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衣服から読み取く古今東西の暮らしと文化、「“オモシロイフク”大図鑑」が開催中

新宿の「文化学園服飾博物館」で6月22日まで

Naomi
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Naomi
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“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa展示風景
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約30カ国から集められた、驚くべき衣服や装身具を、それぞれの特徴に分けて紹介する展覧会「“オモシロイフク”大図鑑」が、新宿の「文化学園服飾博物館」で2024年6月22日(土)まで開催されている。

「ながい」「おもい」「おおきい」「まるい」「たかい」という5つのテーマのもと、作られた国や地域、使われた時代も異なる品々を、2フロアにわたり紹介。実物を目にする機会の少ない貴重なものばかりのため、同館が隣接する「文化学園大学」や「文化服装学院」などで学ぶ学生や研究者、漫画家やイラストレーターといったプロのクリエーターも数多く来館するという。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa
“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa「まるい」の展示風景

地域の環境や歴史を物語る素材と形

南北に長い日本列島では、土地ごとで気候もさまざまのため、その地域ならではの衣類や装身具が愛用されてきた。

例えば、極寒の北海道で寒さから身を守るために女性たちが羽織っていた「角巻(かくまき)」や、高温多湿の沖縄で生み出された軽くて薄い織物「芭蕉布(ばしょうふ)」などがある。現代ではあまり使われなくなったものがある一方、芭蕉布の着物は今でも憧れの一枚として知られている。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa「ながい」の展示風景
“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa「たかい」の展示風景からより、満州族の女性が履いた「高底鞋(くつ):ガオディシェ」(中国、19世紀末~20世紀初頭)

世界へ目を向ければ、日本とは比べ物にならないほど厳しい自然環境の国や地域に暮らす人々が多いことに気づかされる。極端に暑かったり寒かったりする条件の中で生きる人々にとって、過酷な環境に適応するために衣類の果たす役割は大きい。

「おおきい」のエリアに展示された、まるでカーテンやインテリアの装飾のような幅広の布地は、いずれも20世紀後半に作られた女性用のパンツ「シャルワール」だ。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa女性用のパンツ「シャルワール」

木綿の生地が使われ、胴回りが6.6メートルにも及ぶが、ギャザーをたっぷり寄せるようにウエストを絞って着用する。

デザインの理由は気候。「シャルワール」はパキスタンの民族衣装だが、彼らが暮らすのは険しい山岳地帯。昼夜の寒暖差が非常に激しい地域のため、パンツの中にたっぷりと空気を含むことのできるこの形は、保温性に優れており、その点でも理にかなっている。

ちなみに、股上が極端に深い「サルエルパンツ」にも似たデザインだが、こちらはイスラム圏の民族衣装「サルール」が由来だ。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa「おおきい」の展示風景

時代も地域もミックスした展示が見せる衣類の多様さ

一方、暑さの厳しいナイジェリア北部に暮らす「ハウサ族」において、身分の高い男性が着用するコート「ブブ」は、大きな一枚の布に装飾が施されたポンチョのような形に見える。展示品は20世紀後半に作られたものである。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa男性用コート「ブブ」

しかし実際は、幅5センチほどの綿の布をはぎ合わせて作られている。2.5メートルもの幅があるが、これは貴重な布をたっぷり使うことで、富と権威性を表現しているのだ。また、体全体を覆うデザインは強い日差しを防ぐため、大きな袖口は通気性を良くするための工夫でもある。

その隣にかけられている、2010年頃に作られた「バーククロス」は、男女ともに全身を包むように着用する。ぱっと見た印象はスエードのような質感だ。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa「バーククロス」

「バーククロス」は、ウガンダ南部のブガンダ王国に暮らすガンダ族のもの。実は樹皮の内皮をたたいて伸ばし、フェルトのように繊維を絡み合わせて作られた「樹被布(じゅひふ)」の一種である。制作手法は異なるが、まさに芭蕉布のように、植物の繊維が持つ特長を生かして作られた布といえる。

本展を観ていると、一口に衣服と言っても、必要に迫られた機能性や素材、デザインの理由も本当にさまざまで、これほどまでに多様なのかと驚くだろう。

数少ない服飾専門の博物館ならではの貴重な収蔵品の数々

人々のファッションや着こなしは、2020年以降のコロナ禍が大きな転機となり、間違いなくカジュアル化が進んだ。ケアや着用に気を遣うシルクのドレスや、窮屈なほどタイトなシルエットのスーツ、歩きにくいピンヒールを、「おしゃれは我慢だ」と言いながら着用していた文化もすっかり遠いものとなりつつあるが、本展では、我慢と引き換えに美しさを追究した衣類や装飾品も紹介されている。

現代の私たちが見ても魅力的なデザインのドレスは、1920〜50年代に製作されたもの。総ビーズの装飾が施され、まばゆい輝きを放っている。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa左は「ドレス」(1950年代、フランス製)、右は「イヴニング・ドレス」(1920年代、フランス製とされる)

身のこなしに合わせて軽やかに揺れるであろうデザインが優雅だが、この当時のビーズは全てガラス製。実は、肉厚のウールメルトンコートと同じくらいの1.4〜1.7キロもの重さがあり、本展では「おもい」のエリアに展示されていた。

また、ファッションデザインの概念を変えたといわれるほどに革新的な形と素材の衣類も、「まるい」のエリアに展示。世界的ファッションデザイナーの三宅一生が、今から30年前に発表した「プリーツ・プリーズ」シリーズのドレスやトップスは、全く古さを感じさせない。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa左2点が「イッセイ・ミヤケ」のドレス、右下は日本製の「袖なし羽織」

本展が開催されている文化学園服飾博物館では、教育機関に併設された施設ならではのユニークで親しみやすい切り口の企画展が多く開催されている。日本にあるミュージアムの数は、世界的に見ても多いといわれるが、同館のようにファッションを専門とした施設は10館前後(2024年現在)しか存在しない。

衣類という身近なものを通して、世界各国の文化や風習、文化人類学や民俗学、宗教学など、多岐にわたる知識に触れられる同館では、ファッションの奥深さと面白さを体感できるだろう。

なお、次回展のテーマは「世界のビーズ」だ。会期は2024年7月19日(金)から11月4日(月)まで。こちらにもぜひ足を運んでみてほしい。

“オモシロイフク”大図鑑
Photo : Keisuke Tanigawa「たかい」の展示風景からより、帽子の数々

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