マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima

マツモト建築芸術祭でしかできない7のこと

舞台はノスタルジックな名建築、3年目の開催へ

編集:
Time Out Tokyo Editors
テキスト:
Runa Akahoshi
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2024年2月23日(木)〜3月24日(日)、長野県松本市を舞台にしたアートイベントの「マツモト建築芸術祭」が3年目の開催を果たす。2024年度のコンセプトは消えゆく名建築 アートが住み着き記憶する」。過去には国宝「旧開智学校」や国登録有形文化財の老舗料亭「割烹松本館」や、廃業した映画館「上土シネマ」など、松本市内に点在するユニークな建物が舞台となった。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima松本市出身の写真家、白鳥真太郎による作品
マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima藤井フミヤによる作品

今回は「マツモト建築芸術祭2024 ANNEX」と題して、国宝「松本城」の敷地内「二の丸」に位置し、取り壊し予定が決まっている「旧松本市立博物館」をメインの会場として展開する。

本記事では、メイン会場の注目展示を紹介。訪れる際の参考にしてほしい。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima谷敷謙による作品
マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima松村英俊による作品

1. 博物館の幕引きを見守る。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima「旧松本市立博物館」外観

旧松本市立博物は、今回が取り壊し前の最後のイベントである。会場に着くと、外観が梱包材の「ストレッチフィルム」で覆われているのが分かる。これは中島崇の作品「care ケア」で、会期中、徐々に建物全体がラッピングされていくプロジェクトだ。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima中から見たストレッチフィルム

フィルムにより石造りの壁が太陽光でキラキラと光ったり、風で揺らめいたりと、自然現象を取り込む新たな姿へと変化している。旧博物館の有終の美を見守ろう。

2. 重力を可視化する。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima鬼頭健吾による重力を可視化した作品「lines」

入館して、まず目を引くのが鬼頭健吾の「lines」。高い天井から床へとカラフルな棒が伸びている。これは地球上の重力を可視化した作品で、螺旋階段を登りながらぐるっと一周し、目に見える真っ直ぐな重力を全身を使って感じてほしい。

3. 写真の本質を見る。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima宇佐美雅浩による「Manda-la 曼荼羅」

宇佐美雅浩の展示「Manda-la 曼荼羅」は大迫力だ。主人公の人生を一枚の絵に収める宇佐美の作品は、情報量が多く非日常的だが、どれも無合成で1発撮りだというのだから驚きだ。

曼荼羅はサンスクリット語で「本質を図解する物」という意味がある。多数の0歳児や秋葉原のメイド、市民500人などが参加するこの作品は、長い年月をかけ、人物につながりのあるものや人間関係を実際に並べて撮影。見ているだけで引き込まれてしまう世界が広がる。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshimaカンディダ・ヘーファーによる「空間への反射-反射の空間」
マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshimaカンディダ・ヘーファーによる「空間への反射-反射の空間」

ドイツ出身の写真家、カンディダ・ヘーファー(Candida Höfer)は、「空間への反射-反射の空間」を展開。撮影には細心の注意を払い、空間の内部構造を最もよく表す対角線や中央線に沿って対象物を配置する。空間特性を際立たせるとともに、建築物がこれまで歩んできた歴史をも物語る。その場に迷い込んでしまったかのような感覚へと誘われるだろう。

4. 自然の美に触れる。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima須田悦弘による作品
マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima中を覗くと現れる小さな花

須田悦弘は、本物と見紛うほど精緻な花や草を木彫で作るアーティストだ。会場の隅にある箱の中をよく見ると、小さな花が咲いている。思いがけない場所に作品を設置し、空間全体をインスタレーション作品とする須田の手法を楽しもう。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima熊野寿哉による「patna rhei パンタレイ」

華道家、空間演出家の熊野寿哉は、生花作品「patna rhei パンタレイ」を展示。ただの生花ではなく、会期中に成長と劣化を繰り返し、最終的に朽ち果てるのだ。取り壊される同会場と作品を重ね、「万物流転」の世界を表現している。

5. 生活の裏にある危うさを知る。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima怪しくきらめくシャンデリアは「米谷健+ジュリア」のインスタレーション

日本人とオーストラリア人のアーティストユニット「米谷健+ジュリア」の展示は、雰囲気がガラリと変わる。暗い部屋に進むと、そこには緑色に怪しく輝く6つのシャンデリアが現れる。シャンデリアは1点ずつ原発保有国名がつけられており、大きさは各国の原発から作り出される電力の総出力規模に比例している。

シャンデリアはウランガラスでできており、紫色のブラックライトの照射にされウラン特有の幻想的な光を発する。煌びやかで美しくもどこか不気味なインスタレーションは、便利な生活の裏に隠れる危うさが感じられる。

6. 眠る地下からエネルギーを得る。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshimaボイラー室へ続く廊下
マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshimaボイラー室の入り口

同会場の地下には、使われなくなったボイラー室がある。階段を降りていくと、リズミカルな音楽が鳴り響き、期待感が高まる。ボイラー室を覗くと、ノイジーな映像が空間を駆け巡っている。

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Photo: Kisa Toyoshima河合政之による「Three Elements 三元素」

同作「Three Elements 三元素」は、かつては日々、エネルギーを生み出してきたボイラー室の空間全体が、新たな生命体となって蘇る。会場を彩る色や音は、刻一刻と変化するため、決して再現できないイメージが展開。エネルギッシュな空間に圧倒されるだろう。

マツモト建築芸術祭
Photo: Kisa Toyoshima河合政之による「Three Elements 三元素」

7. ユニークなイベントを楽しむ。

このほか、マツモト建築芸術祭ではライブや上映などのさまざまなイベントも開催。初日の2月23日(金)には、「新松本市立博物館」で出展作家でもある河合政之がライブパフォーマンスを披露。また同館では、会期中ショートフィルムの総合ブランド「SHORTSHORTS」による上映を無料で鑑賞できる(9時30分〜1日6回、各77分間)。

3月24日(日)には、旧博物館内でトリオ編成のインストゥルメンタルバンド「マウス・オン・ザ・キーズ」がゲストミュージシャンを迎えたライブを行う。博物館ならではの残響音やナチュラルリバーブにより、革新的な聴取体験を味わえるだろう(閉館後に開演、詳細は公式ウェブサイトで発表)。ぜひ、展示と併せてイベントも楽しもう。

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