東京ビエンナーレ2023
寛永寺寛永寺、ALL TOGETHER NOW《Transforming box series》

「東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023」が来年7月開催決定

プレイベント「はじまり展」は2022年10月6日から、計画展示など見どころを紹介

編集:
Genya Aoki
テキスト:
Runa Akahoshi
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2022年10月5日、鶯谷にある「東叡山 寛永寺」内で東京ビエンナーレが記者発表を行い、「東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023」が2023年7〜9月の夏会期と10月の秋会期にわたり開催することが発表された。東京ビエンナーレとは、「東京のまち」を舞台に2年に1度開催している芸術祭だ。

世界中から幅広いジャンルのクリエーターが東京の街(主に千代⽥区、中央区、⽂京区、台東区を中⼼とする東京都⼼の北東地域が舞台)に深く入り込み、地域住民と一緒に多様な作品やプロジェクトを作り上げていくというもの。第1回「東京ビエンナーレ2020/2021」はコロナ禍による延期を経て、2021年7月から9月に開催された。

第2回となる今回は「リンケージ つながりをつくる」をテーマに掲げ、関係性に焦点を当てていく。アートの社会的役割の一つである、社会環境に対して自由な視点で関係性を持てる点に着目し、参加者と来場者がそれぞれの「リンケージ(つながり)」を見いだし、新しいつながりが生まれ、広がっていく場となることを目指す。

東京ビエンナーレ2023
Photo: Genya Aoki記者会見に参加した主要プロデューサー、ディレクター陣とアーティストら

総合ディレクターは、アーティストで東京藝術大学絵画科教授の中村政人が第1回から引き続き務めるほか、今回からは心理療法士でありキュレーションの西原珉が新たに担当。西原は1990年代の現代美術シーンで活動後、渡米。2018年に帰国し、アートとレジリエンスに関わる活動を試行している。

東京ビエンナーレ2023
画像提供:一般社団法人東京ビエンナーレ寛永寺「リンケージ02 まちの余白に出逢う」

同芸術祭では、現在12の「リンケージ」が計画されており、今後さらに増えていく予定だ。ここでは先行して、いくつかの事例を紹介しよう。「リンケージ02 まちの余白に出逢う」は総合ディレクターである西原がキュレーターとディレクターを務めているもので、谷中を舞台にした映像インスタレーション作品だ。多くの芸術家が活動してきた場所を舞台に、さまざまな人々によって実践されてきた芸術や文化、地域との関わりの歴史を、物語や景観を重ねながら同エリアの各所で放映する。

東京ビエンナーレ2023
画像提供:一般社団法人東京ビエンナーレ2023「リンケージ03 ジュエリー・人・街」

このほか、装身具を主題に秋葉原や御徒町にある専門業者を市民が訪ねていく「リンケージ03 ジュエリー・人・街」や、ゴミ自体のつながりに着目した「リンケージ06 超分別ゴミ箱2023(仮)」などユニークなプロジェクトが多くある。

プレイベント「東京ビエンナーレ2023 はじまり展」が10月6日からスタート

Photo: Genya Aoki
Photo: Genya Aoki「ECHO works」(寛永寺)

同芸術祭は市民参加型の継続的な取り組みを強めていく方針で、10月6〜30日(日)に開催されるプレイベント東京ビエンナーレ2023 はじまり展を皮切りとして、各所で活動を展開していく。

同展は、2025年に創建400年を迎える東叡山 寛永寺や神⽥の老舗額縁屋「優美堂」、「東京ドームシティ」、千代田区の大丸有エリアなど都内複数箇所で開催。「東京ビエンナーレ2023」の計画展示の一部が楽しめるほか、シンポジウムやツアーなどのイベントを実施する。

ここからは、寛永寺会場を中心に見どころを紹介しよう。

東京ビエンナーレ2023
Photo: Genya Aoki寛永寺、ALL TOGETHER NOW《Transforming box series》

まず観てほしいのは、寛永寺の渋沢家霊堂前庭にある、日比野克彦作「ALL TOGETHER NOW《Transforming box series》」。段ボールと凧糸で制作された9つの立体作品が庭に設置されているというもの。

寛永寺には徳川の将軍6人の墓があるが、ほか9人は宗派の違いや自身の意思により、別の場所に埋葬されている。同作では、寛永寺にその15人が集まり、互いの思い出を語り、さらには来訪者と未来について対話する物語を表現している。ビートルズが作った同名曲の歌詞ともリンクしているそう。曲を聴きながら観賞すれば、より楽しめるかもしれない。

東京ビエンナーレ2023
Photo: Genya Aoki寛永寺、「メタユニットM1プロジェクト」

「メタユニットM1プロジェクト」は、総合ディレクターである中村の作品。1970年に建築家の大野勝彦と積水化学の共同開発で商品化された「セキスイハイムM1」を使用し、ユーザーの使い方に合わせて可変、リユースしていくプロジェクトだ。

住宅用途を超えて「どんな使い方もできるユニット」としての設計思想に着目し、かつて黒川紀章らが提唱した、機能などの変化に応じて空間や設備を取り替え成長させる「メタボリズム建築」の豊かさを現代によみがえらせ、可視化、思想化する試みでもある。

また、テーマの説明と12のリンケージの詳細が紹介されたパネルがあるので、同芸術祭の全容を知りたい人にもおすすめだ。

東京ビエンナーレ2023
Photo: Genya Aoki寛永寺、「1868」と作者の鈴木理策

国の登録有形文化財でもある根本中堂では、写真家の鈴木理策が作った上野エリアの映像スナップ作品「1868」が展示されているほか、寛永寺には根本中堂前に「ECHO works」という作品がある。

また、東京ドームシティでは、高橋臨太郎による作品群の展示。優美堂では「優美堂再生プロジェクト」と題し、戦争を乗り越えた優美堂に残される額縁と複製画を使った中村の作品が楽しめる。

参加作家や企画陣が本芸術祭を語るトークセッションやシンポジウム、寛永寺、谷中、大丸有エリアで展開するガイドツアーも開催予定だ。事前予約制なので、詳細は公式ウェブサイトを確認してほしい。足を運んだ全員が参加者、という能動的な芸術祭に訪れて、自分の「リンケージ」を探してみては。

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