Tokyo Paralympics opening ceremony
Photo: Christopher Jue/Getty Images for International Paralympic CommitteeThe opening ceremony performance of the Tokyo 2020 Paralympic Games

パラリンピックを終えて、開会式出演の徳永啓太にインタビュー

DJを担当した車いすファッションジャーナリストが語る社会への思い

編集:
Hayashi Hisato
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2021年9月5日、13日間の開催期間を経て、東京2020パラリンピック競技大会が閉幕。筆者は全盲の視覚障がい者で、スクリーンリーダーという音声補助ソフトとキーボード、パソコンを用いて本稿を書いている。

質問に応じてくれた徳永啓太とは、多様性をテーマにしたクラブイベント『WAIFU』(*1)でライブ、DJ出演や、クラブシーンのアクセシビリティについての対談をする中で交流してきた。彼と対談した時、次のように話してくれた。「東京には段差が多い。たった数段の階段があるだけで、車いすでは好みの洋服屋にも聴きたい音楽が流れるクラブにもなかなか入れない。決まりのないファッションと音楽が、制約の多い私を自由にしてくれる」

徳永は脳性まひで生まれ、車いすを使用している。友人であり、リオパラリンピック閉会式に出演した車いすダンサーのパイオニア、神原健太に彼は触発された。「車椅子でDJをやっている人は世界でも珍しい」、そう考えてDJやライブ活動を始めている。彼はその神原健太と今回、東京パラリンピック開会式という世界的な舞台を共に踏むことになった。

徳永啓太
Photo: https://www.instagram.com/wheelchair_fashion/

徳永は、モデル、ファッションジャーナリストでもある。2018年にはVOGUE WORLD SELECT 100 STREET STYLEにも選ばれている。「車いすもファッションだ」と彼はそう語る。行進はパラリンピック選手が主役だから、と世界に中継された開会式で、彼は名前やプロフィール表示を断った。しかし、DJをしている人は誰?と、大きな話題を呼んだ。本記事では、開会式でDJを務めた徳永にインタビューを行った。

徳永啓太
Photo: https://www.wwdjapan.com/articles/1217694

―パラリンピック開会式出演後、何か変化はありましたか?

非常に厳しい状況下に来てくださった選手たちをお出迎えする裏方、という気持ちでDJさせていただいたのですが、大きな反響を受けて驚いています。現在、日本で1件、海外からも1件取材の申し込みをいただいています。まとめサイトを作られたのも驚きでした。名前も出してなかったんですけどね。

―パラリンピック開会式に出演した経緯を教えていただけますか?

コロナ禍の前に、一般公募に応募しました。延期など二転三転した後、DJとして声をかけていただきました。

―パラリンピック開催までどういうお気持ちでしたか?

出演のお話をいただくまで、コロナ禍での開催に否定的な気持ちが強く、葛藤がありました。ただ、オリンピックを開催するのであれば、パラリンピックを開催しないわけにはいかないという強い思いがありました。メディアではオリンピックの開催が濃厚と報道されるようになったころにお声がけというタイミングもあり、出演オファーをお引き受けしました。

Tokyo Paralympics opening ceremony
Photo: Alex Pantling/Getty ImagesFireworks during the opening ceremony of the Tokyo 2020 Paralympics

―開会式でDJした時のことを教えていただけますか?

好きな音楽が国立競技場でかかったのは、単純にうれしかったですね。あれだけ多様な身体を持った方々が同時に集まるなんて、一生でもないでしょう。気になって各国の車椅子を見たり、映像で見直したりしたのですが、経済的な格差を感じなかったのは驚きでした。どんな国でも、パラリンピアンは自分に必要な車椅子を使えていることは良いと思いました。

―開会式での音楽、徳永さんのDJとしての感触や思いについて教えていただけますか?

音楽は東京パラリンピック開会式のために、小西遼さんやSEIHOさんら音楽チームによって開会式のために作曲されました。音楽のコンセプトとして、パラリンピック開会式をクラブのようにしたいというのと、日本のアーティストを世界に発信したいというのと、2つありました。

それを盛り上げるため私というアイコンが必要だということで、音楽チームの思いを自分なりに引き継いでDJしました。反響が良かったので、今はまず、ほっとしています。

―パラリンピック全体の印象はいかがでしたか?

もっと体感したかったですね。パラリンピックは無観客開催でしたし、関連した慈善事業やイベントも中止が多くありました。テレビやインターネットでの視聴ばかりでリアリティーを持ちづらかったのは残念でした。

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―今後の予定や抱負はありますか?

今後の活動については未定です。コロナで明日の状況、環境が分からないからです。コロナが落ち着いて社会に活気が戻ってからいろいろ行動したいですね。

―最後に、社会に向けてメッセージをいただけますか?

例えば、僕がマイノリティーの代表と言われたら、それは車いすに乗っているからという事実があると思います。ですが、マイノリティー=セクシャルマイノリティーや国籍など、自分とは違う人がマイノリティーだと考えている人たち、自分たちをマジョリティーだと思っている人たちとどう地続きにしていくか、「マイノリティーはあなたたちと一緒のことをやっている」と理解してもらうことが大事だと思っています。

私も社会創発塾という、社会をより良く、より面白くしていこうというグループで「誰もがマイノリティー」というテーマで配信していて、共感します。マイノリティーと言った途端にマジョリティーとの壁、分断が生まれます。一人の人間として、個として向き合ってほしいですね。

*1)WAIFU』ジェンダー、セクシュアリティー、人種などにかかわらず、さまざまな人が安心して楽しめるセイファースペースを作り出すクラブイベント。 2019年に青山蜂で始動し、2020年末にはコンタクトでカウントダウンパーティーを行い、注目を集めている 

プロフィール

徳永啓太(Keita TOKUNAGA)
1987年生。先天性脳性まひにより車椅子を使用。coconogacco(ここのがっこう)でファッションデザインを学ぶ。同じ頃から数多くのファッション関連イベントにも参加。2013年からテキスタイルプリンターや刺しゅうミシン、レーザーカッターといった機材のオペレーションや現場での運営に携わる傍ら、東京を拠点として数多くのコレクションショーや展示会へ出向き、ウェブサイトやフリーペーパーでその様子をレポートする。

2017年にジャーナリストとして独自のメディアを立ち上げ。ファッションと多様性を軸に、ジャーナリスト、DJ、モデルと幅広く活動する。2018年にはVOGUE WORLD SELECT 100 STREET STYLE に選ばれる。2021年、東京2020パラリンピック開会式にDJとして出演。

インタビュー、テキスト:松村智也

多様性とアートのイベント、視覚障害者のための電子図書館プロジェクトを進めるNPO NEW VISION代表理事。 世界一周中に皆既日食を見て発症した網膜剥離がもとで失明。 障害があっても自分らしく幸せに生きられる社会を目指して活動中。

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