オランダパビリオンでしかできない10のこと

オランダと水の関係から、持続可能な未来を考える
オランダパビリオン
Photo: Kisa Toyoshima | パビリオン外観
Written by Time Out. In partnership with Embassy of the Kingdom of the Netherlands in Japan
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海外パビリオンの中でも一際目を引く、波打つような外壁が印象的なオランダパビリオン。その中心に浮かぶ大きな球体は「man made sun-次世代への太陽」と名付けられ、再生可能エネルギーへの変換という「新時代の幕開け」を象徴している。

館内では、水資源や再生可能エネルギーの活用をテーマとした没入型展示のほか、イベントスペース、カフェ、ショップなども併設。訪れる人々が、さまざまな角度からオランダの文化や思想を体感できるよう随所に工夫が凝らされている。

ここでは、オランダパビリオンをより楽しむためのヒントを紹介しよう。

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1. オランダパビリオンは大屋根リングから眺める。

西ゲートからほど近い「セービングゾーン」に位置する「オランダパビリオン」。建物の中心に浮かぶ大きな球体が目印だ。

この球体は「日の出」を象徴しており、新たな時代の幕開けを意味している。興味深いことに、1970年の大阪万博の「太陽の塔」の「黄金の顔」と同じ、直径11メートルで設計されている。

万博会場をぐるりと囲む木製の「大屋根リング」に設置されたエスカレーター付近からは、オランダパビリオンの全景を見下ろすころができる。撮影スポットとしてもおすすめだ。

パビリオン周辺にはキッチンカーやベンチも設けられているので、休憩がてら腰を下ろし、ゆっくりとオランダ館のユニークな建築を眺めてみては。

2. オランダと水のつながりを視覚的に感じ取る。

国土の4分の1が海面下にあるオランダは、かつては堤防や防潮壁を築くことで水を排除してきた。やがて「水と共に生きる」という発想へと転換し、自然との共生を目指すようになった歴史がある。

そして現代では、水をクリーンエネルギーの源と捉え、持続可能な未来を実現するための鍵と位置付けている。

オランダパビリオンの館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのがインスタレーション作品『Water Basin』だ。高さ約5センチの円筒形の皿に張られた水面が、台の内部に設置されたスピーカーから発せられるサウンドの振動に応じて細かく波打ち、さまざまな波紋を作り出し、オランダ館のテーマでもある、オランダと水との関係を視覚的に示す。

3. オーブに導かれる。

来場者は入り口で「オーブ」と呼ばれる光る球体を手に取り、館内を進みながら、遥か昔から水と向き合ってきたオランダの歴史を辿っていく。オランダの人々が水を受け入れることで生まれた革新的なアイデアの数々や、クリーンエネルギーへの転換に至る過程が紹介される。

パビリオンの中心部にあるドームの内部は、プラネタリウムのような360度スクリーンとなっており、約2分30秒の映像が英語と日本語のナレーション付きで上映される。映像では、オランダがどのようにして水との関係を築き直し、それを未来のエネルギー源へと昇華させてきたのかが、迫力あるビジュアルとともに描き出される。

4. 持続可能な未来に向けたイノベーションを学ぶ。

最後の展示エリアでは、サーキュラーエコノミー先進国であるオランダの持続可能な未来の実現に向けた画期的なイノベーション10点が紹介されている。

たとえば、家具製造において大量の廃棄物を生む従来の方法に代わり、廃棄素材とバイオ結合材と組み合わせることで天然資源の過剰消費を抑え、二酸化炭素排出量を削減するCooLooの「エンドレス ライフ テクノロジー」。また、AMS Instituteとマサチューセッツ工科大学が共同開発した、自律航行型の無人ボート「Roboat」は、水上交通の混雑や排出ガスの削減に貢献する技術として注目されている。

そのほかにも、Eco-Runner Team Delftが開発したクリーンエネルギーで走る自動車「Eco Runner」や、Certhonが推進する水熱エネルギーを活用した次世代型農業など、最先端テクノロジーを駆使した取り組みが紹介されている。

これらの展示を通じて、地球規模の課題に対し、オランダがどのように取り組んでいるのかを学べる。

5. 未来への約束を交わす。

体験の終盤には、共有空間「Pledge Station(約束の場)」と呼ばれる共有空間に立ち、他者と波長を合わせ、協働することの大切さを身体的・視覚的に実感する仕掛けが待っている。

