

「世界のベストレストラン50」チェアマン
神奈川県生まれ。美食評論家、コラムニスト。2007年、フランス・シャンパーニュ騎士団のシュバリエ(騎士爵位)の称号を授勲。2010年には、スペインでカヴァ騎士の称号も授勲。 2013年から「世界のベストレストラン50」「アジアのベストレストラン50」の日本評議委員長を務める。剣道教士八段。大日本茶道学会茶道教授。

タイムアウト東京 > レストラン > 次に来るガストロノミーエリアを「世界のベストレストラン50」チェアマン・中村孝則に聞いてみた
権威ある「世界のベストレストラン50」のチェアマンを2013年から務めている中村孝則は、デンマークの「noma」が2010〜2012年、2014年、2021年とトップに輝いたのを目撃し、食の地図が変わる瞬間に立ち会った。
「食の歴史上、極めて重要な時代でした」と中村は当時を振り返る。「その後も、ペルーの『Central』が南米のレストランでは初めて1位になるなど、フランス中心の食の権威が崩れ、ローカルガストロノミーが一気に注目されるようになりました」
より深く、よりローカルへ
これまで注目されてこなかったエリアや、地域の食文化にフォーカスを当てる動きは、近年さらに加速している。「世界のベストレストラン50」のチェアマン会議では、「次のトレンドは何か」という議論が常に交わされている。その中で頻繁に話題になるのが、注目すべき新たなエリアの発掘だ。
2022年には、「中東・北アフリカのベストレストラン50」という新しいアワードが誕生した。チュニジア、モロッコ、アルジェリアといったマグレブ三国から、アラブ諸国まで、これまで十分に注目されてこなかった地域にスポットライトが当たり始めた。
そして2025年には、「北米のベストレストラン50」という新しいコンテンツが登場。アメリア、カナダ、およびカリブ海地域の一部を対象にした新たなアワードプログラムだが、主な狙いはカナダの発掘だ。「カナダは面白い」と中村は力を込める。これまで世界のガストロノミー地図において、カナダが注目される機会は少なかったが、発見されるべき美食文化が眠っていたのだ。
さらに将来的には「アフリカのベストレスラン50」設立も期待したい。2019年の「世界のベストレストラン50」で1位を獲得した「Wolfgat」をはじめ、南アフリカはすでに注目されている。しかし、アフリカには50カ国以上の国々があり、モロッコなどの伝統料理も含め、大陸全体をより深く発掘していこうという機運が高まっている。
日本の地方にこそ独自の季節食材と食文化がある
この世界的な潮流は日本にも影響を与えた。東京・京都以外のローカルなレストランに注目が集まり、近年では地方発の新たなスターシェフが続々と登場している。
日本ならではの四季折々の食材と事物や行事は、都市部よりむしろ地方の方が豊かであることも多い。「その地域独自の発酵文化や保存食文化は、世界中のシェフが学びに来るほどの魅力を持っています」(中村)
これらの動きに呼応するように、国や自治体もガストロノミーツーリズムに力を入れ始めたところだ。「食べたことがないものや、まだ馴染みがないものを発掘しよう」という動きは世界規模でも、日本国内でも加速していくだろうと中村は予想している。
トップフーディーの飽くなき食材への探究心
最後は少しファニーな内容で締めよう。筋金入りのフーディーである中村に、一度は食べてみたかった食材を尋ねてみると、「オオサンショウウオ」だと答えが返ってきた。かつては日本で食されていたもので、美食家としても名高い陶芸家・書家の北大路魯山人が「名実ともに珍味に価(あたい)する」と表したことでも知られている。
現在は特別天然記念物。食べることは法律で禁じられているので、その夢がかなうことはもはやない。国や地域によっては食べられる食材に限定して聞くと「ニシキヘビ、アルマジロ」と流れるようにいくつかの候補を提示してくれた。
こうしたトップフーディーのマグマのような探究心と冒険心によって、美食の地図は常に書き換えられ続けているのだろう。


「世界のベストレストラン50」チェアマン
神奈川県生まれ。美食評論家、コラムニスト。2007年、フランス・シャンパーニュ騎士団のシュバリエ(騎士爵位)の称号を授勲。2010年には、スペインでカヴァ騎士の称号も授勲。 2013年から「世界のベストレストラン50」「アジアのベストレストラン50」の日本評議委員長を務める。剣道教士八段。大日本茶道学会茶道教授。
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