渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi

おいしい植物の楽園へ、「渋谷区ふれあい植物センター」が大規模リニューアル

レストランやカフェスタンドを新設、植物の生体電位からサンプリングした音楽体験も

テキスト:
Yousuke Ohashi
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日本で一番小さな植物園といわれる「渋谷区ふれあい植物センター」が2023年7月29日にリニューアルオープンした。新たな植物園は「育て、食べる植物園」として食べられる植物を中心に収集。1階にはオリジナルコーヒーなどが楽しめるボタニカルスタンド、2階にレストランを新設した。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi

同施設は2021年12月に老朽化を理由に改修のために、一度閉館。その後、渋谷周辺で農業を行うNPO団体「アーバンファーマーズクラブ」が受託した。「育て、食べる」という理念に合わせ、同施設内の植物を従来の熱帯植物から食用植物へ総入れ替えしたという。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi

内装は「SUPPOSE DESIGN OFFICE」によるリノベーションだ。曲線を多用しているほか、椅子やテーブル、階段に至るまでコルクで表面を覆われている。その造形的なたたずまいは、1950年代の頃の人々が思い描いた「レトロフューチャー」をほうふつとさせる。

生きている食用植物と触れ合う

施設内は温室になっており、植物はフルーツの木がほとんど。トケイソウの仲間である1日しか花が咲かないパッションフルーツ、サボテンの仲間であるドラゴンフルーツ、そしてポピュラーなバナナやマンゴーなど、多種多様なトロピカルフルーツが鑑賞できる。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashiミラクルフルーツ

中でも珍しいのは、西アフリカ原産の「ミラクルフルーツ」。実は酸っぱいイチゴのような味だが、次に食べた果物を甘く感じさせるという不思議な果物だ。「ジャボチカバ」は木の幹に直接実るブラジル原産の果物。紫色の実を食べてみると、濃厚な甘みを持つブドウのような味わいが楽しめる。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi

同施設では、食べごろになった熟したフルーツをスタッフ同席のもと、子どもなど来場者に収穫体験してもらうこともある。将来的には近隣のシェフを呼び、一緒に調理するようなワークショップを行うなど、館内で実った果物を地域に還元するイベントを開催したいと館長の小倉崇は語る。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi水耕栽培の様子

施設にあるピンクの光で照らされた一角は、水耕栽培のコーナー。ここではレタスやルッコラなどの葉物野菜に人工の光を当て、育てている。光の色合いを調節することで、味わい深い野菜の育成にも成功したという。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi

階段下にある秘密の洞窟のような不思議な空間は、植物の生体電位からサンプリングした音が鳴り響く小さな空間だ。ここで瞑想(めいそう)してみるのも一興だろう。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi多目的ギャラリー

このほか、植物にまつわる本を収蔵する予定のライブラリーや、一面に張られたガラスから眼下に見渡す館内を一望できる多目的ギャラリー、キッチンを備えたイベントルームもある。

食を通じて植物を深く知る

リニューアルのもう一つの目玉は、こだわりの食物を堪能できる点にもある。まずは入館料不要のエントランスエリアにあるボタニカルスタンド。ここでは、「シブヤブレンド」(540円、以下全て税込み)と名づけられたスペシャルティコーヒーがその場で楽しめるほか、2階のレストランなどで提供するピザなどのフードをテイクアウトできる。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashiボタニカルスタンド

コーヒーは、相模原にあるロースターの「アマライト コーヒー スタンド(Amalight Coffee Stand)」と共同で開発。世界各国の産地の中から、味わいや香りにおいて、今一番評価が高い生豆を使用する。今シーズンはコロンビアの「シドラ」とエチオピアの「74110」「74112」を提供している。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi

アイスコーヒーの「コールドブリュー」(レギュラー540円、ラージ648円)は、果肉付きの生豆に、フルーツとワイン酵母を混ぜて発酵させるという手法を用いた「インフュージョンコーヒー」を提供。パッションフルーツのフレッシュな果実感と口の中に残る甘い香りが特徴的だ。本格的な味わいに驚くことだろう。早くも、コーヒー目当てに訪れる客もいるとか。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi

施設の外縁にある庭園で摘んだハーブを用いたハーブウォーターも並んでいる。これらは無料だ。取材時は、少し柑橘系の香りのする「アロマティカス」、シソらしい味わいの「大葉レモングラス」、爽やかな匂いの「レモンバーベナ」の3種類を提供していた。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashiピザは左から「有機かぼちゃとカシューナッツ」「有機ケールとセサミ」「麹と有機キャロット」「有機ビーツとバター」

2階にあるレストランでは、人と地球に優しいエシカルなメニューが楽しめる。グルテンレスの北海道産スペルト小麦を使用したピザ(660円)は、自然のうまみが感じられる濃厚な野菜の味と、カリカリとしたクリスピーな生地が絶妙にマッチしている。「有機かぼちゃとカシューナッツ」「有機ケールとセサミ」「麹と有機キャロット」「有機ビーツとバター」の4種類から選べる。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashiレストラン内観

「有機ミニサラダボウル」(385円)に用いられる葉物野菜は、館内の水耕栽培で作られたもの。メニューはまだまだ少ないが、今後は数を増やし、ディナーメニューを提供していく予定だという。

都市における農と食の地域拠点に

小倉は「同施設が野菜や植物を育てるきっかけになってくれたら」と語る。渋谷駅近辺にはホームセンターがなく、植物を育てるための道具を揃えるのも難しいのが現状だ。「栽培をしてみたい」と考えている人の一助になるように、同施設にはコンポストから集められた共同肥料も用意。「野口種苗研究所」の種を少量からの量り売りという形で販売する計画もあるという。

渋谷区ふれあい植物センター
Photo: Yosuke Ohashi

もちろん館内の植物たちを通じて、実践的な育て方を発信していくことも忘れない。毎日訪れて、種子や草花の変化に一喜一憂する子どももいるそうだ。

入園料は100円(未就学児は無料)。渋谷の植物園を訪れて、ぜひ自宅で野菜や果物を育ててみよう。

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