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コロナはナイトライフと文化を殺すのか

ナイトライフ

5月14日に39の県で緊急事態宣言が解除された。東京都を含む特定警戒都道府県では引き続き5月31日(日)までの継続が予定されているが、すでに解除された自治体の対応を見ても明らかなように、「3密」空間の回避と警戒は宣言解除後も続く。 静まり返る新宿ゴールデン街、光と音が消えた夜の道玄坂。人々のオアシスであっただけでなく海外観光客の目的地でもあった飲屋街やクラブ、ライブハウスといった夜の街は、今や最も「穢れた」場所になりかけている。 休業による財政難からすでに閉店を決めた店や施設が出ているが、その背景には宣言解除後の見通しが立たないことも大きく関係している。このかつてない苦境を切り抜けるためには、行政と民間事業者、有識者たちの有機的な連携が求められる。 本記事では、ナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA)の理事として行政と民間の間に立ち、夜間文化の価値を調査するオランダ発祥のプロジェクト「Creative Footprint(CFP)」の東京版を担当した齋藤貴弘(ニューポート法律事務所 パートナー弁護士)に、アフターコロナのナイトタイムエコノミーの展望や、事業者への支援について語ってもらった。関連記事『Creative Footprint Tokyoの調査結果が公開、東京の評価は?』

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ライブハウス コミッションが設立へ。営業許可取得をサポート

ニュース 音楽

2016年(平成28年)6月23日(木)から「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」いわゆる風営法の改正法が施行されることを受け、深夜帯という新たな市場を活用すべく、ライブハウス事業者からなる事業者団体「一般社団法人ライブハウス コミッション」が設立された。社員には、O-Group、WWW、LIQUIDROOM、duo MUSIC EXCHANGE、CLUB QUATTRO、新宿Loft、下北沢SHELTERといった東京都内の代表的なライブハウスが名を連ねている。代表理事は、株式会社スペースシャワーネットワーク取締役 兼 執行役員の近藤正司が務める。同コミッションは当面、今回新設された業態である特定遊興飲食店の営業許可取得を加盟店がスムーズに行えるようサポートし、風営法などの関連法規の改正や運用などについて関係省庁と協議していくことを主な事業内容とするという。 関連記事: 『ナイトライフが持つ可能性』

ポストコロナ、新しい日常。
ポストコロナ、新しい日常。

Welcome to the new normal ポストコロナ、新しい日常。

Things to do

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、私たちは今、かつてないほどの変化の時代を迎えている。グローバルなシティガイドとして東京のさまざまな情報を発信してきたタイムアウト東京は、ポストコロナ時代のシティライフを読み解くための試みとして、国内外の識者によるインタビュー企画をスタート。ここではアーカイブを紹介していく。

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