大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
Photo:Kisa Toyoshima「Gravity and Grace」展示風景

巨大インスタレーションなど、「大巻伸嗣展」が国立新美術館で開幕

入場は無料、高さ8メートルの作品や珍しいドローイングも公開

Mari Hiratsuka
Naomi
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Mari Hiratsuka
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六本木の「国立新美術館」で「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」がスタートした。天井高8メートル、総面積2000平方メートルの広大な展示空間を存分に生かし、3つの巨大なインスタレーションと、これまであまり公開されてこなかったドローイング作品を展示。多くの観客に体感してほしいということから、入場料は無料で鑑賞できる。

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
Photo:Kisa Toyoshima

大巻伸嗣(おおまき・しんじ)は、1971年、岐阜県生まれ。東京藝術大学大学院で彫刻を学んだのち、「存在するとはいかなることか」という問いを掲げ、観る者の身体感覚を揺さぶるような大規模なインスタレーションを創り出している。日本やアジア、ヨーロッパなど世界各国で発表を続けるほか、舞台芸術、国内各地で開催されるアートプロジェクトへも多数参加する現代美術家だ。

巨大なインスタレーション空間に身を委ねる

展示室に入った鑑賞者を最初に迎えるのは、まばゆい光と淡い影をまとった、高さ8メートルの巨大なつぼ型のインスタレーション。2016年に発表された「Gravity and Grace」シリーズの最新バージョンで、屋内展示は初。オープニングに登場した大巻も「国立新美術館の展示室だから実現できた」と話した。

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
Photo:Kisa Toyoshima「Gravity and Grace」と 大巻伸嗣

和柄を思わせるモチーフも含まれた、さまざまな動植物からなる文様が上下し、強弱を続ける光に照らされて、天井から床にまで影となって広がる。その美しさについ見とれてしまうが、大巻はここに、2011年の東日本大震災によって原子力が引き起こした未曽有の人災と、エネルギーに過度に依存し続ける社会への痛烈な批評をこめてもいる。

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
Photo:Kisa Toyoshima「Gravity and Grace ― moment 2023」

大学で彫刻を学んだ大巻は、2012年以降「運動態としての彫刻」としてシリーズを展開。過去最大規模となった最新作「Liminal Air Time ― Space 真空のゆらぎ」は、巨大な生物のようでもあり、月明かりに照らされた夜の海辺の景色のようでもあり、誰もが見入ってしまうはずだ。刻々と形を変える作品と向かい合うようにベンチが設けられているので、時間を忘れて過ごすのもいいかもしれない。

大巻伸嗣
Photo:Kisa Toyoshima「Liminal Air Time ― Space 真空のゆらぎ」
大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
Photo:Kisa Toyoshima「Rustle of Exstence」

そして、横長の画面いっぱいに投影される映像作品「Rustle of Existence」は、大巻の自宅裏にある雑木林の映像に、自身が続ける「存在」への問いの考察を乗せた新作だ。

個展準備のために滞在していた台湾で、原住民の言葉が消えていく現状を知ったことなどをきっかけに生まれたという本作。さまざま地域の言語学、言語社会学や神話・宗教の研究者との対話などを通して続けられた思索を重ねた、実験的な取り組みと言える。

大巻の思考を垣間見る「ドローイング」が多数公開

インスタレーションと並んで、本展のもう一つの見どころが、これまでほとんど展示してこなかったというドローイングだ。

大巻はこれらについて「思い浮かんだつかみどころのないイメージをとらえるため、即興的に描いているもの。作品やイメージが明確になったら役目を終える」と言うが、本展を企画構成した長屋光枝学芸員との対話から展示が実現した。

大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
Photo:Kisa Toyoshima「影向の家」のためのドローイング
大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ
Photo:Kisa Toyoshima舞台「Rain」のためのドローイング

2015年に開催された「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」で発表された「影向の家」に関するドローイングや、近年取り組んでいるという暗闇の中で描く「Drawing in the Dark」なども鑑賞できるほか、「愛知芸術劇場」で2023年に上演された舞台「Rain」の記録映像などが視聴可能だ。

「Liminal Air Time ― Space  真空のゆらぎ」ダンスパフォーマンス
Photo:Kisa Toyoshima「Liminal Air Time ― Space 真空のゆらぎ」ダンスパフォーマンス

会期中は、本展のために書き下ろされた詩人・関口涼子の詩と朗読や、ダンサーによるパフォーマンスが予定されている。一瞬で空間を一変させた圧巻の競演をぜひ見届けてほしい。

展覧会は12月25日(月)まで。毎週金・土曜日は20時までオープンしているので、仕事終わりに立ち寄るのもいいだろう。

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