壁に取り付けられた円形のスクリーンには、万華鏡のようなカラフルな映像が映し出される。この映像は、共有空間の上に立つ人数が増えるほど色の数が増し、より鮮やかに変化していく仕組だ。

人々が手に持つオーブは、ゆっくりと明滅を始め、やがて鼓動が揃っていく。まるで人々の心拍が一つになるかのような演出によって、集団で共鳴しながら行動することの重要性が視覚的に表現される。この象徴的な体験で、展示は終了となる。

6. うさこちゃんに案内してもらう。

オランダ出身の絵本作家、ディック・ブルーナ(Dick Bruna)が生み出したキャラクター・ミッフィーがキッズアンバサダーを務めるオランダ館。館内のあちこちに、ミッフィーが登場する。

来場者体験の展示に合わせて、子供の目線の高さに登場するミッフィー。絵本のように読み手にそっと語りかけるような優しい語り口で、日蘭関係やオランダの環境問題への取り組みについて説明してくれる。

子どもたちはもちろんだが、大人にもぜひ読んでみてほしい。素朴で暖かなイラストで自然とミッフィーの世界観へと引き込まれてしまうだろう。

7. 建築を通してサーキュラリティの思想を学ぶ。

オランダパビリオンを設計したのは、サーキュラー建築のパイオニアとして知られる建築家のトーマス・ラウ(Thomas Rau)。思想家としての顔も持つラウは、オランダパビリオン全体を、「サーキュラリティ(循環性)」の発想に基づいて設計し、建物全ての要素が再利用できるように構築した。

ラウは、人々が資材を無責任に資材を使い捨ててしまう原因を「資材にアイデンティティがないから」とし、資材に身分証明を与えることで人々に責任感を持たせるというアイデアを提唱した。

そして発展したのが、資材の種類・品質・出荷地などの情報を登録できるデジタルプラットフォーム「Madaster(マダスター)」である。今回のパビリオンで使用された全ての資材情報も、Madasterに登録されている。

パビリオンは、万博終了後は丁寧に解体され、別の場所で別の目的のために再建される予定だ。館内も、リサイクル素材やリサイクル可能な素材が随所に使われている。

例えば、ドームやイベントスペース、カフェ、ショップのベンチやカウンターには、リサイクルされたコルクやレザーが使用されている。また、イベントスペースの椅子は、ペットボトル由来のリサイクルプラスチックから作られた布で張られており、さらに、イベントスペースやカフェ、ショップに設置された吸音パネルも、同じリサイクルプラスチック製だ。

8. コモングラウンドを活性化する。

天井高があり開放的なオランダパビリオン併設のイベントスペース。ここでは、立場や価値観の違いを超えて協力し合うための共通基盤「コモングラウンド」をテーマに、さまざまなビジネスイベントが開催される。一般向けに公開される文化プログラムもあるので、注目したい。

一般公開されるミニ展示会は、以下などが計画されている。

時間によっては閉鎖している場合もあるので、理解してもらえると幸いだ。

・「再考するイノベーション」4月18日(金)〜5月5日(月)
・「万人にとっての公平性」5月16日(金)〜6月9日(月)
・「過去と未来のあいだに
橋を」6月13日(金)〜7月28日(月)
・「才能を育てる」8月1日(金)〜9月1日(月)
・「修理、再利用」9月5日(金)〜10月13日(月)

万博開幕中は、パビリオン内のイベントスペースのみならず、さまざまな会場でオランダ関連の文化イベントが開催される予定。「EXPOナショナルデーホール」では、1971年にオランダで設立された名門ダンスカンパニー「Introdans」と、東京を拠点に公演を行うダンスプロジェクト「LAND FES」がコラボレーションし、パフォーマンス作品『Unum』を発表。年齢や障害の有無を超えた表現を目撃しよう。 

ポップアップステージ 西」では、ヨーロッパを代表するサックス奏者のベンジャミン・ハーマン(Benjamin Herman)によるコンサートも予定。ジャズの即興演奏における日本文化の影響に強い関心を持つハーマンは、特撮映画やアニメ音楽などからインスピレーションを受け、新たな楽曲制作に取り組んでいるアーティストだ。

気になるイベントの開催日に合わせて万博を訪れるのもいいだろう。詳細なスケジュールは、こちらからチェックしてほしい。

9. パビリオン限定グッズは見逃さない。

せっかく万博に訪れたのなら、限定グッズを見逃さない手はないだろう。オランダパビリオン内ショップには、ここでしか買えない特別なグッズが揃っている。

ミッフィーの限定ぬいぐるみのデザインは2種類用意。パビリオン内を鑑賞する際に手渡される「オーブ」を抱えたミッフィーや、オランダの国花であるチューリップ柄の服を着たミッフィーのぬいぐるみは、大小2サイズ(大4,900円・小2,500円、以下全て税込み)が揃う。

万博のためだけに作られた特別なパフューム「New Dawn」(32,500円)も見逃せない。オランダとスイスにルーツを持つDSM-Firmenich社のトッップ調香師であるウェッセル・ジャン・コス(Wessel-Jan Kos)がオランダパビリオンのテーマでもある「エネルギー転換の新たな夜明け」をイメージして調香した特別な一品だ。

ジャスミンとマグノリアのフローラルな香りと、ムスクとアンバーの滑らかなベースに、緑茶の洗練されたブレンドを基調とし、425年以上前から続く日蘭交流をイメージしている。

オリジナルの青いデルフト陶器のボトルがノスタルジックだ。150本限定販売なので、早めに手に入れることをおすすめする。

そのほかにもオリジナルTシャツやノートなど、限定グッズを用意。万博に訪れたら記念にぜひ手に入れよう。

なお、グッズは売り切れている場合があるので、入荷情報は公式Instagramおよび公式Xで発信されるので、こまめにチェックしよう。

10. オランダの伝統菓子ストロープワッフルを頬張る。

展示でオランダの歴史やエネルギー転換について学んだ後は、パビリオン併設カフェでひと休みしよう。カフェでは、コーヒーや紅茶、ソフトドリンクのほか、ノンアルコールビールなどバラエティ豊かなドリンクが提供されている。

フードメニューには、オランダのソウルフード「塩漬けニシンの玉ねぎ添え」が登場。現地のスタイルに倣って、尻尾を掴んで豪快にかぶりつこう。

オランダと日本の友好関係を表現したオリジナルメニューにも注目したい。茹でたニンジンとタマネギとジャガイモをマッシュしたオランダ家庭料理「ヒュッツポット」をご飯で包んだ「ニンジン入りヒュッツポットおにぎり」や、オランダの定番つまみ「ビターバレン」をアレンジした「ベジタリアンビーフを使ったビターバルおにぎり」もおすすめ。予想を超える意外なおいしさに驚かされる一品だ。

スイーツも充実。薄く焼いたワッフル生地の間にキャラメルを挟んだオランダ伝統菓子のストロープワッフルが味わえる。パビリオンを背景に写真を撮れば、SNS映えすること間違いなしだ。

もっとオランダについて知りたいなら……

  • Things to do

九州に流れ着いたオランダ船「リーフデ号」の航海士ヤン・ヨーステンが徳川家康と謁見(えっけん)した1600年を原点とし、日蘭交流は425周年を迎えた。

鎖国時代には、出島のオランダ商館での貿易が国内唯一の世界の経済、文化とつなぐ窓口となり、8代将軍徳川吉宗の治める江戶中期には、医学、生物学、天文学などを学ぶ蘭学塾が各所で開かれ、オランダを通じて⻄洋の知識や技術を得るようになった。

今でも各地に残る日蘭交流の軌跡をたずね、歴史をひも解こう。

English version here:10 places to experience Dutch history in Japan

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ニシンやムール貝、牡蠣などの新鮮なシーフードに加え、酪農が生み出すチーズなど、豊かな食材に恵まれたオランダ。コロッケやワッフルなど、日本でもすっかりおなじみの料理も多い。

17世紀に海運業が発展し、国際的な商業都市として栄えたアムステルダムでは、さまざまな食文化が交わり、独自の調和を生み出した。その柔軟性は日本でも発揮され、伝統を守りながらも、日本の素材や発想を取り入れ進化を遂げている。

今回は、そんなオランダの食文化が感じられるスポットを紹介する。

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